国立音楽大学

音楽徒然草

第28回 「自分と向き合うこと」  星野 明子 教授

星野 明子 教授

 大学は間もなく夏休みを迎えようとしています。 今年入学なさった1年生は、前期授業を終え試験、レポート提出等を済ませホッとしていらっしゃることでしょう。大学生活に慣れるだけでも大変ですのに、親元を離れて一人暮らしを始められた方はそのペースを作る迄試行錯誤を重ねていらしたことでしょうね。 まあ、日常生活の身の回りの事は、必要に迫られて自分なりの方式を編み出していらっしゃると思います。よく「家では何もしなかったのに、アパートへ行ってみたら結構きちんと生活をしていてびっくりしました!」という親御さんのお話しを耳にします。

 音楽を勉強するにはそれ相応の計画性と分析力、感性と集中力が必要ですから、日常生活を上手くコントロールしていく力も自然に身に付いていくものですね。

ひまわり

 昨年、9月に新1号館を使い始めてから、この夏でちょうど1年になります。以前のレッスン室と飛躍的に変わったことは、隣室の音が邪魔にならなくなったこと、即ち自分の音に集中できるようになったのはとても嬉しいことです。私達はそれぞれ理想の音、音楽を持っていて少しでも理想に近づけるように音との対話をしながら音楽を学んでいきます。ピアノの場合、鍵盤を押せば音が出てしまうので「音を創る」ということを忘れがちですが、音の色彩は勿論、音程を高めにとか広めにとる(その逆も)などということもできるわけで、本当に奥が深いです。自分の身体的特徴も弁えて、良い音、響きを求めてそれが自分の言葉となって音楽をしゃべれるようになりたいですね。

レッスン室

 「自分の言葉」と申しましたが、言うまでもなくそれは勝手気ままという事ではなく、作曲家が描いた音の世界を演奏者として再現すること。200年も300年も昔に異国で書かれたものを現代に生きている私達が自分を通して楽器に託して演奏するということ、何とも素晴らしいですね!ある曲が作曲された時、どういう時代で作曲家は何を考え、感じてこの音達を生み出したのだろう、などと考えて紐解いていくとワクワクします。

 これだけスピーデイーな世の中になっても、マニュアル社会になっても、音楽を学ぶということは手作業です。合理的な読み方、身体、手の使い方等は学べても、それを訓練して自分の耳、手、身体で試してどのように自分の表現として出すことができるかを見つけ出していかねばなりません。 その作業は、単に音楽を追求するということのみならず、しっかり自分と向き合っていくことだと思います。素敵に年を重ねていきたいですね!

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