ニース夏期国際音楽アカデミー(フランス・ニース)
米満 侑来 2年 演奏・創作学科 鍵盤楽器専修(ピアノ)
研修概要
研修機関:ニース夏期国際音楽アカデミー
研修期間:2018年8月1日~8月17日
担当講師:ヨハン・シュミット教授
研修目的
私は研修目的を大きく3つに定めた。
- 世界的に活躍されているピアニストから直接指導を受けることで今の自分にはないものを少しでも多く吸収すること
- フランス語と英語の上達
- 自分の(音楽を含めて)意思をしっかり持つこと
研修内容
レッスンについて
初日は朝からレッスンの打ち合わせがあり、門下で集まった。日本人は私を含めて3人で、ベルギー人、フランス人、ブルガリア人がいる8人程のクラスだった。最初に先生から「全員毎日45分のレッスンを行ないます。」と説明を受け、私は集中コースに申し込んだため、プラス2回をどこかでレッスンしていただくことになった。
レッスン1(8月6日) ドビュッシー/映像 第1集 水の反映
まず最初に英語かフランス語かを聞かれ、英語でレッスンをお願いすると快諾してくださった。この講習会に何を持ってきたかを聞かれ、曲を伝えた後ドビュッシーをしましょうということになった。水の反映を通してレッスンが始まった。レッスン室にはピアノが2台あったが、先生は1台しか使わなかった。とても近くで私の手の使い方を確認されていたので最初はとても緊張したが、すぐに手の使い方の問題点を分かりやすく教えてくださった。主に揺れる中でも流れ過ぎないことと、手にしっかりアーチを作ることを指摘された。自分のフランス音楽へのイメージから、自由に弾き過ぎていたところがあったが、むしろ拍子に統一感を持たせて弾くことで、この曲の魅力が存分に伝わることに気づいた。私の拍子感が悪くなると「un, duex, trois, quatre …」と言ってくださり、音と音の空気感を感じることができた。(日本語で数えるのとはかなり違う感覚)
レッスン2(8月7日) リスト/超絶技巧練習曲集 雪かき
特に印象に残ったことはフレーズの持っていき方についてだった。この曲は常に美しい単旋律が流れており、私はためるなどの工夫をしていたが、フレーズの最後に向かうところで音楽を止めないでと言われた。いつもの弾き方とは真逆に前進することを意識して弾いてみると、フレーズ全体にまとまりが出て音楽が聴きやすくなった。
レッスンの最後に「週末にある学生コンサートに出たい?」と言ってくださって素直に嬉しかった。雪かきを演奏することになった。
レッスン3(8月8日) ドビュッシー/映像 第1集 ラモーを讃えて
この曲では主に拍子についての指摘を受けた。特に難しいリズムが出てくるわけではないのだが、(だからこそなのかもしれないが)先生に拍を取ってもらいながら弾くと、拍子への意識が薄いことを痛感した。拍子を正確に刻むことで、その中にある音楽が生きてきてドビュッシーらしい音楽だなと初めて感じた。
レッスン4(8月8日) ドビュッシー/映像 第1集 運動
この曲では主に伴奏の3連符の奏法について教えていただいた。音量自体はppだが、指先や手をつぶさずに弾くということだった。そうすると芯がある音になり、伴奏として和声の響きが感じられるようになった。先生は実際にゆっくり弾いて示してくださり手の使い方を理解することができた。
レッスン5(8月9日) ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第31番 第1楽章
特に印象に残ったのが第2主題についてである。私はレガートで弾いていたが、スタカートのようにという指摘を受けた。先生が弾いて示してくださると、スタカートには聞こえないが、音が生き生きとした印象になった。ただスタカートに弾くのではなく、脱力や指の動かし方なども重要だと教えていただいた。
レッスン6(8月9日) ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第31番 第2楽章
この曲では主に指使いについての指摘を受けた。この曲は指使いが難しく改めてその重要性を感じた。自分にとって最適な指使いを選べるように日ごろから意識しようと思った。
