国立音楽大学

ウィーン夏期国際ゼミナール(オーストリア・ウィーン)

關 音々子 3年 演奏・創作学科 鍵盤楽器専修(ピアノ)

研修概要

研修機関:ウィーン夏期国際ゼミナール
研修期間:2017年8月16日~8月25日
担当講師:ボリス・ブロッホ教授

研修目的

クラシック音楽を育んだ本場に身を置き、その土地の空気感、文化などに触れながら自分自身や音楽と向き合い、西洋音楽に対する理解を深める。
そして著名な教授のレッスンを受講、聴講し、世界各国から集まる受講者との様々な交流や経験を通して自分の音楽観を見つめ直し、考えを深め、視野を広げることを目的とした。

研修内容

8月16日

事務所から事前に9時に大学に集合するよう連絡があった。本来はその時にレッスンの打ち合わせ等があるのだが、ブロッホ先生の飛行機が遅れてしまい、まだウィーンに到着されていないことを知らされた。18日に再び集合することになった。 17時半から全体のオリエンテーション、オープニングコンサートがあった。オープニングコンサートは、今回のセミナーの受講者3人の演奏だった。同世代とは思えない素晴らしい演奏に初日から刺激を受けた。

8月18日 第1回目レッスン

11時45分に大学に集合するよう連絡があり向かうと、指定された部屋にブロッホ先生がいらした。ブロッホ先生のクラスは私を含め3人で、12時から一人1時間のレッスンが始まった。 私はリストのバラード第2番をみていただいた。最初に通すと、音楽的に弾けているが、自由に弾きすぎてしまって音が分散し、拍感がなくなってしまっている、ルバートは自分の気持ちの中にあるだけで、リズム感や構成感が失われてはいけないと言われた。またこのバラードに含まれている物語をもっと表現しなければならないと指摘された。音色についてもオーケストラの楽器を想像するようにとおっしゃった。 曲の前半部分で時間になり、レッスンは終わった。

8月22日 第2回目レッスン

リストのバラード第2番の続き(後半部分)をみていただいた。 ミスタッチが多かったアルペジオの部分は、手首を回すのではなくポジションを考えて、繋げようとせずグループ分けをして弾きなさいと説明してくださった。 また第1回目と同様、構成感がないと何度も指摘された。フレーズを理解して、リストが書いたとおりの方向性で弾きなさいと言われた。前回のレッスンと同じ注意をされないように改めて楽譜を読み込んで臨んだつもりだったので、本当に情けなく、自分は如何に音楽の理解度、勉強が足りていないのかということを痛感させられた。 長い期間弾いてきた曲で、たくさんの先生方にレッスンをしていただいてきたが、これまでになかった視点から指導していただき、また弾きなれていた分、基礎的な部分が疎かになってしまっていた。少しでも集中力が欠けミスタッチをするとすぐに指摘されるので、常に緊張感があり、自分の音にもっと意識と責任を持たなければならないと思った。

8月23日 第3回目レッスン

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第31番Op.110をみていただいた。 第1楽章を通すと、すごく良いとお褒めの言葉をいただき、そのまま第2楽章を通した。Allegro moltoと書いてあるが、テンポが速すぎて乱暴に聴こえる、ドラマティックでなく面白い楽章である、と言われた。曲の性格について少し間違った理解をしていると指摘され、前半はお祭りで口笛を吹いているように、中間部は縄の上を歩いているように、とおっしゃった。また、もっと和音のバランスやシンコペーションを聴くように言われた。

8月25日 第4回目レッスン

ベートーヴェンのソナタ第3楽章をみていただいた。 冒頭のAdagio、più adagio、Andanteや、フーガのAllegroのテンポ感について指摘された。また、フーガはペダルが多すぎると言われ、もっと指だけでレガートをするように言われた。ペダルはピアノの魂であるから使い方を本当に気をつけなければならない、利用するものでも救命道具でもない、と説明された。また声部分け、強弱のコントラストをもっと明確にするように言われた。 他にもこの曲に限らず、将来的に必要となってくる練習や演奏におけるアドバイスをいくつか教えていただいたら時間がきてしまった。

ボリス・ブロッホ先生と
ボリス・ブロッホ先生と

この講習会のために5曲用意してきたが、2曲しかみていただくことができなかった。どちらも弾きなれていた曲であったが、楽譜の読み方や基礎的なテクニックのことから注意され、自分の音楽に対する考えがどれほど甘かったかに気付かされた。またそのような注意をブロッホ先生にさせてしまったことが申し訳なく情けなかった。
最後にディプロマを下さり、全4回のレッスンが終了した。

奈良希愛先生のコメント

長年ドイツの音大にて名教授としてその名を馳せ、後進の指導にあたられているブロッホ先生のクラスは、厳しいながらも刺激の多いものだったと思います。根本的に音楽を作り上げるにあたって、どのような複合的な考え、意識、意欲が必要なのかを、きっと学ばれたと思い、それは決して優しさだけではない中で、しっかりと得られたもののひとつだと願っています。
レッスンの曲目の数よりも、どれだけ多くのことを学んだか、内容の方がはるかに重要だと思います。構成感がない、というのは作曲家の意図を組むことが少しおろそかになっているのではないか、と考えます。それは楽譜の読み込みだけでは足らない、様々な分野からの作品へのアプローチが必要なことだろうと察します。
余談になりますが、私自身入賞した国際ピアノコンクールの審査員の1名にブロッホ教授がいらっしゃったことがありました。演奏後にいただいたコメントも、もちろん当時から厳し目のものではありますが、ご本人の考える音楽に対して、偽りのない強い御意志のつまったアドヴァイスであったことを思い出し、そのレヴェルまで考え抜いた音楽家に、説得力ある演奏を聴かせるというのは、並大抵のことではないと感じた記憶があります。厳しいことをおっしゃっていただけるうちが、勉強のチャンスだと思います。どうぞこれからも頑張ってください。

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