国立音楽大学

WIENER MUSIKSEMINAR 2018 (オーストリア・ウィーン)

飯島 聡史 4年 演奏・創作学科 鍵盤楽器専修(ピアノ)

研修概要

研修機関:WIENER MUSIKSEMINAR
研修期間:2018年2月12日~2月22日
担当講師:Peter Efler教授

研修目的

オーストリアの音楽教育、あるいは文化や歴史について実際に触れる事で、普段の学習では得られない国際的な理解を深める事を目的とした。その上で、改めて日本との相違点を考える事で、今後必要となる学習内容や方法を見出し、取り組むことで自らの成長に繋がると考えた。
また、現地の教授や学生、既に留学している日本人達と関わりを持つ事で、それぞれの立場からみた音楽的なヴィジョンを知り、自らの方向性を定める上での契機とすることも目的とした。

研修内容

11日間の講習期間の中で、一人の先生から4回のレッスンを受けることが出来、毎日最低1時間の練習時間が与えられる。また、最終日には各教授のクラスから選抜された生徒達による選抜演奏会が行われる。聴講はどのクラスにおいても基本的に自由に行うことが出来、周りの生徒達から学ぶ機会も設けられている。場所はいずれもウィーン国立音楽大学内で行われる。

一回目のレッスン

Peter Efler教授と
Peter Efler教授と

<曲目>F.F.Chopin:Polonaise no.5 fis-moll Op.44/Etude a-moll Op.25-11

最初のレッスンではショパンのポロネーズを持って行った。先ず、通しで弾き、色々な教えを受けた。Efler先生のレッスンは基本的に先生の考えを教えて頂き、その上でこちら側の考えを伝えて、一緒に考えていくような形であった為、自分自身に合う演奏の仕方を学ぶ事が出来た。
今回の内容としては主に、

  1. 序奏ではテンポを変えたり、アゴーギグをかけたりせずに正確なテンポで奏する事。
  2. ポロネーズのリズムを正確に入れる事。
  3. 79小節以降のポロネーズのリズム反復ではcresc.とdecresc.を用いて変化を付ける事。

であった。
その上で自分の考えを伝えた結果

  1. 大きなテンポは保った中で必要な重さや変化を上手く使い、劇的な効果や緊張感を作ること。
  2. 正確にリズムを入れるところと強調する所をもっとはっきりと分ける事。
  3. 一貫した表現をする為に32分音符やオクターヴを一つずつ明確により強い意思をもって弾くこと。

というように考えて教えて下さった。
その後、「もっと何か弾いてほしい」と仰って頂いたので、同じショパンからエチュードを聴いて頂いた。

二回目のレッスン

<曲目>J.S.Bach:Toccata c-moll BWV911

二回目のレッスンでも同様の形でレッスンは行われた。
先生からの内容は

  1. 序奏において一拍一拍が分かるようにそれぞれのモチーフ一つ一つを細かく分けて弾くこと。
  2. 色々な楽器を考えた上でフーガでの様々の動機のアーティキュレーションや強弱を考える事。チェンバロではあまり強弱がつかないことや、チェロでのボーイングの仕方から必ず切って弾くこと等。変化つけるより一貫した表現を心掛ける事だった。

その上で自分の考えも伝えて話し合って考えて下さった結果、

  1. 大きな音楽的な流れも失わない範囲で、モチーフや拍が分かる奏法を身に付ける事。
  2. バロックの様式感を考えた上で、上手く自分自身の考えた変化や多彩さを見つけていく事。

を教えて頂いた。
そして、終わりに、「君に是非最終日の選抜演奏会にクラス代表として弾いてほしい」と仰って頂き、出演することが決まった。

三回目のレッスン

<曲目>:L.v.Beethoven:6 Variationen über ein eigenes Thema F-dur Op.34

三回目のレッスンも同じように進められた。
先ず、先生からは

  1. Themaのテンポをもっと速くとること。Arpeggioは拍頭から始める事。
  2. Cantabileの表現をより積極的に行う事。(Themaと第3変奏)
  3. アーティキュレーションをもっと明確にすること。

その上で最終的に

  1. 速くと言っても第1変奏との一貫性が取り難くなるので、第1変奏からThemaのテンポも考える事。
  2. Finger legatoとpedalを上手く使う事で響きのあるCantabileの音の表情を考える事。
  3. Bachの1とも通じるところがあるが、全体の流れと一つ一つのアーティキュレーションを上手く表現する事。

