国立音楽大学

くにおん*Garden

【開催レポート】「くにおん100フェス!」100年の響きが結晶したDAY1「Grand Gala」

昼公演「Ensemble of memories」で静かに編まれた“記憶”の余韻を受け継ぎながら夕刻を迎えたサントリーホールで、DAY1夜公演「Grand Gala」が行われました。会場もブルーローズから大ホールへと移り、昼の柔らかな空気とはまた違った華やかさと重厚さが同居する時間となりました。

最初に演奏されたのは、久石譲による世界初演作品《The East Land Overture》です。ミニマル・ミュージックのスペシャリストである久石らしいパターン化された音型が変化していく様に美しい旋律と多彩なリズムが溶け合った楽曲であり、100周年を迎えた「くにおん」の新たなはじまりを感じさせる、希望に満ちた曲想がホールを美しく包みました。「若い人たちへの賛歌、そうこの楽曲を捉えてもらえれば嬉しいです」という久石の言葉通りの音楽が展開し、100周年という節目が単なる回顧ではなく、新しい創造の出発点であることを静かに示しました。

続いてはJ.S.バッハ《2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調 BWV1043》が漆原啓子(国立音楽大学大学院教授)、徳永二男(元国立音楽大学大学院教授)の2台独奏によって奏でられました。二つのヴァイオリンが織りなす対話がステージに立体的な奥行きをもたらします。旋律が交差し、寄り添い、離れていく。その精緻な構造が、昼公演で編まれた記憶のアンサンブルをさらに深めるように響きわたりました。二人の奏者それぞれの音色の輝かしさと深みはもちろん、それらが重なり合ったときの音色の多彩さがまた魅力的で、音楽が空間を満たすたびに会場の集中力が静かに高まっていくのが感じられました。

ショパン《ピアノ協奏曲第1番 ホ短調》第1楽章は、小林資典の指揮のもと、日本を代表するショパン奏者である三木香代(国立音楽大学特任教授)の独奏により演奏されました。オーケストラは、本学教員と、プロとして活躍する卒業生らが集結し、この日のために特別に編成されたものです。日本を代表するショパン奏者である三木香代(国立音楽大学特任教授)の独奏で演奏されました。透明感のある美しい音色で奏でられる旋律と、輝かしいタッチで奏でられるパッセージはショパンの音楽の魂を鮮やかに提示。それを支えるオーケストラの音色もあたたかみを帯びたもので、ショパンの若々しい情熱が鮮やかに浮かび上がっていきました。

つづいては井手詩朗先生の指揮による、国立音楽大学の弦管打楽器専修の3・4年生で構成された「ブラスオルケスター」による演奏です。国内外の演奏会や海外ツアーでも優れた成果を収めている、力強いサウンドと密度の高いアンサンブルを活かした演奏をこの日も聞かせてくれました。曲は歌劇《カヴァレリア・ルスティカーナ》間奏曲(淀彰編曲)、藤田玄播「キャンパス・フェスティバル・マーチ」、レスピーギ《ローマの松》より「アッピア街道の松」(藤田玄播編曲)。編曲の淀、藤田は国立音楽大学の卒業生であり、編曲家としても活躍した存在です。「くにおん」の重要な柱の一つである吹奏楽の歴史の継承が感じられる時間となりました。

休憩が明け、後半は国立音楽大学が誇る声楽陣の華やかな歌唱が続きました。最初を飾ったのはロッシーニ《ランスへの旅》から〈皆さん手紙です〉。これは国立音楽大学の教員と卒業生(宮地江奈、臼木あい、平井香織、小泉詠子、松原有奈、押見朋子、小堀勇介、望月哲也、渡邉公威、青山貴、須藤慎吾、久保田真澄、成田博之、山下浩司)14名で歌われる重唱です。さまざまなオペラや公演で活躍する現役の歌手が集ってのアンサンブルは声楽でも高い評価を受け続けている本学の“層の厚さ”を改めて示すものとなりました。歌唱そのものはもちろん、演技の細やかさ、コミカルな表情づくり、そして声の溶け合いと様々な魅力に満ちたステージでした。

大規模な重唱のあとには小規模な重唱と独唱が続きます。澤畑恵美と高橋薫子によるモーツァルト歌劇《フィガロの結婚》より〈手紙の二重唱〉は日本を代表するソプラノ歌手二人の繊細な声の美しさとハーモニーが堪能できました。レハール喜歌劇《微笑みの国》から〈君は我が心のすべて〉では、幅広いジャンルで活躍を続けるテノール歌手、錦織健のルーツともいえるオペレッタ作品で圧巻の歌唱が響き渡り会場を湧かせました。

それらに続いたのは宮地江奈、小泉詠子、小堀勇介、須藤慎吾、若手4名の歌手によるヴェルディ歌劇《リゴレット》から〈四重唱〉。4名の声が重なり合う瞬間に強い集中が生まれ、夜公演のハイライトのひとつとなりました。軽妙さ、情熱、哀しみ、そして喜び──それぞれの作品が持つ感情の色彩が鮮やかに描かれていきました。

非常に華やかなガラ・コンサートのフィナーレに置かれたのは、ベートーヴェン交響曲第9番《合唱付き》の第4楽章(ソリストは盛田麻央、加納悦子、福井敬、小林啓倫)。この作品は国立音楽大学にとって非常に重要な楽曲であり、1924年に日本で初演された4年後には新交響楽団(現:NHK交響楽団)との共演で演奏。以後、さまざまな場面でこの作品に取り組み、高い評価を受け続け、本学の名前を世に示してきました。今回の演奏でも、ソリストそれぞれの卓越した歌唱はもちろん、附属高等学校の生徒、本学の在学生、卒業生によって、この日のために編成された特別合唱団、そしてオーケストラの練り上げられた音色と緻密なアンサンブルが重なり合うことで、会場の空気を一つに結び付けていきます。最後には会場全体がひとつの大きなうねりとなり、100年の歴史、これからの展望が音楽に昇華していくようでした。

DAY1夜公演「Grand Gala」は、昼公演で編まれた“記憶”を受け継ぎながら、それを未来へ押し出す力を持つステージとなりました。新作初演、協奏曲、オペラ、交響曲──多彩な作品がひとつの流れとしてつながり、100周年の祝祭を立体的に描き出していくのを会場にいたすべての方が感じたことでしょう。

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