くにたち*Garden
第18回 国立音楽大学 シンフォニックウインドの歩み(雲井雅人先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深め、本学のあゆみを知る授業。雲井雅人先生による講義では2回にわたり本学の「シンフォニック ウインド」についてお話しいただきました。後期の第4回も本学で演奏された吹奏楽作品についてご紹介いただきました。
初めに、「シンフォニック ウインド アンサンブル」の他に本学のBブラス(1、2年生による吹奏楽)による「吹奏楽作品公募」の試みを取り上げ、オーディションを開催し選ばれた学生の作品を実際に演奏会で演奏するという企画について解説されました。
吹奏楽作品公募は、邦人作品の演奏機会のさらなる活性化を目指し、本学の教員に作品提供を呼びかけたことがきっかけで2013年より開催されていることが解説されました。
講義ではこの中から、現在大学院(修士)作曲専攻作品創作1年の城谷伶さんの作品《吹奏楽のための前奏曲》(2021)について、城谷さんが登壇し作曲の経緯をお話されました。
城谷さんは、中学生の頃にオーケストラで演奏した芥川也寸志の作品との出会いや影響を受けた伊福部昭の数々の作品についてお話され、自作に関してはメシアンの『音楽言語の技法』にも記載された「移調の限られた旋法」や、邦人作曲家の作品の土俗的かつ原始的なリズムなどを試みた作品であると解説されました。
また、同作品を創作するにあたって影響を受けた作品として、三善晃《管弦楽のための協奏曲》、黛敏郎《涅槃交響曲》、B.ブリテン《青少年のための管弦楽入門》なども紹介されました。
続いて雲井先生が「バッハ、280年の隔たり」と題し、コラール《ああ我らの生とは何ものぞ》の編曲作品についてお話されました。
この曲はバッハがオルガン作品として作曲し、その曲をもとにコダーイがチェロとピアノの二重奏に編曲しました。とりわけ、雲井先生はこのコダーイ編曲の二重奏に感銘を受け、サクソフォーンとピアノによる二重奏にご自身が編曲し、演奏されたことを解説。コダーイの楽譜にドイツ語で記載されているコラール歌詞については、本学ドイツ語教授の宮谷尚実先生が全訳し、サクソフォーンで演奏する動機と意義、キリスト教の理解と演奏解釈を考察する手がかりとなったとお話しされました。そして今年、有志により結成された「井手詩朗指揮・くにたちウインド」にてテナーサクソフォーンソロと吹奏楽のための編曲版(足立正編曲)で演奏したことについても解説されました。
テナーサクソフォーンソロと吹奏楽での演奏と城谷怜さんの作品、また雲井先生より紹介された本学の作曲専修准教授の足本憲治先生の作品《Kicky Game》はTEEDA社よりCDも発売されています。
最後に雲井先生は「偶然の出会いや引き受けてみた仕事が面白かったということが多々あったような気がします。『袖振り合うも他生の縁』というように、自分の専科を極め続け、他専修の学生とコラボレーションする機会に出会えば、学校というものがより楽しくなるのではないか、自分の過去の出来事を振り返るとそう思います。『学際*』を価値のあることと言われるように、音楽大学の中でも専修や専攻の異なる分野を勉強している学生同士が、どこかで重なる部分が生まれ音楽を通して展開していくことが、大切な学びになるのではないかと思います」とお話しされ講義を終えました。
第19回は吉成順先生による、日本のジャズとくにたちについてお話しいただきます。
*学際…研究対象がいくつかの学問領域にまたがっていること。諸科学が総合的に協力すること。(出典:デジタル大辞泉)