を教えて頂いた。
これまでレッスンを受けて先生は一つ一つのモティーフを細かく分けることやテンポを保つことをとても重要視なさっている事が分かった。私自身細かく分ける事と、大きな流れを保つ事を上手く合わせて行う事は苦手なことの一つの為、とても勉強になる事を沢山教えて頂けた。

四回目のレッスン

<曲目>F.F.Chopin:Polonaise no.5 fis-moll Op.44
    C.Debussy:La terrasse des audiences du clair de lune

最後のレッスン。最終日の選抜演奏会でショパンのポロネーズを弾いてほしいと仰って頂き、最後にこの曲を再び聴いて頂くことになった。一度聴いて頂いていた事もあり、細かい所の微調整をして頂き、ポロネーズは終わった。「君、大トリにしたからね!」と伝えられ、感謝の気持ちと頑張りますとの意気込みを伝えた。そして、「最後に何か弾いてほしい」と仰って頂いたので、ドビュッシーの前奏曲集から一曲聴いて頂いた。先生の一番好きな作曲家がドビュッシーだという事で、話も盛り上がり、色々な音色や考えについて教えて頂いた。 

選抜演奏会について

選抜演奏会ではピアノ、声楽、クラリネット、ヴァイオリン、フルートとそれぞれのクラスから選ばれた生徒達が演奏した。ウィーン国立音楽大学のクララ・シューマンホールという所で、殆ど満員のお客様の中で行われた。ウィーンの方々はとても温かく、音楽好きな方が多くとても良い雰囲気の演奏会だった。私は、大トリという事で講習全体最後の締めくくりの演奏だったが、温かいお客様や先生方に支えて頂き、リラックスした状態で楽しく演奏する事が出来た。終演後、先生方やお客様から嬉しいお言葉も頂き、無事講習を終えることが出来たのだと実感した。

研修を終えて

ウィーンという初めての地へ不安と期待を持ちながら向かい、どうなる事かという事も沢山ありましたが、振り返ってみると沢山の収穫があった時間を過ごすことが出来ました。講習会でのレッスンでは、とても温かく熱心に教えて頂いた事で、音楽的にも人間的にも学ぶ事がとてもあり、今後の学習について考える契機を沢山与えて頂くことが出来ました。また、一緒に学んだ学生からも色々な刺激を受け、切磋琢磨しながら励む事が出来、良い出会いが沢山ありました。
また、日本とは全く異なる文化や歴史に触れる事で、音楽的な事柄については勿論、社会的に考えさせられることも多くあり、とても勉強になる毎日を過ごすことが出来ました。そういった時間を過ごす中で、音楽だけではなく、もっと幅広く学ばなければならない事が山積しているという事も改めて認識しました。
従って、これからは今回の時間で得た事を生かし、幅広い視野を持つ事が出来る人間になれるように、更なる努力をして参りたいと思います。
最後に、このような貴重な機会を作って下さった国立音楽大学の先生方、学生支援課の皆様、及び全ての関係者の皆様、本当にありがとうございました。皆様のご支援が無ければ、今回の研修を達成することは出来ませんでした。また、日頃から親身にご指導頂き、応援して下さる恩師、加藤一郎先生に心から感謝致します。

奈良希愛先生のコメント

寒い時期と重なりましたが、ご報告を読ませていただき、大変充実した時間を過ごされたことがわかりました。沢山の曲をレッスンで聴いていただいたご様子で、そしてまた多くのアドヴァイスを受けられたこと、とても嬉しく思います。また最後の受講生選抜演奏会にも選ばれ、しかも出演順が一番最後ということでプレッシャーも学ばれながら、向上心をさらに得てご帰国されたようで、これからの成長も大いに楽しみです。ご報告のを読ませていただきながら、少々与えられた練習時間が少ないことが気になりましたが、問題は起こりませんでしたか?様々な作曲者の作品を一人の先生から集中的に学ぶということは、先生の音楽に対する姿勢、そしてお考えもよりしっかり感じることができたと思います。また大学内でのセミナーということもあり、オーストリアの音大の雰囲気を味わいながら勉強できたことは、いい刺激を与えてくれたのではないかと思っています。ヨーロッパの冬、そして過ごし方を体験できたのもいい人生の財産となったと確信しています。これからも大いに頑張ってください。

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