国立音楽大学

くにたち*Garden

川島素晴先生による講義

第7回 現代音楽部門その1「戦前世代の前衛の系譜」(川島素晴先生)

日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第7回。作曲の川島素晴先生による、現代音楽に関する講義のその1では、2022年に生誕100年を迎える1922年生まれ以前の作曲家に焦点を当て、特にこれまでの講義で取り上げられなかった「本格的前衛作曲家」を中心にお話しいただきました。

作曲家についてのお話の前に、「前衛的な取り組み」の観点から、田中正平が製作した「純正調オルガン」について紹介がありました。田中は留学先のドイツで物理学者のヘルムホルツに師事し音響学を研究、1889年に純正調オルガンを完成させると、ハンス・フォン・ビューローに「エンハルモニウム」と命名され、ブルックナーやドイツ皇帝からも賞賛された人物です。田中が制作した4台の純正調ハルモニウムのうち1台は本学の楽器学資料館に収蔵されていることが紹介されました*。また2018年に本学で行われた、ダニエル・ウォルデン氏によるワークショップの映像を用いて、純正調オルガンの響きを体験しました。川島先生は「現代の私たちのように平均律に慣らされた耳には、純正調オルガンの音はあたかも微分音であるかのように聴こえる。ほぼすべての調で純正調が奏でられる純正調ハルモニウムの発想そのものはいまなお画期的で、現代においてもその可能性を感じる」とお話しされました。

本学楽器学資料館に所蔵されている純正調オルガンは6月22、29日(水)の【楽器の10分講座】で紹介されます。

メモをとる学生

続いて、2022年に生誕100年を迎える1922年生まれ以前の作曲家について、代表的な作品を聴きながらご紹介いただきました。
特に、1930年に結成された現在の日本現代音楽協会の前身である「新興作曲家聯盟」に関わった、イタリアで興った未来派の音楽に影響を受け、四分音の記譜法を用いた伊藤昇、トータルセリーと雅楽の要素を取り入れた書法を貫いた松平頼則らについて、国際的に見ても最先端の音楽の潮流を的確に捉えた創作活動がかなり早い段階で行われていたことが紹介されました。

なお、授業で紹介された作曲家とその作品については、下記の通りです。

伊藤 昇:《四分音律による幼年の詩》(1930年)
金井 喜久子:《沖縄ラプソディ》(1966年)
須賀田 礒太郎:バレエ音楽《生命の律動》(1950年)
大澤 壽人:《コントラバス協奏曲》(1934年)
深井 史郎:《パロディ的な4楽章》より第2曲〈ストラヴィンスキー〉(1936年)
松平 頼則:《ダンス・サクレとダンス・フィナル》(1959年)
外山 道子:《やまとの声》(1937年)
柴田 南雄:《追分節考》(1973年)
入野 義朗:《ヴァンドルンゲン「轉」》(1973年)

第8回では、現代音楽部門その2 「実験工房から大阪万博まで」をテーマにお話しいただきます。

 

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