レッスン7(8月10日) ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第31番 第3楽章
先生が少し手本で弾いてくださったのだが、同じピアノで弾いてるとは思えないくらい素敵だった。ただ大切に弾くのではなく、何か深いものがあった。私もそういう演奏がしたいとは思ったが、まだ未熟すぎて難しいのかと感じてしまった。ただ、伴奏形の奏法のアドバイスを受け、メロディーがクリアに聴こえるようになったのでこの方向で勉強していこうと思う。
レッスン8(8月11日) プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ 第3番
この曲では主にタッチについての指摘を受けた。この曲はディナーミクがはっきりしていて、強い部分も弱い部分も共通して指先にパワーを集中させることを教えていただいた。そこまで意識を持ってきてこの曲を演奏するのは私にとっては難しいが、タッチを意識して初めてこの曲の魅力が出ることを知ることができた。
鍵盤ハーモニーの授業
私は集中コースを選択したため、オプションで鍵盤ハーモニーの授業を受けた。申込時には45分×2回のレッスンと書いてあったが、結局1時間以上のレッスンが5回あった。クラスは日本人が1人、フランス人またはフランス語圏の学生が5人程いた。日本人の私たちのために英語も交えて説明してくださったが、フランス語が聞き取れないことに申し訳なさを感じた。授業は実際にピアノを使って音にしていく和声で、私は全く慣れていなかったため「あとで教えてあげるからまた来て。」と言ってくださり、2回程個人レッスンもしてくださった。内容は難しかったが、他の学生は和声感があり、課題も弾きこなせていたのでびっくりした。劣等感を感じつつ、私も頑張ろうと刺激になった。
学生コンサート
8月11日土曜日の17時半から研修先のニース地方音楽院の大講堂で開催された。その前にリハーサルがあり、ピアノとホールの感触を知ることができた。演奏会にはニース市民が大勢聴きに来られていて驚いた。一人一人の演奏の前にこのコンサートを仕切っている司会の方が曲の背景や解説を話していて、残念ながら私はフランス語をほとんど聞き取れなかったが、面白い演奏会だなと思った。ステージに上がる時はいつになく緊張したが、憧れのフランスで演奏できることがただただ嬉しく、私自身曲を味わいながら演奏することができ、非常に楽しかった。演奏が終わると客席から「bravo!」と聞こえた時は精一杯演奏して本当に良かったと思った。また、本番前は出演する学生と「good luck!」と言い合ったり、本番後は「bravo!」と言い合うことがとても新鮮だった。終演後にわざわざ言いに来てくれる方もいて本当に嬉しかったし、クラシックが市民にどれだけ根付いているかを実感した。
研修を終えて
初めてのヨーロッパに一人で行くこと、世界的なピアニストにレッスンをしていただくことに不安もあったが、挑戦してよかった。演奏する人も聴く人も音楽を心から楽しんでいると感じた。また、音楽という共通項があり世界から先生方や受講生が集まっているため、コミュニケーションを取ることが楽しかった。この一週間、あっという間だったが、憧れのフランスの地でどっぷりと音楽を学べたことは何にも変え難い貴重な経験となった。またヨーロッパで学べる日が来るように心新たに頑張ろうと思う。
研修への参加を快諾してくれた家族、研修に向けて指導やアドヴァイスをしてくださった近藤先生はじめ大学の先生方、大変お世話になった学生支援課の方々に感謝致します。本当にありがとうございました。
奈良希愛先生のコメント
フランス・ニースの夏期講習で、大変充実した研修を積まれた様子がわかり、とても嬉しく思いました。ヨハン・シュミット教授は演奏活動のみならず教授活動も活発になさっていて、すでに多くの日本人学生をご指導されている経験もおありなので、わかりやすいレッスンを受けられたことと思います。コースの中に和声の授業を受けられたのも、大変刺激になったのではないでしょうか?今後は、今回課題と思われた語学の点も含め、ますますの研讚をお努めくださることと、さらなる成長を楽しみにしております。