国立音楽大学

音楽徒然草

第1回 「新世代の音楽家」 庄野 進 学長

庄野 進 学長

ホームページがリニューアルされました。よくある「新装開店」といったものではなく、すべてが一新されたといってよいでしょう。それに伴ってこのブログも新設されました。それにちなんで、テーマは「ニュー」「新」。

それでは、本題に入りましょう。学部の入試、博士後期課程の入試が一段落した3月8日、昨年の日本音楽コンクールのクラリネット部門で第1位に輝いた田中香織(2002年学部卒)さんが、武田忠善先生と一緒に学長室を訪ねてくれました。私たち教員にとって、どんな領域であれ卒業生が元気に活躍しているのを知ることほど嬉しいことはありません。その中でも、1975年に武田先生が第1位を獲得して以来、本学卒業生としては34年ぶりの快挙を成し遂げた田中さんが報告に来てくれたことは、嬉しい限りでした。

田中さんは、入学した学年のクラリネットは女子学生ばかりで、優秀な学生が多く、互いに切磋琢磨したこととか、卒業後バーゼル音楽院に留学した時の言葉の問題などの苦労話などいろいろ話してくれました。なかでも興味深かったのは、バーゼルでの同級生たちが、「なぜ香織はそんなに素早く指を動かせるのか」と驚かれたという話でした。田中さんにとって、それは「くにたち」で学んだ基礎訓練の結果で、出来て当然のものだったのですが、同級生たちとってはそうではなかったようで、その方法を教えてあげたのだそうです。それが評価されたのかどうか分かりませんが、バーゼルに戻ると今度は講師として教える立場にもなるそうです。

この話は、くにたちの基本的な方向性とその成果を示しているのではないかと思います。基礎基本を徹底して鍛え、卒業後にその結果が花開き、演奏家として活躍する方がたくさんいます。似たような話は、声楽で留学した卒業生からも聞きます。コンクールではなくオペラ劇場の現場で、日本で、こんなにしっかりした、国際的にも通用する基礎を鍛えている音楽大学があることに驚かれたということも聞きました。2004年から始まった「新カリ」は、それをさらに徹底したものです。それで学んだ卒業生たちの活躍も始まっています。

田中さんは、スイスと日本の両方で演奏活動をする予定だそうです。基礎基本に徹する中から育ちつつある、国際的に通用するこうした新世代の音楽家たちの今後の活躍に大いに期待しましょう。

PROFILE

田中香織  Kaori Tanaka/Clarinetist

田中 香織 Kaori Tanaka
Clarinetist

福岡県、北九州市出身。
国立音楽大学を卒業後、スイス・バーゼル市立音楽院音楽大学に留学、国家演奏家資格、及び国家ソリスト資格を最優秀の成績で取得。その間クラリネットを、武田忠善、磯部周平、フランソワ・ベンダの各氏に、室内楽を、生島繁、セルジオ・アッツォリーニ、フェリックス・レングリの各氏に師事。 2004年第116回日演連推薦新人演奏会にて、九州交響楽団と共演。2005年第3回カール・ニールセン国際音楽コンクール(デンマーク)特別賞、2006年トリノ国際クラリネットコンクール<マルコ・フィオリンド>(イタリア)2位、2008年バーゼル・オーケストラ協会<BOG>(スイス)最優秀賞、2009年第78回日本音楽コンクール、1位受賞。
室内楽奏者として活動する中、ソリストとしても、バーゼル交響楽団、バーゼル室内管弦楽団、東京交響楽団、九州交響楽団との共演の他、数々のソロ・リサイタルなど、日本及び、スイス、ドイツ、デンマーク、イタリアなど、ヨーロッパ各国で活躍している。
2008年、バーゼル交響楽団と共演したエリオット・カーター/クラリネット協奏曲では、オーボエ奏者/指揮者/作曲家である、ハインツ・ホリガー氏の監督の下公演され、その実力を高く評価される。2009年、ルドルフ・モーザー記念演奏会では、ディエゴ・ケンナ氏等と共演、”RUDOLF MOSER SPIEL MUSIK”(DIVOX) のレコーディングに参加。2009年より、カメラータ・ベルンの一員として活躍、また、バーゼル市立音楽院音楽大学にて、エスクラリネット講師を務める。

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