ニース夏期国際音楽アカデミー(フランス・ニース)
西川 彩子 4年 演奏学科 弦管打楽器専修(フルート)
研修概要
研修機関:ニース夏期国際音楽アカデミー
研修期間:2016年8月8日~8月15日
担当講師:クロード・ルフェーヴル教授
研修目的
西洋音楽の発祥の地であるヨーロッパでの音楽環境に自分の身を置き、本場の空気を肌で感じ現地における西洋音楽のあり方、音楽が常に身近にあるという生活環境が日本とはどう違うのかについて知り、多くの音楽を学んでいる日本人が音楽留学をするヨーロッパで勉強をすることの良さや厳しさについて知りたかったということと、日本で学んできたフルートのレパートリーを学外でどのように評価されるのかを知ること、そして今まで学んできた英語やフランス語を使って現地の人と会話をして、更に語学の知識を深めることを目的とした。
研修内容
私はフランスのニース夏期国際音楽アカデミーにて、クロード・ルフェーヴル先生のクラスに参加した。講習期間は1週間で、フルートクラスは受講生が14人おり、日本人6人、フランス人5人、韓国人、スペイン人、ブルガリア人が1人ずつ参加していた。レッスンは公開レッスン方式で常に他の聴講生がいる中で行われた。私はBoosted Sessionを受講していたので期間中にピアノ伴奏付きレッスンが4回、無伴奏レッスンが2回行われ(1レッスン約30分)、フルートのレッスンの他に室内楽のクラスも受講していた。空き時間には個人に与えられた部屋で練習をしたり、聴講に行くなどしていた。
第1回レッスン
初回のレッスンでは伴奏なしでフォーレのファンタジーを見ていただいた。この曲は、中学生の時から何度か演奏したことがあるのだが、フルートを吹く者として重要なレパートリーであり、技術面はもちろんだが音楽性を学ぶ上でとても勉強になるため選択した。初めてのレッスンということでかなり緊張していたためか、日本で練習してきたような音が出せずに、曲についての指導というよりも基礎的な部分をかなり指摘された。ソノリテの教本に沿って毎日どの課題も欠かさず行うことによってより滑らかな音と音のつながりが作れることや、速いパッセージを様々なアーティキュレーションで練習をすることで運指のコントロールを調整できるということなど、いかに基礎的な練習をすることが大事かを再確認することができた。
第2回レッスン
2回目のレッスンではゴーベールのロマンスを伴奏付きでレッスンをしていただいた。この曲は比較的ゆったりとしたメロディーなため、速いパッセージの曲よりも更に音と音との間が滑らかに繋がるよう意識して吹くように言われた。また、私の音が人間が吹いているというより機械が演奏しているように聴こえると指摘を受けた。ソルフェージュを気にしすぎるあまり音楽が小さく聴こえ、吹いている時にどのような感情を込めて演奏しているのかわからないと指摘された。特にこのレッスンで勉強になったことは、音量のpやppが小さくしようと考えるあまり内側にこもった音になってしまう部分が気になるため、曲の系統にもよるが歌う部分のpの時は一度大きくfで吹いてみたあと、心の中でmfで吹いているような気持ちのまま音はpで吹くという練習が私にはとても効果的であり、今までそのような練習はしたことがなかったため今後の練習にかなり役立つと考えた。曲の終盤にある、テーマに戻ってきたppの部分はオーボエを意識して演奏すると良いといわれ、今までオーボエと考えて吹いたことがなかったのでとても良い刺激になった。普段練習する部屋が小さいことも問題であると仰っていて、大きい部屋で演奏していて、自分から一番遠い場所に向かって吹くというイメージを持って演奏することでより遠くまで響かせることができるといわれ、その指摘を受けてから吹くと、聴講生にもわかるくらい違いが出たのでこれからより意識的にイメージトレーニングを重ねながら練習していきたい。
第3回レッスン
伴奏付きでタファネルのアンダンテパストラルとスケルツェッティーノを演奏した。この曲は転調や音量の切り替わりが激しくかなり難易度の高い曲だと仰っていた。このレッスンでも、音量の差が少なすぎるため全てが平坦に聴こえているとの指摘を受けた。始めにルフェーヴル先生がお手本として演奏したものを聴くと、自分が演奏していたものとは比べ物にならないくらいはっきりとした差があり、先生がどこを大きく激しく演奏したくて、どこを小さく演奏したいのかが明確に伝わってきた。自分が大小はっきり違うように吹いていた演奏がいかに聴く相手に伝わっていなかったのかを痛感させられたレッスンとなった。また音程が安定しないことについても指摘され、普段の大学でのレッスンではピアノの伴奏付きの曲でも演奏会や試験前以外では伴奏なしで見て頂いていると言うと、それでは音程感や室内楽の能力がなかなか身につかないため、室内楽やピアノとの合わせを週に一度はやるべきだといわれた。
