音楽徒然草
第21回 「soloを極めるには、ensembleの経験も重要!」 平部 やよい 教授

一人の演奏者が一つの役割を担当する形態がsoloですが、鍵盤楽器や他の複音が出せる楽器は一人で多声部を表現でき、solo演奏の中でオーケストラに匹敵する音楽を表現することが可能です。
幼少の頃、兄のヴァイオリンの譜面台にトライアングルやカスタネットを吊し、 玩具の小太鼓を首から下げ、左手にスティック、右手にハーモニカを吹き、自宅のSPやLPをかけては合わせて遊んでいた私は、やはり、複数の声部を同時に奏でることの可能なピアノを、後に並行してエレクトーンを始め今に至っています。作曲の折も、頭の中で旋律と和声的な響きが同時に鳴るのは、その頃が影響していると思われます。多声部を表現するからには、自分の音のみではなく他との関わりから自分の響きを見つめ直すこともとても重要です。soloで表現出来る為の基礎を学び、さらにensembleで他の響きを聞いて自分の立ち位置を学び、その経験を活かした上でさらにソロを極める。これが習得して行く理想的な順番かもしれません。

以前に、芥川也寸志氏の電子オルガンの為に書かれた「GXコンチェルト」を本名徹次指揮、オーケストラニッポニカにより紀尾井ホールにて演奏した折にも改めて感じたものです。際立ったソロの部分とオーケストラに溶け込む部分との弾き分けも必要です。過去の経験を活かし、来春2月27日に開催する11回目のリサイタル(春の予定が震災で延期)でも、ヴァイオリンの掘米ゆず子さんをお迎えし、soloの作品の他にElectoneとの新作を演奏致します。

鍵盤楽器はsolo演奏が中心な為に、アンサンブルの経験が少ない奏者も多いですが、国立音楽大学の電子オルガンはその両方を重視し、年末の学内演奏会でも学生達の両方の演奏を聞いて頂けるようにしています。soloでは独りで表現出来うる多彩な響きで個を表現し、ensembleでは一台で表現しきれない声部や響きを融合し、音で対話出来るように練習に励んでおります。

先日、例年のオーディションを経て選抜された16名が、12月10日(土)に6号館110スタジオで開催される第18回 電子オルガン学内演奏会に出演致します。 音響や照明も先輩より引き継ぎ全て学生で、友達の演奏を担当することによりどのように観客に演奏が届いているかを意識するいい経験にもなります。 電子オルガンって、どんな音楽をやっているの? 電子オルガンって、どんな響きがするの? と言う方や、この大学で学んでみようと思われる方 等。是非、学生が一丸となって開催する学内演奏会にお越し頂き、学生の編曲や作曲によるsoloやensembleの響きを聞いてみて下さい。