くにたち*Garden

第4回:洋楽受容期、揺籃期を巡って
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第4回。ピアノの花岡千春先生による、洋楽受容、揺籃期の音楽文化、音楽作品についての講義が行われました。
今回は、日本と西洋音楽の邂逅から、明治以降の日本人作曲家、また演奏家について、ピアノ作品の演奏を交えて概観しました。
花岡先生は、西洋音楽の受容については、明治以降の受容史が中心となることが多いものの、安土桃山時代にキリスト教が伝来したことにより、キリスト教の宣教師によるセミナリオの設立、天正遣欧少年使節、隠れキリシタン文化としての「おらしょ」など、洋楽受容に関する文化の土台があったことに触れました。
江戸末期には黒船が来航し、軍楽隊の演奏によって、それまで市井にあふれていた音楽とはまったく異なる響きに触れたことも、日本人と洋楽の鮮烈な出会いだったのでは、とお話しされました。
明治期に入ると、音楽取調掛での「西洋音楽と邦楽の両立」という方針のもと、西洋音楽と邦楽の両方を修めた演奏家の輩出、楽器演奏だけでなく「作曲」も専門とする瀧廉太郎、山田耕筰、信時潔らが活躍し始めたことにより、日本における西洋音楽が受容期から揺籃期へと移行していくことが示されました。

また、花岡先生による瀧廉太郎のピアノ曲《メヌエット》、山田耕筰《牧場の静夜》、《からたちの花 ピアノ独奏版》の演奏があり、特に《からたちの花 ピアノ独奏版》では、歌曲の原調とは異なる調性で書かれた複雑かつ流麗な響きも体感しました。
花岡先生は、洋楽受容の揺籃期の日本人作曲家の曲を知ることについて「明治初期の限られた情報や知識の中で、日本人作曲家がどのような作品を書いてきたのか、作曲のスキルやテクニックから離れたところで、作品を評価する必要がある」とお話しされました。
次回は、大正から1930年代にかけて活躍した作曲家、演奏家について演奏を交えながら紹介する予定です。