スケルツェッティーノの部分は、16分音符以上の細かいパッセージになるとどんどん指が先に転がっていってしまうため、第1回のレッスンの時にも指摘を受けたように、タンギングと指が上手く合うように日々様々な方法のパッセージ練習をして、指が自分の思うようにコントロールできるようにしていきたい。
第4回レッスン
全6回あるレッスンのうち、全てのレッスンで違う曲を満遍なく見ていただこうと考えていたのだが、一度のレッスンが約30分と短いためこれまでに吹いた曲でもう一度見直していただくことになり、フォーレのファンタジーを再びみていただくことになった。
初日よりはだいぶ環境にも慣れてきて、1回目よりは自分の演奏したいことが出せたと思った。先生にも「初回より良くなっている」と言われたが、今回もfの小ささについて、特にAndantinoの部分で下半身の筋力や体全体の圧力が足りていないと注意を受けた。この講習会中に何度も先生に注意を受けた、nutrition(栄養)のある音で吹くためにはどう練習をすれば良いかということをクラス全体で話し合い、私の場合は息の無駄遣いをしすぎなので、もっとヴァイオリンのように密度のある音で吹くことが大事だと言われた。フルートの管に入っていない息が多すぎるため、focusさせつつどうやったら響きが出てくるのかを想像しながら練習することが大事だとアドヴァイスをいただいた。
第5回レッスン
この日も再びタファネルのアンダンテパストラルとスケルツェッティーノをみていただいた。毎日のように音の響きについて指摘されていたためかなり意識して吹いたところ、少しだけ成果が出始めていると言っていただけた。しあし、その後先生の頭部管を私の頭部管と交換して組み立て吹いてみたところ、全く自分の楽器と違う、はっきりとして密度の高い音が出たので頭部管を変えただけでここまで違いが出るものなのかとかなり衝撃を受けた。自分でルフェーヴル先生の音に近い密度の音を出せたことによって、より出したい音のイメージが明確になったのでそこに近付いていきたいというクリアな形の目標ができた。
また、どの曲を演奏する時でもフレーズの一番はじめの音が大事で、より丸く音を出すために喉を開けて吹くことが大事だと教わった。毎回感じていたことだが、やはりソノリテなどの基礎練の段階で滑らかに音を出すことの練習が不可欠であると思った。
第6回レッスン
この6回目のレッスンの前日に講習会自体は終了しており、フルートクラスの数名だけがピアノ伴奏なしのレッスンを受けることとなった。
私はフェルーの三つの小品から「Toan-Yan」を演奏した。特に表現の点では指摘を受けなかったが、この曲では音形の上下に合わせて自然なかたちでクレッシェンド、ディミヌエンドをつけること、またクレッシェンドの音量の幅が広い時でも、(例えばppからffへのクレッシェンドなどの場合)息だけを吹き込んで大きくするのではなく中身の詰まった音でのぼっていくことが大事だといわれた。
大友太郎先生のコメント
ニースは世界的に知られている高級リゾート地ですが、 私たち音楽家の間では毎年夏期国際音楽アカデミーが開催されている場所として有名です。世界中から音楽家を志す優秀な若者たちが大勢集まる所なので、きっと勇気と緊張感をもって参加されたことと思います。
今回教えていただいたクロード・ルフェーブル先生は演奏家としても教育者としても定評があり、度々来日されている有名な先生です。今回のような短期間でも初めての海外での暮らしは、その場の空気の匂い、居住環境、食事、言葉等、日本との大きな違いを感じたことでしょう。また、レッスンを通じて、いかに基礎が大切かということを先生からの様々なアドヴァイスにより強く感じたことでしょう。演奏するときの音楽に対する心構えやフルートの音色づくりへのヒントも得ることができたようですね。様々な国の方たちとの交流も楽しかったことでしょう。この貴重な経験を生かし、これからも良い音楽家を目標にチャレンジ精神を忘れず積極的に勉強を続けてください。