音楽徒然草ラインナップ
くにたちの先生方が、 “つれづれなるまゝに、心にうつりゆくよしなしごと”を書きつづっていきます。
2012年度

一般的に時だとか時間というと、私たちはほとんど時計で測ることができる時間を考えます。何秒、何分、何時間、何週というような単位で表すことができます。人間の発達も月齢や年齢を基準に育ちの程度をみていくことは時計で測れる時間を想定しています。私たちの外側にある物差しです。

ミュジシアン・コンプレ(musicien complet)という言葉をご存知ですか?
直訳すると「完全なる音楽家」という意味のフランス語です。フランスでは、教養が深く、演奏、作曲、研究、教育などすべての活動を高いクオリティーをもって行う音楽家を、尊敬の念をもってこのように呼ぶのです。

私は、N響コントラバス奏者時代(53歳時)に多摩美術大学を受験して、6年間(大学院含む)画家の修行をしました。音楽だけでは飽きたらず絵にも手を出したのは、50才を過ぎた頃から演奏中に色彩を感じるようになったからです。

1979年の9月、ミュンヒェンの国立博物館でさまざまな彫刻を見ていたときのことです。ある展示室に足を踏み入れたとたん、身が震えるような気配に包まれました。マクダレーナ像をはじめ、人物の表情は深い内面性を湛え、指のしぐさ、衣服の襞にいたるまで繊細な気品を漂わせる一群の彫刻がそこにありました。今思えば、これがティルマン・リーメンシュナイダー(1460-1531)の作品との最初の出会いでした。

世界のグローバル化に伴い、外国語運用能力の重要性はますます高まりつつあります。日本国内においても、外国語を自由に操り、第2、第3言語で積極的にコミュニケーションが取れる人材を求める企業が増えてきました。今後、音楽の分野においても、ますます国際的な交流が盛んになり、高いレベルの語学力が必要になることは言うまでもありません。

大学は間もなく夏休みを迎えようとしています。今年入学なさった1年生は、前期授業を終え試験、レポート提出等を済ませホッとしていらっしゃることでしょう。大学生活に慣れるだけでも大変ですのに、親元を離れて一人暮らしを始められた方はそのペースを作る迄試行錯誤を重ねていらしたことでしょうね。

早いもので国立音大に務めて37年、ユーフォニアムという知名度の低い金管楽器の専攻生が今では25名という大きな研究室に育ちました。また、専任教員に就任してからは、吹奏楽も担当、昨年末には、シカゴのミッドウェスト・クリニックに多勢の学生たちと共に参加、国際舞台で「くにたちの学び」について高い評価を頂きました。

国立音大にジャズ専修が生まれてから早1年。ジャズという音楽は殆ど即興で演奏される為に教えるのが難しいのではと言われます。でも「音楽」を毎日話す「言葉」と同じと考れば「即興」もそんなに難しい事ではなくなるのです。何故ならば日常生活で誰一人「台本」に沿って話している人は居ない。会話の全てがコール&レスポンスで成り立っているからです。

桜の開花と共に始まった新学期。今年はベストタイミングでしたね。
入学早々から盛りだくさんの基礎ゼミメニューでくにたちの洗礼を受けた新入生達、意気揚々と学びの意識を高く持って授業やレッスンに臨んでくれると信じています。