くにたち*Garden
デニス・ブリアコフ先生 国際マスタークラス開催レポート
2022年6月23日(木)、ウクライナ出身でロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者として世界の第一線で活躍されている、デニス・ブリアコフ先生による公開レッスンとミニコンサートが開催されました。日本の音楽大学で行われる公開レッスンとしては本学が唯一とあって、学生を中心として多くの方が聴講。
的確なご指導と世界レベルの演奏で会場を沸かせました。
公開レッスン
一人目の公開レッスンではモーツァルト《フルート協奏曲 第1番》をレッスン。学生の演奏を聴いた先生からは「とても情熱的な演奏。この作品を情熱的に演奏することはなかなか難しいですが、よく特徴を捉えていますね」と評価。そのうえで、特に「モーツァルトの時代の楽器の音」について先生からお話しがありました。
モーツァルトの時代、フルートは現在使われている金属製の楽器ではなく、木製の楽器でした。現代の楽器の性能は当時のものとはまったく異なりますが、この作品を演奏する際には「当時の楽器を想起させる」ことが大事であるとアドバイス。特に高音域では金属製の楽器を感じさせないように「今の楽器、現代の演奏ならできることをあえてせずに、クリアすぎない音を意識して作る」というお話がありました。
また、曲のアーティキュレーションについて、モーツァルトの他の作品のフレーズやパッセージを意識することにも言及。
《魔笛》のパパゲーノとパパゲーナの二重唱や《フィガロの結婚》の序曲、また《Eine Kleine Nachtmusik》といった有名な曲を思い浮かべながら演奏することで、さらにモーツァルトの様式感を演奏に反映することができるとご指導されていました。
二人目の公開レッスンでは曲調がガラリと変わり、ジョルジュ・ユーの《ファンタジー》をレッスン。先生からは「全体的な曲の流れやメロディの方向性がよく作られていて素晴らしい演奏でした」とのコメント。特に曲想について「とても正しい演奏をしていますが、それだけでは少しシンプルすぎてしまいます。正確さは表現を妨げることも。時には人間の不完全さを表してみるのはどうでしょうか。同じパターンの繰り返しは表現をもっと変化させて、自由に演奏してみては」と、さらに一歩進んだ表現を目指すためのアドバイスがありました。
ブリアコフ先生は、実際に音を出してその違いを示したり、メロディーを口ずさみ「こんなふうに吹いてみては」と丁寧にご指導され、二人の学生ともに先生のアドバイスを受けて演奏が変化。当初の予定を延長して熱のこもったレッスンが行われました。
ミニコンサート
レッスンのあとはブリアコフ先生によるミニコンサートを開催。音の美しさ、華麗なテクニックはもとより、多彩な音色や明確なビジョンを示した演奏で、瞬く間にブリアコフ先生の音楽の世界に聴衆を引き込んでいました。
アンコールにも応え、3時間近くに及ぶ公開レッスンが興奮冷めやらぬ中、終了しました。