草津夏期国際音楽アカデミー
品田 広希 4年 演奏学科 声楽専修
研修概要
- 研修機関 草津夏期国際音楽アカデミー
- 受講期間 2011年8月21日~2011年8月27日
- 担当教授 Lynne Dawson
研修内容
研修1日目(8月21日)
今日は受講生9人の自己紹介と声聴きを兼ねて一人ずつ歌を歌いました。受講生は皆、歌を歌う前に自分の名前、職業をみんなに紹介し人によっては好きなオペラなどを話す人もいました。そのあと今から歌う歌の説明(背景、歌詞の内容)をして歌い始めていました。歌い終わったあと自然と拍手が起こり、Lynne Dawson先生は挨拶をする程度で次の人に代わっていきました。私はドナウディ作曲Amorosi miei giorniを歌いました。受講生の半分以上が音楽大学、一般大学を卒業され仕事をしながら音楽をされている人でした。残りの半分は私と同様、音楽大学の学生でした。また、私以外はみんな女性でした。国立音楽大学の後輩も1人受講していました。
残った少しの時間でLynne Dawson先生が指名した人のレッスンが行なわれました。みんな自分のレッスン以外の時間はポイントをノートに書き写したり、レコーダーに音をとったりしていました。
みんなたくさんの人とコミュニケーションをとり終始明るい雰囲気で一日目のレッスンを終えました。
研修2日目(8月22日)
今日は夕方にLynne Dawson先生のコンサートがあり、先生の練習とリハーサルのため休講でした。
研修3日目(8月23日)
今日から本格的にレッスンが始まりました。9時から12時までというレッスン時間でしたが、Professorの歌科だからという提案で9時半から12時半に変更になりました。レッスンはホテル所有のチャペルで行なわれました。目安としては一回のレッスンで6人(1人30分)が歌を歌うことなり、今日は昨日歌わなかった6人が歌いました。
ヘンデルの中のアリアを歌った受講生に対しては、コロラトゥ-ラの所を特にリラックスするように指導していました。バロックの洗練された音楽では無理なアプローチはしないように、体に力をいれないように受講生みんなでストレッチ、エクササイズをしました。またピアノとのアンサンブルの必要性について語られていました。
モーツァルトのモテットを歌った受講生に対しては、上に抜けるのではなく前に声を飛ばしてという風に発声について指導されていました。また体で音に動きを出すのではなく感じて音を出しなさいと指導されていました。
グノー作曲オペラ'ファウスト'の中の宝石のアリアを歌った受講生に対しては、フランス語の発音(主に子音)の指導がなされました。またしっかりとした適切な母音(声)をつくるために横隔膜で支えることを要求していました。また受講生にそれはどういう意味?それは何色をしていて、大きさはどのくらい?という想像することの大事さを指導されていました。
シューベルト作曲'春の信仰'を歌った受講生に対しては、ドイツ語の発音(子音)と、ピアノがどういう音形を弾いてるかを意識すること、ピアノとの調和についての指導をされていました。
私はモーツァルト作曲オペラ'フィガロの結婚'もう訴訟に勝っただとを歌いました。Professorはオーケストラの変化をしっかり理解しそれなりの表現を要求してきました。また、レチタティーボにでてくるキャラクターそれぞれ色を出してみたらと提案してくれました。刻む所、流れる所のメリハリを伴奏から感じお客さんが単調で飽きないような音楽つくりをするべきだと言われました。また、自分なりのキャラクターがもっとこっちに見えたいということを指導してくださいました。色々挑戦してみて色んな人から感想を聞きなさいということでした。
研修4日目(8月24日)
Vergin tutto amorを歌った受講生に対しては声帯のしくみについてお話されました。鼻にかからないようにと指導されていました。また受講生は人前でチャレンジするのを少し躊躇していたので考え込まないでいいからとりあえずトライしましょうと促していました。受講生も段々表情が明るくなっていくように感じました。
シューマン作曲Liederkleisを歌った受講生はピアノ、ピアニッシモの表示に困っていたのでただ音を小さくすると思わないで温かみのある感じでソフトに歌ってみようと言われていました。また伴奏の流れを歌にもっと利用しなさいと指導されていました。
Er, der Herrlichste von allenを歌った受講生に対しては、しっかり伴奏を聴き大きなフレーズで考えることを薦めていました。また発声についても指導をされていました。フレーズの中で強調させたい言葉をつくり、力をいれて表現するのではなく子音のいれるスピードを早くし母音を長くその母音で表現することを強く指導されていました。
