国立音楽大学

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インタビュー:ニュークラシックプロジェクトで受賞!松井琉成さんにお話をお聞きしました

藤岡幸夫、山田和樹、鈴木優人、原田慶太楼の4名の指揮者によるプロジェクト「ニュークラシックプロジェクト」。このプロジェクトは「現代に生きる作曲家の作品を演奏する」機会を創出し、オーケストラの新曲初演活動に光を当て「多くの人たちに愛される作品」を作ることを目的としています。
この企画に本学卒業生の松井 琉成さんが応募し、見事、受賞作品として選ばれました。
本学在学中に受賞が決まった松井さん。5月15日(月)の世界初演コンサートを間近に控え、受賞までの道のりと今後の展望についてお伺いしました。

松井 琉成さん

ーーこの度はご受賞おめでとうございます。まずはニュークラシックプロジェクトへの応募のきっかけについて、教えてください。

松井琉成さん(以下、松井):指揮者の藤岡幸夫さんが出演する、BSテレ東『エンター・ザ・ミュージック』でこの企画のことを知りました。このプロジェクトのコンセプトである「多くの人々に愛される曲」という考え方は、まさに自分が目指す理想の作曲家としての在り方だと思い、応募することを決めました。そこから約1年間、曲の背景となる物語を一から考えるところから始めて、じっくりと創作活動を行いました。

ーー気鋭の指揮者4名が作品を指揮することも話題ですが、藤岡氏が松井さんの受賞曲を指揮するとお聞きした時はどんなお気持ちでしたか。

松井:4人の指揮者の方が協議のうえ、40曲以上の応募作品の中から4曲を選んだと聞いています。番組を欠かさず見ていたファンとしても、藤岡さんに自作を指揮してもらえると聞いた時は、大変光栄で夢のような話だと思いました。

受賞が決まった時は驚くばかりで信じられない気持ちでしたが、少し経ってから嬉しさが湧き上がってきました。一方で、どこか不思議な気持ちもあり、実際に演奏会のチラシや楽譜が出来上がってくるたびに、受賞の実感が得られてきたような感じです。

完成した楽譜の写真

ーー受賞曲である、交響詩《うつしがたり〈翠〉》 について、どのような作品か解説をお願いします。

松井:作曲にあたり、まずは土台となる物語を考えました。翠(スイ)という名の若者が、ある日突然異世界に迷い込み、現実世界ではなし得ないこと、例えば植物と会話したり空を飛んだりといったことを、自由に楽しみます。実はその間に元の世界では悲惨な出来事が起こっているのですが、主人公はそのことから目を背け、現実逃避してしまいます。危機がいよいよ異世界にも及ぶようになり、改心した主人公はありったけの力を振り絞って二つの世界を救おうとするー自分が考えたそんな物語の、各シーンをイメージして書きました。
物語の中で「鏡」が重要な役割を果たすこともあって、「うつしがたり」というタイトルをつけています。

ーー受賞にあたっては、プロオーケストラによる初演、全音楽譜からの楽譜出版など、作曲家としてさまざまな経験をされています。

松井:楽譜出版については、少しでもいいものにできるよう、出版社の方と何度もやりとりしながら、繰り返し浄書していただきました。全音出版の方がいつもあたたかく接してくださったおかげで、無事スコアを完成させることができました。
また、オーケストラのリハーサルにも参加させていただくことになっています。作曲家にとって作品が音になって出来上がっていく過程を目の当たりにできることは本当に幸せなことです。本番の演奏は録音されて日本コロムビアレコードからCDとしても発売されます。さまざまな機会で自分の作品を多くの方に届けられることが今から楽しみです。

ーー在学中は作曲専修で学ばれました。今回の受賞作品では本学での学びのどのような点が特に生かされていると感じますか。

松井:1年次のアンサンブル曲の作曲から4年次のオーケストラ作品の作曲まで、学年ごとの課題そのものが、明確な目標に向かう道になっていること、そして、毎年提出した曲が必ず演奏され、実際の音にしてもらえた経験は私の財産になっています。実演の機会を通して、演奏者とも交流できたことで、作編曲の依頼をいただき、各楽器の奏法や特性を学べたことも大きかったです。
今回の作品は4年生の在学中に応募し受賞が決まった作品で、受賞にあたっては、こうしたくにたちでの学びが成果として表れていると思っています。私の目指す音楽を理解し、導いてくださった菊地幸夫先生や、いつも徹底的にスコアの添削をしてくださる川島素晴先生には感謝しています。

ーー本学で学んだことがそのまま、松井さんの曲作りに生かされているのですね。最後に作曲家として、今後の活動の展望を教えてください。

松井:在学中からさまざまなジャンルの作・編曲を行ってきましたので、今後もその活動は続けながら、今回の受賞を機に大編成の曲作りにも力を入れていきたいと思っています。また、演奏にも携わりたい気持ちもありますので、ピアノ演奏の技術も磨いていきたいですね。
私が大切にしているモットーとして「心に響くハーモニー」というものがあります。ハーモニーはその音楽に関わる全ての人々(作曲者・指揮者・演奏者・スタッフそして聴いてくださる方々)が一つになって生み出すものだと思います。「作曲」は多くの人々がハーモニーを作りたいと思うきっかけでなければなりません。それは1人で出来ることではなく、多くの方々の支えがあって成り立つもの。何事にも感謝の気持ちを忘れずに、生涯勉強を続け知識や経験を積み重ねながら、「人の心に響く音楽」という自分の理想を追い求めたいと思います。

ーーありがとうございました。世界初演、今後のさまざまな活動に期待しています!

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