くにたち*Garden
第6回 ピアノ音楽作品の流れと音を読む〜湯浅譲二、武満徹、萊孝之を中心に、演奏を交えて(渋谷淑子先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第6回。ピアノの渋谷淑子先生により、戦後の作曲家とそのピアノ作品、また作曲家(芸術)団体の活動について講義が行われました。講義の前半は湯浅譲二、武満徹を中心に、彼らとほぼ同年代に生まれた作曲家をメインに、後半は本学コンピュータ音楽専修の元教授・萊孝之先生の作品を取り上げ、渋谷先生がライフワークとされている現代作品について、演奏を交えながらお話しくださいました。
冒頭、本学の教員として後進の指導に当たられた平尾貴四男先生の《ピアノのためのソナチネ》を演奏され、続いて湯浅、武満らの活動について時系列に沿ってお話しいただきました。
1929年生まれの湯浅、矢代秋雄、間宮芳生、1930年生まれの武満は、1940年代後半から1970年代にかけて互いに強く影響しあいながら、独自の音楽を模索していました。当時の作曲家(芸術)団体には、詩人、美術家、評論家、演奏家なども参加し、海外の作曲家の招聘、音楽祭や演奏会の開催、出版物の刊行など、活発に活動していました。
渋谷先生は、この同年代の作曲家たちの活動について「戦争の抑圧から解放され、価値観の劇的な変化により、作曲家自身が自らの存在意義を求め、社会に強く訴え続けていた。彼らがお互いに惹かれ、影響しあい、強靭な糸を縒り上げていったことで、1950年代以降の日本の音楽や文化を牽引していったのではないか」とお話しされました。
続いて萊孝之先生のライヴ・エレクトロニクス作品についてのお話と、《ピアノとコンピュータのための「ディスクリート・トランスファー」》の一部の演奏がありました。作品の演奏について先生は、「ピアノ演奏とコンピュータとのインタラクティブな関係は、アンサンブルをしているようで、作曲家との共同作業とも捉えられる」と演奏者ならではの表現でお話しされました。
その他、本学で教鞭をとられた作曲家の先生方のご紹介、1964年~1984年にかけて、本学のピアノ専攻の入学試験として作曲科の教員による作品が課題曲とされていたことなどに触れられました。
当時、本学が教育理念として近現代音楽をどのように捉えていたのか、また現在の本学と現代音楽との関わり、演奏や普及に果たす役割を改めて知る意義深い機会になりました。
当日は上記のほか、下記の作品も演奏されました。
湯浅譲二:《内触覚的宇宙》 /Pf. 渋谷淑子先生
矢代秋雄:《ピアノ・ソナタ》より〈第2楽章〉 /Pf. 小村知沙さん(修士課程1年)
武満徹:《閉じた眼》 /Pf. 渋谷淑子先生
間宮芳生:《6つのエチュード》より〈第2曲〉 /Pf. 松浦野歩さん(博士後期課程1年)
第7回は川島素晴先生による「戦前世代の前衛の系譜」をテーマにお話しいただく予定です。