メサイアの中のアリアを歌った受講生に対しては、音を出そうと思って歌うのではなく、自然と出る音にしようと指導されていました。なにも考えないで歌い始めないこと、しっかり準備をしてからと指導していました。
レッスンの合間の5分間休憩の時に通訳の人に呼ばれました。Professorが自身で主任を務めるRoyal Northern College of Music(RNCM)へ留学して、来年から一緒に勉強しないかとおっしゃってくれました。英語の力がすごく大事になるとのことでした。今後も色々その件について聞いていきたいと思います。また8月27日にホテルのロビーで行なわれるコンサートに出てみないかと言われました。
研修5日目(8月25日)
ヘンデルの中のアリアを歌った受講生に対して、適切な母音について指導されていました。歌に歌わせられるのではなく自分で歌を引っ張るように歌いましょうと指導されていました。ピアノと同じ所を歌っているときは特にピアノを感じるべきであると指導されていました。イタリア人の声楽家が、あごはゆるく喉が口になっているイメージで、喉で子音をあやつるイメージを持つとナチュラルに発声できるとおっしゃっていたそうです。しっかりとした発声を身につけるためにお腹に空気を入れるエクササイズをみんなでしました。高い音に丸みをつけようとするのは間違いで、丸みをつけるためには音を出すまでの過程と高い音の空間が大事と指導されていました。
ヘンデル作曲オペラ「ジュリオ・チェーザレ」より、私の運命に泣くでしょうを歌った受講生に対しては、ただ普通に歌うのではなく聴衆が楽しめるような音楽つくりのテクニックについて指導をされていました。多くの色の変化を感じるように、また日本人の苦手なI母音とE母音についてお話されていました。パフォーマンスでは自分の用意した以上の所をどうするかが大事になってくると指導され、最後の最後の残響が消えるまでというプロ意識をみんなに伝えていました。
午後にLynne Dawson 先生の声楽公開レッスンがあり私を含め4人が受講しました。私はモーツァルト作曲オペラ「ドン・ジョヴァンニ」よりDeh vieni alla finestraを歌いました。ここでは母音の工夫について指導してくださいました。母音からレガート、表現、表情をつくることでリラックスし自然に歌えるようになりました。
研修6日目(8月26日)
Die Nachtを歌った受講生に対しては、拍の上に母音をのせることを指導されていました。また、ピアノの響きの変わる所をしっかり聞くように指導されていました。歌い終わりの響きは先に、明るく飛ばしましょうと言われていました。また表情、詩の内容も母音でつくることを指導されていました。
Schlagen herzenを歌った受講生に対しては、長く伸びるときの音を丸みのあるように歌うことを求めていました。また色々なエクササイズから喉に負担がかからないように指導をされていました。しっかりとお腹に空気を溜めリラックスをしながら声を出すことを強く言われていました。Goldと聞いて何をイメージするかというProfessorの問いに対し、受講生は高価、美しい、輝いていると答えました。そのあとProfessorは、ではそのイメージしたものをしっかり意識してから発声することを要求していました。歌うことに精一杯になるのではなく、どんなことを言っているのかしっかり頭にいれて歌詞によって想像し歌いわける。考えてから息を吸い、そこから発声をするようにと指導されていました。歌う前にどれくらい考えるかがカギで、声が出てからはもう何することができないと話していました。
プッチーニ作曲マノン・レスコーの中のアリアを歌った受講生に対しては、音の響きは大きなスペースを意識してという高度なことを要求していました。丸く包み込むように歌い音程を調節しましょう、オーケストラが変わるところは雰囲気を変えてと言われていました。
研修7日目(8月27日)
ピアニストと一緒に歌っているという気持ちをしっかり持つことが大事で、ただ歌うだけではなく、私たちはメッセージを伝えなければいけないということを言われていました。フレーズの最後まで大切に(緊張感をもって)顔、目で思いを伝えるように、またフレーズとフレーズの間を大切にして長い音を押すように歌うことはやめようと指導されていました。
ピアノをしっかり聴くことは本当に大事と強く指導されていました。曲の内容、時代背景等しっかり把握するようにとおっしゃっていました。また、恋に落ちている人を自分なりにイメージしてみなさいとおっしゃっていました。例えば、その人は髪色は黒、目はブラウン、少し太っている人に恋をしていると言っていました。
同じ音でも同じ歌詞でも違うエネルギーを出すテクニックが必要だと言われていました。喉の筋肉を最大限に使えるように体をリラックスさせ、軟口蓋を押して声、喉を固めないように気をつけました。
