国立音楽大学

くにおん*Garden

くにおんフォルテピアノお披露目コンサート 〜フォルテピアノでの演奏体験を現代のピアノ演奏に活かす〜

本学創立100周年記念事業の一環として、「くにおんフォルテピアノ」を製作し、その完成を記念したお披露目コンサートを楽器学資料館主催のもと、4月18日(金)に開催いたしました。くにおんフォルテピアノは、鍵盤楽器製作家・修復家で本学講師である太田垣至先生に依頼し、18世紀の名匠アントン・ワルター(Anton Walter)製 5オクターブ〈F₁ -g³ 63鍵〉を複製したものです。本記事にて、コンサート当日の様子をお届けいたします。

学長よりご挨拶

はじめに、学長の梅本実先生からご挨拶がありました。
「当時のオリジナル楽器は本学の楽器学資料館でも所蔵しておりますが、約200年前の楽器なので頻繁に使用することができません。しかし複製楽器を製作することによって、演奏機会を増やすことができ、当時の楽器の響きを多くの人へ身近に体験していただくことができます。今後は教育的な効果であったり、当時の楽器の研究へ利することを期待しています。
くにおんフォルテピアノは200年前のモーツァルトの時代の響きを現代に蘇らせました。そしてこれからの本学が次の100年と共に歩んでいくということを願っています。」

太田垣至先生よりご挨拶

次にくにおんフォルテピアノの製作者である太田垣先生より、ご挨拶がありました。
太田垣先生は学生時代、フォルテピアノの技術者として仕事を始めようとした際に、さまざまな方へ相談をしていました。その中で、本学名誉教授でもあり、楽器学資料館初代館長であった郡司すみ先生へ相談しに行ったところ、「フォルテピアノ専門の技術者が日本にいない中、やっていくのは大変だろうけれども、もしも楽器博物館に展示されるような楽器を製作できるようになれば、きっとその道でやっていけるでしょう。」と言われた言葉を、ずっと心に留めてこられました。そしてそのことをようやく実現できたことを、完成したフォルテピアノの前で語られました。

第一部

今回フォルテピアノを演奏されたのは久元祐子先生です。

第一部では、現在多くのピアニストが使用するモダンピアノとの違いの解説を交えながら演奏されました。

主な違いは以下の点です。


・調律の基準音(モダンピアノ:440Hz~442Hz、くにおんフォルテピアノ:430Hz)
・音域の違い(モダンピアノ:88鍵、くにおんフォルテピアノ:63鍵)
・ペダルの操作(モダンピアノ:足元のペダルを踏む、くにおんフォルテピアノ:膝を押し上げる)
・弦の張り方(モダンピアノ:交差弦、くにおんフォルテピアノ:平行弦)

フォルテピアノはモダンピアノに比べて音量が控えめで、繊細なタッチが求められる楽器です。強い打鍵には適さず、無理に力を加えると楽器が傷んでしまいます。加えて、この楽器は完成からまだ3週間ほどしか経っておらず、演奏に馴染んでいないため、より丁寧な取り扱いが必要です。このような特性も考慮して、久元先生はプログラム曲の選定をされました。 



第一部で演奏された曲は以下の通りです。

・W.A.モーツァルト《幻想曲》ニ短調 KV397
・L.v.ベートーヴェン《7つのバガテル》Op.33より 第3番 へ長調
・L.v.ベートーヴェン《ピアノ・ソナタ 第12番》 変イ長調 Op.26「葬送」

第二部

第二部では、久元先生の音色に寄り添うように、永峰高志先生がヴァイオリン(1723年製 ストラディヴァリウス「ヨアヒム」)を演奏されました。

さらに、長島剛子先生(ソプラノ)との美しいアンサンブルによって、舞台は一層華やぎました。

第二部で演奏された曲は以下の通りです。

・W.A. モーツァルト《ヴァイオリン・ソナタ》ト長調 KV379
・W.A. モーツァルト《すみれ》KV476
・W.A. モーツァルト《ルイーゼが不実な恋人の手紙を焼いた時》KV520
・W.A. モーツァルト《夕べの思い》KV523
・W.A. モーツァルト《春への憧れ》KV596

楽器学資料館 館長よりご挨拶

続いて楽器学資料館の館長である三浦雅展先生より、以下ご挨拶がありました。

「楽器学資料館は楽器の魅力を伝えるために、教育研究活動に日々取り組んでいます。100周年の節目を迎え、この先の100年も引き続き楽器の魅力を伝えてまいります。この活動を続けるためには、学内外の皆様の温かいご支援が必要となります。これからも国立音楽大学 楽器学資料館をどうぞよろしくお願いいたします。」

 

最後の演目では、モーツァルト《春への憧れ》の日本語版「五月の歌」を、くにおんフォルテピアノ、そしてヴァイオリンの伴奏で、観客も含めた皆様で歌い、演奏会を締めくくりました。

最後に

モダンピアノとの音色を比較しながら古典派時代のピアノについて学ぶことができた本公演は、会場へご来場いただきました皆様にとって、とても貴重な体験になったことと思います。
今後もくにおんフォルテピアノを使った演奏会、そして数々の100周年記念事業を予定していますので、ぜひご覧いただけますと幸いです。
詳細につきましては、楽器学資料館ホームページ、そして100周年記念サイトにてご覧いただけます。

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