くにたち*Garden
第2回:日本歌曲の誕生と変遷―独自性を追求した作曲家たちの情熱(小泉惠子先生)
日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深める授業の第2回。声楽の小泉惠子先生による日本歌曲の誕生と変遷をテーマに講義が行われました。
今回は「日本歌曲」がどのように作られてきたか、作曲家に焦点を当てて、明治から現代までの歴史を概観しました。
小泉先生は、演奏家としての視点から日本歌曲の歴史をお話しされ、作曲家の作品名の実例を挙げながら、その特徴について解説してくださいました。
日本歌曲は当初、海外の有名なオペラのアリアに日本語の歌詞をつけていましたが、その後西洋音楽の作曲技法を学んだ作曲家たちによって次々に新しい曲が書かれていきました。しかし、次第に日本人のルーツを意識した民謡を基礎とする日本的な音階、表現を用いた曲が作曲されるようになり、日本歌曲は独自の発展を遂げていきます。
また、作曲家、演奏家、詩人らが共同で創設したグループが発足したり、日本歌曲に特化したコンクールが始まったりと、新しい作品を生み出し、日本歌曲の演奏・普及に努める動きは約120年に渡り現在まで連綿と続いています。
講義の中では本学の附属図書館に約300点ほど所蔵されている貴重な「セノオ楽譜」の実物を見ながら、出版に関わった人々の楽譜にかける情熱を目の当たりにしました。また、瀧廉太郎、山田耕筰、伊福部昭、團伊玖磨といった作曲家の作品を本学で後進の指導にあたられた、中村健先生、内田るり子先生、伊藤京子先生の歌唱による録音で聴くことで、日本歌曲ならではの響きを体感しました。録音を通じて、日本歌曲の普及に携わった本学ゆかりの先生方を改めて知る機会にもなりました。
小泉先生からは「西洋音楽という種がまかれ、芽を出し、作曲家、詩人、演奏家によってしっかりとした幹が育ち、日本歌曲という大樹が育ってきました。その幹からまた新しい枝を伸ばして、日本歌曲はこれからも大きく育っていくのだと思います」とお話しされ講義を終えました。
第3回は、小泉惠子先生による日本歌曲の歌唱法、発音、発声について先生の実演を交えながらお話しいただく予定です。