国立音楽大学

くにたち*Garden

吉成先生による講義

第13回 くにたち発の「実用音楽」(2)ー久石譲以降ー(吉成順先生)

日本の近現代の音楽と音楽文化への理解を深め、本学のあゆみを知る授業の第13回。吉成順先生による講義では2回にわたり本学卒業生による「実用音楽」の変遷についてお話しいただきました。その2では、卒業生である久石譲、天野正道、大島ミチル、栗山和樹の各氏の作品の特徴と本学実用音楽コースを担当する丸山和範先生についてご紹介いただきました。

まず、映像と音楽の関係について、本学栗山和樹先生の著書『映画音楽の技法』より、映像と音楽の関わりには「支援的用法」と「主体的用法」という2つの枠組みがあることに触れました。前者は、映像の表現を強調したり支援したりする、いわゆる劇伴的かつベートーヴェンやメンデルスゾーンが用いたような劇付随音楽的な使用法、後者は映像だけでは表現しきれない雰囲気や心理描写を音楽で表現するような音楽の使用法があるとお話しされました。

続いて、久石譲の映画音楽作品について音楽、映像を用いてご紹介いただきました。久石の映画音楽作品の特徴として、ダイアトニック(全音階)的な響きを持ちつつも、はっきりとした調性を持たないように導音進行や機能和声を避ける傾向があること、ペンタトニック(五音音階)的な響きや旋法的な響きを多用する傾向があることを挙げ、こうした傾向は、とりわけ人気の高いジブリ作品や映画音楽作品以外にも見られるにのみに見られることではないと吉成先生は言及されました。
久石は本学作曲科在学中から活動をはじめ、特にミニマル・ミュージックの分野での作品を多く発表していました。1981年には自身の演奏団体である「ムクワジュ・アンサンブル」を結成、演奏活動を行っていました。マリンバの響きをクローズアップした作品(『となりのトトロ』や『天空の城ラピュタ』でも多用)や、ペンタトニック的な響きを持つ作品も多く、久石の映画音楽作品が映画音楽のためのもの特別なものではなく、元来の作風であったミニマル・ミュージックの手法と地続きになっているのでは、とお話しくださいました。

続いて、吹奏楽曲の作曲家としても活躍する天野正道の映像音楽作品について紹介がありました。天野は、印象的なクラシック作品を引用、または原曲をそのまま使用することも行っています。
授業の中では、ドニゼッティを引用した『ジャイアントロボ THE ANIMATION ー 地球が停止する日』、映画の冒頭からヴェルディ《レクイエム》が流れ続ける『バトル・ロワイアル』といった作品に言及。天野自身は、描写的、標題的発想よりも絶対音楽を意識しているとの言葉が引用されました。

大島ミチルは「主体的用法」を多く用いる作曲家の一人で、映画『明日の記憶』では1つの音楽のテーマが鳴っている流れる中で、物語の中の時間と空間が移ろうような作品を書いていることに触れました。大島自身の言葉によれば、それは「映像と音楽の適度な距離感」であり、笑いか涙かといったはっきりした色合いではない、「中間色」を音楽で表現するという特徴が見られると紹介されました。

本学教授の栗山和樹は、多様な音楽性を指向し、異なる複数の要素を組み合わせて新たな音楽表現を生み出すことを行っているとの紹介がありました。例えば、ドラマ『年下の男』では音楽はアザーンのようなイスラミックな音響にモンゴルのホーミーをかけ合わせるなど、鮮烈な印象を残す曲作りが特徴的との言及されました。
こうした印象的な音を際立たせるため、録音手法にもこだわった音楽作品を多く手がけているとお話しくださいました。

その他、松村崇継、横山克、富貴晴美といった若手作曲家の紹介があり、ベテランから若手まで「実用音楽」の分野で活躍する作曲家の幅の広さを改めて知る2回の講義となりました。

第14回は今回の講義でも紹介された、丸山和範先生が「丸山和範の音楽体験と仕事」についてお話しくださいます。

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