国立音楽大学

音楽徒然草

第13回 「青春の学び」 久保田 慶一 教授

久保田 慶一 教授

 大学生の時期というのは、「日本では」18歳から22歳というのが一般的です。日本ではという言葉が「 」に入れてあるのは、日本に特有の現象だからです。先進国のなかで大学進学率が60パーセントもある国もあまりありませんし、大学生の年齢が4年ないしは5~6年というのも例をみないかもしれません。

柿木の新芽
柿木の新芽

 最近では3年生になると就職活動をはじめ、大学での勉強が十分にできないことが、社会問題になっています。15年前までは「就職協定」があり、大学生も就職活動を本格化させるのは4年生の秋からでした。それまでは就職のことを考えずに、大学での学び(具体的には卒業研究)やサークル活動に、そして哲学書や小説などを読んで、「青春」を謳歌したものでした。

 古代中国では、「春」「夏」「秋」「冬」の季節を色で表しました。春は「青」、夏は「赤(朱)」、秋は「白」、冬は「黒(玄)」でした。ここから「青春」、「朱夏(しゅか)」、「白秋(はくしゅう)」、「玄冬(げんとう)」という言葉が生まれました。「青春」とはこれから太陽が強くなる夏を前にした時期です。木の芽から新緑がふきだす、活力の溢れた時期です。しかし「青二才(あおにさい)」とか「考えはまだ青いね」という表現があるように、未熟で至らない所が残るも「青春」なのです。

 さあ、音楽大学の4年間では、いったい何を学ぶのでしょうか。私はこのように答えたいと思います。「よい音楽社会人になるための基礎を学んでほしい」と。「音楽社会人」というのは私が考えた言葉です。「音楽というツールでもって社会に貢献できる人」を意味しています。ステージで演奏するプロの演奏家はもちろんのことですね。学校で音楽を教える先生もそうです。コンサートをマネジメントしたり、ホールで働く人もそうです。あるいは普段は会社勤めしているが、週末には地域の市民合唱団や市民オーケストラを指導する人も、立派な「音楽社会人」なのではないでしょうか。

完成間近の新1号館を望む
完成間近の新1号館を望む

 大学生の時期には、大学生でないとできないことを、大いにしてもらいたいと思います。いろんなことにもチャレンジしてください。失敗を恐れないでください。失敗をするのが「青春」です。 でも、音楽を学ぶのが、大学生の時期だけでないことも忘れないでください。一度社会に出てから音楽大学に入学する人も、今では珍しくはありません。その意味で、人は何歳になっても、心は「青春」にあり、「生涯」音楽を学び続けていきたいものです。

PAGE TOP

お問い合わせ・資料請求
学校案内、入学要項などをご請求いただけます
資料請求
その他、お問い合わせはこちらから