くにたち*Garden
第10回 現代音楽部門その4「続・1970年代以降の諸傾向〜中堅世代-1」(川島素晴先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第10回。作曲の川島素晴先生による、現代音楽に関する講義のその4では、前回に続き、1970年代の諸傾向として1938年生まれ以降の世代と、それに続く中堅作曲家と呼ぶべき世代の作曲家とその作品についてご紹介がありました。
前回講義で紹介のあった甲斐説宗、塩見允枝子と同じく1938年生まれの作曲家として、高橋悠治、八村義夫、小杉武久、佐藤眞らを挙げ、今なお現役のコンポーザーピアニストとして活躍する高橋悠治の作品について触れました。クセナキスに師事した初期の作品は、その影響下にあったものの、即興演奏活動、コンピュータ音楽の実践を経て、邦楽器を用いた新たな民族音楽における手業の先にどのように音楽を導いていけるかを追究した作品が多くを占めるようになったことが示されました。
続いて1947年生まれの作曲家として、佐藤聰明、近藤譲、新実徳英、久保摩耶子といった作曲家の紹介、特に近藤譲の作品について「どう書くかではなく、どう聴くか」という聴取体験が聴き手に委ねられているという作品性は、1970年代以後の現代音楽における世界的な傾向を示しているとお話しされました。
また、本学の元教授である福士則夫、北爪道夫、招聘教授である久石譲、細川俊夫といった本学に縁のある作曲家にも触れ、中でも細川については、秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバルへの言及とともに紹介がありました。
1970年代に日本における現代音楽の勢いが急激にブレーキとなって以降、ヨーロッパの最先端の音楽にリーチする機会も少なくなっていた状況において、ドイツの現代音楽の影響を受けた細川、フランスのスペクトル楽派の影響を受け、IRCAMで学んだ最先端のコンピュータ音楽の知見を持ち帰った野平一郎の存在は「日本の閉塞的な現代音楽の状況に風穴を開けた」と、日本の現代音楽に与えた影響の大きさについて川島先生は述べていらっしゃいました。
講義の中で紹介された作曲家と作品は以下の通りです。
高橋 悠治:《精霊会(町田康「供花」による)》(1999)
小杉武久:《Micro 1》(1961)
鈴木 昭男:アナポラスなどの創作音具を使用したパフォーマンス
三枝 成彰:《ラジエーション・ミサ》(1981)
池辺 晋一郎:《自然発火》(1989)
ロクリアン 正岡:《無伴奏人体ソナタ》(1972)
佐藤 聰明:《リタニア》(1973)
近藤 譲:《歩く》(1976)
新実 徳英:《風音》 (1989)
久保 摩耶子:《Sieben Volkslieder》(1996/2016)
北爪 道夫:《昇華》(1990)
松下 功:《五蘊》(1985)
西村 朗:《2台のピアノと管弦楽のヘテロフォニー》(1987)
吉松 隆:《天馬効果》(1984)
南 聡:《日本製ロッシニョール》(1994)
なお、今回の講義で名前の上がった本学招聘教授の細川俊夫、元教授の福士則夫については、本学での公開講座にてご本人に登壇いただくため、詳細な作品について紹介は割愛されたことが紹介されました。
6/22(水)、27(月)、29(水):細川俊夫招聘教授 公開講座2022
7/26(火):福士則夫先生 特別公開講座(予定)
第11回はその5として、続・1970年代の諸傾向〜中堅世代-2についてお話しいただきます。