国立音楽大学

くにたち*Garden

個人録音講座 扉画像

「個人録音講座」取材レポート

本学では、定期的に学生のための「個人録音講座」を開催しています。

本講座は、個人演奏の記録やコンクール、オーディションの音源審査に提出する際に、スマートフォンやポータブル録音機などを用いて可能な限り「良い音」で録音するため、音響の基礎を学び、実践に結びつけるため、開講されるものです。

特にコロナ禍において、コンクールやオーディションの音源審査、オンラインでの音源のやりとりの機会などが増える中、録音のコツを知りたいという学生の要望に応える実践的な機会となっており、毎回多くの学生が参加しています。

7月9日(金)に開講された、コンピュータ音楽専修准教授の片桐健順先生による講座をレポートします。

音響物理学の基礎

片桐 健順 准教授
片桐 健順 准教授

まず、片桐先生より、録音の実践の前に音響物理学の基礎を押さえておくことにについて、お話しがありました。

「音」とは何か、音の三要素(音量、音高、音色)、デジタルとアナログの違いと両者の間の変換、録音のファイル形式(圧縮の有無)などについてお話しされました。

物理的な現象としての「音」についての紹介のあとは、使用する録音機材についての紹介です。

録音機材の選定

スマートフォンの録音機能について解説
スマートフォンの録音機能について解説

まず、録音した内容が、オーディションの審査なのか、参考音源なのか、あるいは作品発表なのかなど、録音する目的によって、使用する機材の種類が異なることが紹介されました。

特定の音源が鮮明に聞こえる「単一指向性マイク」、その場の空間の音も収音する「無指向性マイク」など、録音の際にもどのような収音を行いたいかによって使い分けをする必要が示されます。

また、スマートフォンに内臓のマイクを使用して録音する際には、内臓マイク位置の確認が必要であること、スマートフォンでの録音専用のアプリの紹介もあり、最後に機器の設置についての注意点が示されます。

反射音を少なくするため、床や壁から距離をとって機器を設置すること、机に置いて録音する際にも高さに注意することや、振動を伝えないためにクッションなどを置くといった具体的なアドバイスがありました。

また、手軽に購入可能な録音の際に使えるグッズの紹介もありました。

聴き比べ

複数の機材を用いて、マイクのセッティングによる違いを検証
複数の機材を用いて、マイクのセッティングによる違いを検証

機材の紹介、設置の注意点に続き、実際に録音の実習を行いました。ピアノの音を、単一指向性マイクと無指向性マイク、スマートフォンに内臓されているマイクで録音し、聴き比べを行いました。

参加の学生たちはそれぞれ「単一指向性の録音は明瞭な音」、「無指向性の録音は少し遠い感じ」、「スマートフォンの録音は音の距離が近いがくぐもった音がする」といった特徴を聴き分けていました。

スピーカーだけでなく、ヘッドフォンでもチェックします
スピーカーだけでなく、ヘッドフォンでもチェックします

この実習を踏まえ、実践を希望した声楽とチューバの学生による録音実習を行いました。アカペラで録音を行った声楽の学生からは「無指向性は広いところで音を聴いている感じ」、「スマートフォンは少し平べったい音がする」といった感想が聞かれました。
また、チューバの音を録音した学生からは「単一指向で録音すると音がダイレクトに伝わる」といった感想が聞かれ、片桐先生からは「チューバはベルが上を向いていることから単一指向性マイクで録音をするときには、マイクの高さを上げて録音すると良い」というアドバイスもありました。

学生たちからは次々に質問が寄せられ、講座終了後も片桐先生に機材利用方法のアドバイスを受ける姿が見られました。
学生からは動画撮影に関する講座への要望も寄せられ、録音・録画に対する関心の高さが伺えました。コロナ禍で演奏発表の機会が少なくなっている状況から、演奏者自らが音楽を発信するスキルが求められていること、また学生たちが変化に対応し、意欲的に取り組んでいる様子が印象的でした。

本学では引き続き、学生の要望に応え、時代に即した実践的な学びの機会を提供してまいります。

PAGE TOP

お問い合わせ・資料請求
学校案内、入学要項などをご請求いただけます
資料請求
その他、お問い合わせはこちらから