国立音楽大学

第23回イタリア・ベルカントツアー (イタリア・ベッルーノ)

島谷 真実 3年 演奏·創作学科 声楽専修

研修概要

研修機関:第23回イタリア・ベルカントツアー
研修期間:2017年8月14日~8月27日
担当講師:ウィリアム・マッテウッツィ氏

研修目的

本校入学前より将来的には音楽留学したいと考えていました。なぜかというと、日本人と考え方が異なるヨーロッパ人の音楽をヨーロッパ人のもとで学ぶことで、少しでもヨーロッパ的思考で作られた音楽を理解し、演奏することができると考えるからです。また、本校での二年間は基礎作りにおいてとても充実した貴重な時間でした。今の実力を試しより良い音楽作りの第一歩として三年生という大学生活の中間地点で研修に参加することで、将来的な長期留学に繋げるためにも有効的な機会であると考えたため今回の研修に参加することを決めました。

研修内容

レッスン

普段のレッスンでは、発声と用意してきた曲を1曲みていただくというのが基本プログラムでした。また、講習期間最初の3日ほどは発声を重点的に直していただき、後半にかけては講習の最後に開催されるオーケストラコンサートとピアノコンサートで演奏する曲の音楽作りと、演目によっては立ちをつけるなど、発表に向けての準備が重点的に行われました。
発声では、常にポルタメントに近いレガートの練習、半音階を正確に取る練習、力まずなるべく自然に近い状態で発声する練習、言葉をしっかり発音する練習、などを毎日少しずつ詰めていきました。私の場合、音程を少し高めにとる傾向があったのと、常に下に広げる、支える力が足りないこと、またiとeの発声が狭く平べったくなることを特に注意されました。いろいろなメロディーで発声練習をして音程を修正したり、手や動きをつけて支える感覚を覚えることなどをしました。それらのことを中心に考えながら用意していた曲を見ていただくということが多かったです。もちろん歌詞の内容に沿って考えて演奏することは必要ですが、発声がきちんとできていないと表現したいことも表現できないということをこれらのレッスンを通して痛感しました。
私は持ち曲として、大学2年半で勉強したアリア全9曲を持っていきました。機関の要項には5曲程度持ってくるように書いてあったのですが、多めに持って行ったことで先生が求めていることをより高めることができる曲を先生自身に選んでいただくことができ、とてもよかったと思いました。また、自分の声に合っていると思って持って行ったものでも、先生のお考えによっては「この曲よりもむしろこういう曲に取り組んだ方が勉強になると思う。」などヒントをいただけるきっかけにもなりました。
曲を通してレッスンをした中では、フレーズを大切にしたレガートの使い方、言葉の発音、文章の中でのアクセントの位置など、日本人的感覚だけでは気付けなかったことや理解できなかったことを紐解いていくようなレッスンだったように感じました。アリアの場合は特に、そのキャラクターと言葉の関係なども大切であると学びました。ある単語一言をそのまま意味の通りに歌うだけでなく、そのキャラクターが発した言葉であるが故の表現の仕方があり、それを息や休符やアクセントの強さなどで繊細に表現することが必要であると学びました。また、「このようなことを完全に自分の中で理解するためには、オペラのそのアリア1曲だけを仕上げるのではなく、できればそのオペラ1本を通すことが必要である。」と先生はおっしゃっていました。それはとても大変なことですが、歌い手として必要なことであるのだと改めて思いました。

オーケストラコンサート

オーケストラコンサートでは、オペラ『フィガロの結婚』よりソプラノの二重唱を、ピアノコンサートではオペラ『つばめ』よりテノールとソプラノの二重唱を歌わせていただくことができました。また、『つばめ』の二重唱は小道具も使い立ちもつけての演奏でした。どちらが主旋律を歌っているのか、メロディーの受け渡し方、歌いながらでも相手に話しかけている、聞いていることがわかる角度や立ち居振る舞いなど、ソロで演奏するときより考えなければならないことがたくさんありました。私自身重唱経験がほとんどなく、どちらの曲も音をとることから始めたので少し大変でしたが、教えていただいたこと、感じたことすべてが本当に勉強になりました。
その他、レッスンは基本的に公開形式だったため自分のレッスン以外の時間はほとんど聴講することができました。全講習生に対して先生が求めている先が同じでも、人によってアプローチの仕方が違ったりその人に合った発声練習を行っていたりなど、自分のレッスンだけではわからなかったことや知らなかったことをほかの人のレッスンから学ぶことができ、より充実した時間にすることができたと思っています。

研修を終えて

ピアノコンサートと講習会修了式後、マッテウッツィ先生とともに
ピアノコンサートと講習会修了式後、マッテウッツィ先生とともに

2週間という短期間に集中的に講習を受けることで、日々成長することができたことももちろん利点でしたが、講習期間中毎日先生と過ごすことで、先生に注意していただいたことに対して実践したときの自分の感覚を伝え、この方法で合っているのか、もっとこうするべきなのかなどをその都度相談することができ1つずつ解決することができたのが一番よかった点であったと思います。その積み重ねが充実した2週間につながったのだと思いました。
これからあと1年半大学で勉強するにあたってやるべきことをたくさん見つけることができ、課題もたくさんいただきました。一日一日を大切にここで学んだことを自分のものにし、よりよい音楽づくりに励みたいと思います。

久保田真澄先生のコメント

将来の留学を視野に入れ東洋人がいずれぶつかるであろう西洋人の思考、文化などを感じることを課題に臨んだ研修だったようだ。約2週間毎日レッスンを受け、基礎的な発声から歌詞と音楽の融合など充実した時間を過ごしたとのこと。
レッスンはオープンになっており自分のレッスン以外も自由に聴講することができ、客観的に先生の言っていることを聞けたこと、また自分にしたのとは違うアプローチで進めようとしている所を見られたことなども良い勉強になったようだ。
2週間毎日同じ先生からレッスンを受けるということも講習会ならではだと思う。その中で自分の考えや疑問を先生とすぐに話せ解決できたといったことも、彼女にとって良い時間になった。
密度の濃い時間の中で自分の成長を感じることができた彼女が今回の講習会で学んだ歌へのアプローチの仕方を、これからの勉強の中でより磨いていってくること、そしてそこから生まれる歌がより説得力を持って行ってくれること強く期待する。

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