国立音楽大学

くにおん*Garden

くにおんピアノコンクール


国立音楽大学は優れた音楽環境と一流の講師陣たちの指導による優れた教育環境によって多くの音楽家を輩出してきました。技術の鍛錬はもちろんですが、美しい音色を追求し、他者とのアンサンブルを大切にしてきた指導方針は、卒業後の学生たちの幅広い活躍につながっています。その教育方針から様々なイベントが生まれてきましたが、昨年新たに誕生したのが「くにおんピアノコンクール」です。もともとは「ピアノフェスティバル」の一環として実施されてきた本イベントですが、今年は独立した企画として、7月13日(日)10:00~14:30に開催されました。その模様をレポートします。

くにおんピアノコンクールについて

コンクールは予選で選ばれた9歳から18歳までの参加者が出場し、午前10時に開始しました。部門は「ソロ部門」と「アンサンブル部門」に分かれており、それぞれ「12歳以下の部」、「15歳以下の部」、「18歳以下の部」があります。またアンサンブルは「連弾」「声楽」(とピアノ)、そして「フルート」(とピアノ)から選択できるようになっています。
審査員は国立音楽大学の教授陣、附属中・高等学校および小学校の講師陣による16名です。審査中は各自講評も記入し、審査終了後には出場者に渡されるようになっています。あこがれのピアニストの先生方から直筆でアドバイスをいただけるという貴重な機会です(なお、講評は予選でも書かれ、結果問わず全員もらうことができます)。

演奏はソロ部門の12歳以下の部からスタート。ソロ部門は全員が必ずバッハの作品を演奏し、その後に自由曲を弾きます。
出場者全員が美しい音色でバッハを奏で、全体のバランスもよく聴きながら多声部のかけあいを行っていることが伝わってくる演奏が印象的でした。自由曲はあまり背伸びしすぎず、自分の特質にあったものを選んでいるというのも特徴的でした。そのぶん丁寧に楽曲に向き合い、それぞれの表現を追求した演奏を聴くことができ、コンクールというよりもコンサートを聴いているような楽しさがありました。
また「アンサンブルのくにおん」ならではともいえる「アンサンブル部門」は今年から設けられ、今回は連弾とフルート・ピアノデュオの出場がありました。連弾以外は課題曲が設けられていますが、曲の難易度よりもいかに音楽を共有して丁寧につくりあげることができているか、という点に主眼が置かれており、出場者たちも細やかなところにまで気を配った演奏を聴かせてくれました。
演奏は予定時間よりも早く終了しましたが、出場者全員が熱演を聴かせてくれたため審査は難航。当初の予定よりも15分ほど遅れて表彰式が始まりました。

学長よりご挨拶

まずは梅本実学長からの挨拶です。
「国立音楽大学の創立100周年を記念して開始しましたこのコンクールの他にはない点が2つあります。1つは審査員の先生が16名も参加してくださったということです。これほど審査員の多いコンクールはあまりありません。大学の試験でもこれだけの人数があつまるのはまれなことです。
また、会場が本学の自慢でもあるこの講堂ということです。東京文化会館や神奈川県立音楽堂と同じ建築家、前川國男による晩年の傑作なのです。建築物としての価値はもちろんですが、響きの面でもとても素晴らしい場所です。
このコンクールは来年、さらに規模を拡大して開催予定です。今年受けてくださった方もぜひまた挑戦していただけたら嬉しいです」

附属中学校・高等学校 副校長よりご挨拶

次に附属中学校・高等学校の副校長、五十嵐稔先生から総評がありました。
「今回はバッハの課題をいれたことが特徴となっています。多声音楽を演奏することはクラシックの演奏において欠かせないものです。中学校や高校でもバッハの課題はとても重要視されており、若いうちからしっかりと勉強していただきたいという願いが込められています。
多声音楽を演奏するうえでは左手の意識が重要です。今回の演奏でもメロディはすばらしいのに伴奏がうまくいっていないという印象もありました。左手の音楽をどう作っていくか、ぜひ今後も研究していってほしいと思います。
そしてどういう音を出したいか、ということもよく考えていただきたいです。頭の中で“こういう音を出したい”、“こういう表現をしたい”というのを作ったうえで打鍵していただけるといいですね。どうしても気持ちや手が先に出がちですが、先に頭で作ることができれば、どういうテクニックを使って音を出すかを決めることができますし、ミスも減っていくでしょう。最後に、ピアノの演奏において打鍵はもちろんですが、どのように鍵盤を離すか=離鍵も大切です。それによってどのように響くかを聴きとってください。とくにバッハの演奏では八分音符をどのように離鍵していくかは永遠の課題になってきます」

最後に

学長挨拶と総評のあとは、各部門で最優秀賞、優秀賞、そして奨励賞の授与が行われました。出場者の皆さんそれぞれが自分の音や表現を活かした演奏で、とても心に残るコンクールとなりました。来年も開催される「くにおんピアノコンクール」、ぜひ多くの方により良い音に出会うための機会として参加していただきたいのはもちろん、その熱演に出会える場として、多くの方にお聴きいただきたいと思います。

長井進之介

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