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国立音楽大学 大学院オペラ公演で新たな広報ボランティア制度を導入
半世紀にわたる歴史をもつ国立音楽大学の大学院オペラは、これまでに数多くの優れた公演、第一線で活躍するオペラ歌手を送り出しており、本年も10月18日(土)、19日(日)の2日間が盛会のうちに終了いたしました。
今回の開催にあたっては、大学事業のより広範な発信とともに、学生の成長をさらに促す目的で広報ボランティアの採用を行いました。2名の学生がボランティアとして参加し、オペラの制作現場やメイク講習などを見学しながら、SNSの発信などをご担当いただきました。
公演を終え、本学の卒業生で、音楽専門誌やWebメディアなどでクラシック音楽を中心に幅広く執筆されている音楽ライター・長井進之介さんが、広報ボランティアメンバーのおひとりである米澤彩紗さん(声楽専修3年/オペラ・ソリスト・コース在籍)にお話をうかがいました。
―広報ボランティアにご参加いただいた理由をお聞かせいただけますか。
米澤 実は募集をみて興味をもっていたのですが、忙しいこともあって応募せずにいたのです。ただ、演奏芸術センターから“やってみませんか?”というお話をいただき参加しました。
―具体的にはどんなことをされたのですか?
米澤 オーケストラ合わせ(声楽家とオーケストラが一緒にリハーサルを行うこと)やメイク講習を見学して写真を撮ったり、感想などをSNSに投稿したりといったことをしました。オーケストラ合わせの様子などを見ていて本当に感激したのですが、それを言葉にして人に伝える、ということがとても難しく悩ましかったです。ただ、新たな角度から音楽に向き合うことができ、勉強になりました。
―米澤さんの今後の活動の参考になることはありましたか?
米澤 メイク講習ではメイクさんからベースメイクについて丁寧にご指導があり、舞台はもちろん、普段のメイクにも役立つようなことをたくさん学ぶことができました。特にスポンジを使う際、ザラザラしている方を使うというのは個人的にとても大きな発見でした(笑)。またシャドウの入れ方なども参考になりましたね。
―現在オペラ・ソリスト・コースで学ばれている米澤さんですが、声楽家としてのご自身にとって勉強になったことはありましたか?
米澤 オーケストラと合わせるタイミングの難しさを改めて感じました。私もオペラ実習で、よく拍通りに入っているつもりなのに「遅れてるよ!」と言われることがあるのですが、とくにオーケストラとの合わせだと余計にそれが顕著に出てしまうようで…指揮者の先生をもっとよく見るようにすることの大事さを改めて感じました。そして拍の感じ方や歌い方などを工夫していきたいと思いました。また当たり前なのですが、オペラ全幕を覚えて相手の演技や歌唱に合わせて歌い演じていらっしゃる先輩方に尊敬の念でいっぱいです。
―本公演もご覧になったそうですね。感想を教えていただけますか。
米澤 同じ楽譜で同じ役なのに、演じる方によってここまで違う人間になるのか…と驚きました。たとえばタイトルロールのドン・ジョヴァンニですが、1日目の後藤さんは色気があって女性を虜にしてしまう雰囲気に満ちていました。2日目の杉瀬さんは男らしさが前面に出た、また違うカッコよさがありましたね。溜めかたや休符のとりかたなど、音楽の作り方にもいろいろな違いが発見できたので、大学院オペラは二日間行くべきだな…と思いました。また、ここまで細かく見られたのはボランティアでリハーサルの様子から見学させていただいていたというのも大きかったですね。
―改めて今回の広報ボランティアを振り返ってのご感想をいただけますか?
今回の広報スタッフボランティアは、学生にとって自身の専修・専攻に関わることはもちろん、社会的な経験も学べる機会となったようです。自由・自主・自律を重視する本学の教育が形になった事業といえるでしょう。今後も国立音楽大学は、さまざまな形で学生が学びの機会を得られる場を提供してまいります。
