音楽徒然草
第31回 「音楽を絵にする」 志賀 信雄 教授
私は、N響コントラバス奏者時代(53歳時)に多摩美術大学を受験して、6年間(大学院含む)画家の修行をしました。音楽だけでは飽きたらず絵にも手を出したのは、50才を過ぎた頃から演奏中に色彩を感じるようになったからです。
もともと絵を描くのが好きだった私は、子供の頃の絵心を思いだし、夢中になって基本技術を学びました。大学院修了と同時にN響を定年退職し、国立音楽大学で教え始めましたが、大学の休みを利用して展覧会に出品し続け、主に新国立美術館等で皆様に私の絵を見て頂く機会を持つようになりました。
それまで音楽一辺倒だった私の中に、別の視点が加わり、絵画と比較する事で音楽をよりわかりやすく説明出来るようになったのです。例えば、私の弦楽器アンサンブルの授業中のひとこまです。
「一般的に抽象画は解りにくいと言われますが、音楽で言えば絶対音楽に当たります。皆さん、バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ブラームスの交響曲が好きですか?好き、いいな、と思ったら既に理解していると言う事です。全くわからないと言う事は有りませんね。抽象画もそれらと同じです。絶対音楽は音楽そのものを表現し、抽象画も絵そのものを表現しています。具体的に何を表現している音楽なのか、何を描いているかを問うのをやめて、何も考えずにただ見て感じて下さい。ベートーベン、モーツァルト、ブラームスに接するのと同じように。たくさん見ていくうちに、この絵何だか良い感じ、と思う絵に出会います。それが芸術を理解すると言う事の発端です。好きな異性に出会った時、理由を考えますか?好きと言う事に理由はないのです。」
絵と音楽の共通点は、表現しようとする脳の中の源泉は同じ、と言う事です。これも理由はないのですが、絵を描いていて直感的にそう思います。