くにたち*Garden
第11回 現代音楽部門その5「中堅世代2」(川島素晴先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第11回。作曲の川島素晴先生による、現代音楽に関する講義のその5では、前回に続き、1985年〜2000年の動向として1955年生まれ以降の世代の作曲家とその作品についてお話しがありました。
まず、1985年以降の傾向として、現代音楽を演奏するアンサンブル団体や、作曲家による団体が多く結成されたことに言及。「アール・レスピラン」、「TEMPUS NOVUM」、「冬の劇場」、川島先生も参加されていた「現在形の音楽」、現在も活動が続く「東京シンフォニエッタ」や「アンサンブル・ノマド」、「Ensemble Contemporary α」など、1980年代半ばから1990年代にかけて次々に結成されました。
また、1989年ベルリンの壁崩壊以降、 旧ソ連の作曲家たちに光が当たるようになり、グバイドゥーリナらの来日が果たされました。また、グレツキ《悲歌のシンフォニー》のヒットチャートへのランクインなど、社会情勢を反映した動きも見られるようになります。
1992年のバブル崩壊の後には急速に日本経済が冷え込み、現代音楽の分野は公的な活動から私的な活動へと移行、 現代音楽の情報源としてレビューや評論活動が行われていた雑誌『音楽芸術』も1998年に廃刊となりました。
その一方で、1989年から始まった秋吉台国際20世紀音楽セミナー&フェスティバルの影響を受けた若手作曲家たちが、ヨーロッパの新しい音楽を渇望し、東京を中心として現代音楽の上演を積極的に行うようになりました。そのような中にあって、TEMPUS NOVUMは、アカデミズムや師弟関係に関係なく「新しい時代の音楽を作る」というムーブメントを作曲家の側から働きかけていく活動を行っていたことが紹介されました。
講義の中で紹介された作曲家と作品は以下の通りです。
藤枝 守:《遊星の民話》(1980)
溝入 敬三:《ともだちのともだち》(2000)
伊藤 祐二:《ソロイスト》(1996)
中川 俊郎:《怒りの日》(2021)
三輪 眞弘:《東の唄》(1992)
藤井 喬梓:《Lichthof》(1989)
たかの 舞悧:《Women’s Paradise》(1988-91)
フォルマント兄弟(佐近田 展康&三輪 眞弘):《夢のワルツ》
鈴木 治行:《想起 ー 迂回》(2016)
斉木 由美:《アントモフォニーIII》(2003-4)
水嶋 一江:《森の記憶》(1997)※ストリングラフィーとしての活動
権代 敦彦:《84000×0=0》(2004)
山本 裕之《輪郭主義III》(2012)
夏田 昌和:《ギャロップ》(1996/99)
鈴木 純明:《もじゃもじゃベートーヴェン》(2020/21)
なお、授業では時間の関係で紹介しきれなかった1955年〜1979年生まれまでの作曲家のリストが川島先生より示され、中堅世代から若手作曲家世代までの代表曲を概観しました。
第12回は吉成順先生による、くにたち発の「実用音楽」についてお話しいただきます。