小さいフレーズで歌ってみるのも大事で、短い音は母音を伸ばしレガートに歌い、言葉を大切に歌いましょうと指導されていました。歌いながら目を閉じるとオーディエンスとの会話を切ることになる。目を閉じるとどこに音をもっていきたいのか表情が伝わらないということになると話していました。
私は今日レッスンでベートーヴェン作曲An die ferne Geliebteを途中まで歌いました。この曲は大変好きな曲でしたが、ドイツ語であることと難しく長いということで苦手意識を強く持っていました。ですが、Professorは優しく指導してくださり、友達はとても褒めてくれたので歌うことが大好きになりました。伴奏と一緒に歌うこと、しっかり伴奏を聴くことを指導してくださいました。また、強調したい単語を出すときに母音で見せること、気持ちが入りすぎるとテンポが遅くなる傾向があるから早めて歌おうと指導してくださいました。また早口で詩を歌うときに、母音をしっかり伸ばして全ての単語を捨てずに大事に歌うこと、丁寧に楽譜に忠実に歌うことを教わりました。
研修8日目(8月28日)
O del mio amato benを歌った受講生に対しては悲しみと喜びの表現の区別をしましょうと指導されていました。子音を発音するにあたってレガートが崩れないように。また、声を飛ばそうと思うと自分がいなくなるからずっとそこにいるように歌いましょうという高度なことを言われていました。高い音に上がるにつれて苦しそうに歌っていたので、高い音を出すときに自分の声をカバーしないで、リラックスしましょうと指導されていました。ピアノの音を聴き一緒に歌う方法として、ピアニストにこういう歌ですよと伝えるように歌ってみましょうと言われていました。また音楽が止まらないように歌い手がピアニストを引っ張るように歌ってみましょうとも言われていました。
Nacht violenを歌った受講生に対しては曲のファーストインパクト(かわいらしい曲、明るい曲、簡単そうな曲、難しい曲なのか)を教えてほしいと聞いていました。ピアノの調の変化をうまく利用してみましょうと言われていました。Heilは歌ではハイルではなくハアーイルのように、meineはマイネではなくマアーイネのように歌うとより自然でレガートになりますと指導されていました。聴いている人に分かりやすく、自分で考えているだけでなくしっかりやらなくては伝わらないと指導されていました。Heillichは神聖なという意なので響きも保ちその意をお客様が楽しめるように伝えるようにと言われていました。ストレスをかけるときはaperto、ストレスをかけないときはchiusoどんな響きがその曲に1番必要かを考えてみてから表現をするようにと言われていました。喋っている口の形を、歌になって変に変えないようにと話していました。
メサイアの中の曲を歌った受講生に対しては、最初の声または表情でこの人がどのような人かをお客さんは見るからしっかりと!といわれていました。母音の音色で深刻だったり、幸せだったりを表現しましょうと言われていました。まずは言葉に気持ちを乗せて歌えることが要求されますとおっしゃっていました。その後にお客様を感動させる、楽しませるテクニックをみせるということを言われていました。オーケストラを感じてメリハリをつけて。
今日の最後にProfessorから呼ばれて最終日である8月31日にあるホールで開催されるスチューデントコンサートに出演しないかといわれました。これは各クラスから一人だけの枠ということでとても嬉しく思いました。
研修9日目 8月30日(レッスン最終日)
私はAn die ferne geliebteを歌いました。気持ちよく歌わせて頂き、Professorも「ひろきはこの10日間で私の教えをよく吸収した。あとはあなた自身で作っていって大丈夫」といってくださいました。最後にみんなで歌を歌い、話をして仲良くレッスンを終えました。
研修を終えて
この度は私に勉強の機会を与えてくださりありがとうございました。充実した期間の中で少しでも大事だと思うことをメモにとりまとめさせて頂きました。ここに書いたこと以外でも私を刺激することは多くあり、それは草津で出会った人、自然、食べ物などです。ここでは書くことはできなくて書いても伝わらないであろうものです。私たちは人前に立つ演奏家ですから誰よりも色々なことを経験しなくてはならないと思っています。この先立ちどまってしまうこともあると思いますが、その時には草津の風景、硫黄温泉の香りが私を笑顔に変え前を向かせてくれるでしょう。いつも楽しく笑顔で人を幸せにするような人間、歌手になりたいと素直に思えたこの日々を感じつつ、今後も勉強に励み楽しんでいきたいです。