くにたち*Garden

第3回:日本歌曲を歌うこととは?ー実践を中心に(小泉惠子先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第3回。声楽の小泉惠子先生による実践を交えながら日本歌曲をテーマに講義が行われました。今回は「日本の伝統的な歌唱法」を西洋の歌唱と比較をしながら、日本歌曲独自の魅力に迫りました。
日本の伝統的な歌唱法を用いる作品、声明、能の《羽衣》、歌舞伎の《京鹿子娘道成寺》より〈鞠唄〉の録音を聴きながら、胸声やこぶしなど声帯の筋肉を使うという日本の伝統的な発声法についてお話しされました。普段、なかなか深く向き合うことが少ない日本語の発声と英語の発声について、実際に発語(発音)することで、その違いを体感しました。また、言葉の中での「ん」のみにまで音程がつく山田耕筰の作品例など、海外にはない日本の独自とも言える歌唱の特徴や魅力を知る機会にもなりました。
実演では小泉惠子先生と、声楽博士課程の浅見聖怜奈さんが歌唱してくださいました。山田耕筰、信時潔、大中恩、中田喜直の日本歌曲を通し、作曲者が譜面には記すことが出来ない思いや考えを汲み取り、日本歌曲で表現される作風、歌唱法を解説してくださいました。
小泉先生は「日本歌曲が生まれた当時は、日本語や伝統文化とのさまざまな歌唱法の違いがありました。しかし先人たちは、西洋の音楽や歌唱法などを多くの努力と試みを積み重ね、情熱と工夫により見事に融合させ、独自の分野の大きな根や幹を形作ってきました。これからもさらに新しい幹を伸ばし、葉を茂らせ、大木に育つよう演奏や作曲を通して、日本の歌を広めていただきたい」とお話しされ講義を終えました。
第4回は、ピアノの花岡千春先生による洋楽受容期、揺籃期についてお話しいただく予定です。