ニース夏期国際音楽アカデミー(フランス・ニース)
關 奈々子 3年 演奏・創作学科 鍵盤楽器専修(ピアノ)
研修概要
研修機関:ニース夏期国際音楽アカデミー
研修期間:2017年7月31日~8月7日
担当講師:パスカル・ロジェ教授
研修目的
フランスの芸術や文化に触れることで、繊細な色彩感、文学的ニュアンスによる感性や表現力を磨き、音楽作品に対する解釈や理解を深める。
また、新たな環境で研鑽を積むことで、自分自身や音楽と改めて向き合い、視野を広げることを目的とする。
研修内容
8月1日 第1回目レッスン
F.Chopin Ballade No.4 Op.52/Etude op.25-11
初日のオリエンテーションで、レッスンは1回1時間、計3回行われることになった。簡単な自己紹介、レッスンしていただきたい曲を伝えてから早速レッスンが始まった。
最初に曲を通したあと、主に前半部分をみていただいた。まず、曲全体に関して注意されたことは、ハーモニー及びバランスの問題であった。ピアノという楽器の特徴(弦の太さ、長さなど)を吟味し、特にcrescendoの際に和音による伴奏が単旋律のメロディーをかき消さないよう常に注意すること、しかし、特にこの曲の場合、伴奏がハーモニーをつくりだしているため、伴奏の音量をただ抑えるのではなく、メロディーを支えるようバランスをよく聴くように言われた。難題であるが、この曲において一番大切なことだと、先生が指や腕のコントロール方法について実際に弾きながら説明してくださった。
冒頭部分においては、ダイナミクスをつけたりテンポが揺れないよう言われた。また、「白色」ともおっしゃり、冒頭において色彩を全く考えたことのなかった自分にとってとても新鮮な表現で、幅広い視野からの豊かなイメージを考え表現につなげる必要があると改めて感じた。
また、強弱について、fが決してアクセントやつぶれた音にならないように注意すること、そして、pは柔らかく弾こうとすると音が不明瞭になるので指先の神経を特に意識するよう言われた。その際に、例として「鐘」を挙げられ、自分自身にとって腕である鐘の振り子は常に脱力して柔軟さを保つこと、指先である先端物質は、音色にも影響するため、柔らかくしすぎたり押し付けたりせずにさまざまなコントロールを効かせられるようと非常にわかりやすく説明してくださった。
8月2日 第2回目レッスン
C.Debussy Images Reflets dans l'eau/Poisson d'Or
豊かな音色や響きをつくるために、指番号を変更したり、ペダルのコントロールをさらに細かく工夫するよう、先生に実際に弾いていただき比較しながら指導していただいた。また、フランス印象派の作曲家において、ドビュッシーは広い音域、ラヴェルは狭い音域によるハーモニーが特徴で、それらが生み出す独特の音響効果をより表現するよう言われた。
Reflets dans l'eau
ハーモニーのわずかな変化をさらに繊細に表現すること、音自体は同じ繰り返しであってもアーティキュレーションが異なる部分が多いため、それらをより意識的に弾きわけ演奏により立体感をもたせる必要があると言われた。
Poisson d'Or
音からのイメージをより具体的にもった上で音色づくりやペダルを研究するように言われた。音楽の動きやテンポの揺れが大げさすぎるときがあるため、打鍵の位置や音の向きを工夫するよう先生が近くで弾きながら指導してくださった。
8月4日 第3回目レッスン
F.Liszt Leggierezza C.Debussy Poisson d'Or F.Chopin Ballade No.4 Op.52
Leggierezza
半音階によるハーモニーの細かな変化を一音ずつよく聴くこと、また、半音階のなかにでてくる広い音程をよく歌い大切に表現するよう言われた。
Poisson d'Or
後半部分をみていただいた。低音域においてより深い音を出すために、腕の動きを工夫するよう、実際に私の腕をもって丁寧に教えてくださった。また、狭い音域内でppで弾く時に音が塊にならないよう、テンポを少し落としアーティキュレーションをはっきりさせ弾くことを意識するよう言われた。
Ballade No.4 Op.52
中間部から後半にかけてみていただいた。第1主題の変奏部分においてメロディーが連符にとらわれすぎて縦割りに聴こえてしまうため、より即興的に聴かせるために、左手の伴奏は揺れずに右手のメロディーが自然かつ自由に歌えるよう先生が実際に弾きながら指導してくださった。
奈良希愛先生のコメント
ニース夏期国際ピアノアカデミーにて、世界各国で演奏活動を行われているパスカル・ロジェ教授のもとで大変充実したレッスンを受けられたご様子、とても嬉しく思います。レッスンいただいた曲目も様々な作品におよび、きっと練習に忙しいながらも、生き生きとした時間を過ごされたのだと確信しています。
ロジェ先生の強みはなにより、現在も積極的な演奏活動を行っていらっしゃることだと考えます。演奏家のアプローチというものは、弾いている人だからこその説得力に富み、実際に弾きながらご指導くださることは、レッスンを受ける側にとっても、大きな刺激となるものだと改めて思いました。
私事になりますが、実は学生時代に全く同じニースのアカデミーで、ロジェ先生のクラスを受講しました。それ以来先生とのお付き合いがありますが、当時も今も、学生に対して真摯に向かわれる姿を伺い、私自身も改めて考えさせられた次第です。關 奈々子さんのますますのご成長を楽しみにしております。