国立音楽大学

音楽徒然草

第29回 「外国語を楽しく学ぼう!―絵本の効用」  林 千代 教授

林 千代 教授

 世界のグローバル化に伴い、外国語運用能力の重要性はますます高まりつつあります。日本国内においても、外国語を自由に操り、第2、第3言語で積極的にコミュニケーションが取れる人材を求める企業が増えてきました。今後、音楽の分野においても、ますます国際的な交流が盛んになり、高いレベルの語学力が必要になることは言うまでもありません。とはいえ忙しい毎日、外国語をマスターすることは容易ではありません。どうしたら外国語を楽しくかつ効果的に学ぶことができるのでしょうか。モチベーションを高めながら学べる外国語学習の教材として、「絵本の効用」について述べたいと思います。

書籍

 モチベーションを簡単に説明すると、「人がある目標に向かって行動を起こすときに、それがどのような要因や理由で始まり、その行動がどのように維持されるか」と定義付けることができます。行動を起こさせる要因は大まかに分けて、「外発的」と「内発的」に分けることができ、自らの意思の力で行動を起こす後者が大事なことは言うまでもありません。内発的なモチベーションを高めるためには、「自己有効感」と「興味・関心」が大事とされています。つまり、外国語を勉強しながら、「わかる」、「面白い」、「夢中になる」などの気持ちが、内から沸き上がるモチベーションの向上につながるということになります。そのための効果的な題材として、外国語で書かれた絵本を提案したいと思います。

ルピナス

 なぜ、絵本が大人の外国語学習にふさわしいのでしょうか。「絵本は子供のために書かれているから、大人にはふさわしくない」と思う方もいるでしょう。確かに、内容が幼いために大人には向いていない本が多くあります。しかし、様々な絵本を読んでみると、多くの絵本が人間の一生に関わるテーマを扱い、大人も対象に書かれていることがわかります。日本でも人気のある絵本作家、ジョン・バーミンガム(2009)が、「It’s a Secret!」のあとがきに「私の本は子供だけではなく、すべての人を対象にしている」と語っています。柳田邦男(2006)も「絵本という表現ジャンルは、実は子どもだけのものでなく、年齢や世代を超えて共有できるもの」と述べています。つまり、内容を吟味して選べば、大人も読み応えのある絵本が多く存在するということです。

ふくろう

語学教材としての絵本の効果は、1.お話にストーリー性があって一気に読ませる文学としての価値、2.読者の共感を呼ぶ人間の本質に触れるテーマ、3.ユーモアあふれる楽しいストーリー、4.魅力的な構図と色彩で内容理解を促進する絵、5.初心者でもわかりやすい文法構造と語彙、6.音読の練習に最適なリズムあふれる文章、7.短時間で読み終えることができる、などがあります。今年の外国語コミュニケーション(英語)の授業で使用して好評だった絵本は、「Miss Rumphius」(Barbara Cooney作)、「The Kissing Hand」(Audrey Penn作)、「The Old Woman Who Named Things」(Cynthia Rylant作)、「Owl at Home」(Arnold Lobel作)などです。これらの本は国立音楽大学の図書館にもあるので、是非読んで見てください。語彙や文法といった外国語学習の基盤となる知識が大切なことは言うまでもありませんが、絵本を読みながら楽しく語学を学ぶ時間を持ちませんか。

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