草津夏期国際音楽アカデミー(日本・草津)
清水 ゆりか 3年 演奏・創作学科 弦管打楽器専修(ヴァイオリン)
研修概要
研修機関:草津夏期国際音楽アカデミー
研修期間:2018年8月17日~8月30日
担当講師:サシコ・ガヴリロフ教授
研修目的
- 外国人の先生ならではの表現の仕方を勉強する。
- レッスンの時の先生のドイツ語を聞き取り理解できるかを試し、自分の今の語学力を確認する。
研修内容
[ラヴェル作曲:ツィガーヌ]
〈8月18日〉
初回のレッスンではまず1曲通して演奏してから先生のレッスンが始まった。まず指摘されたことは、ジプシーならではのアクセントの位置を強調するようにということだ。強調というのはとても難しく、頭ではわかっていても逆をやってしまったり、まだまだ足りなかったりと、注意されてもすぐに直せないことでとても焦った。そして、何よりも普段教わっている先生には自由に弾くというところをテンポ通りにと指摘されたことが驚きだった。私からすると真逆のことを言われているようで脳が混乱してしまい、テンポ通りに正確なリズムで弾くことが出来なかった。このテンポ通りに弾くということだけで45分のレッスンのほとんどが終わってしまったので、貴重な1回を無駄にしてしまったようでかなりショックを受けた。
〈8月21日〉
2回目のレッスンでは、テンポはなんとか直してレッスンに臨んだので、今度は右手の使い方を細かく教えていただいた。時には左手だけ私が動かして、右手は先生が動かしてくださって感覚をつかむというように教えてくださった。指摘されたことは、主に右手は押さない(押さえつけない)で弓を使って(長さ)弾くようにということだ。あとは手首を使って弓を動かし、人差し指を内側に倒すことで圧力を加えるということも何度も指摘された。表現としては、スピーチをしているように弾くとよいと教わった。それをする上では、自分の弾きたい弾き方を明確に考えておかなければならないことを再確認した。
昔からの癖で、言われたことをすぐに直せないということをかなり指摘され心が折れかかっていたが、必死に練習をした次の日に演奏をしたら「練習すればできるのだね、良くなっていますよ。」とやっと褒められた。
[W.A.モーツァルト作曲:ヴァイオリン協奏曲第3番1楽章]
〈8月24日〉
この日も初回のレッスン同様、1曲を通して演奏をしてからレッスンが始まった。この回では主に、音の方向性についてと、どのような所で弓の長さを使うかなどを教わった。音の方向性は常に意識していないと出来ないので、最初はとても難しかった。しかし練習するうちにそれが身につき、これが表現につながるということを実感した。また、どのような所で弓の長さを使うかということも実践してみると、これも表現につながることを実感した。そう考えると、表現は自分の思っている弾き方というよりは、自分が頭を使って考えたことを表した弾き方と考えた方がいいのかもしれないと思った。
〈8月26日〉
モーツァルトの2回目(最終)のレッスンでは主に音の作り方を教わった。細かい音は左指をしっかり動かすということや、1音1音響きをもって、など、聞くと簡単そうだけれど、やってみると難しいことを教わった。左指は動かしているつもりでも先生ほどはっきりした音が出せず、指の体操をしているようで、指がとても疲れた。1音1音に響きをつけるというのは左手の問題でもあり、右手の問題でもある。左指を動かすことは練習を重ねれば慣れそうだと思ったが、右手はやはり身体にも問題があるので時間がかかりそうだと思った。
〈8月28日〉
この日は私のレッスンはなかったのだが、同じ曲を弾いている受講生のレッスンで、先生の提案でお互い弾き方を見ながら2人同時に弾いて短いレッスンをしていただいた。2人でソロの曲を弾くというのは初めてだったので少し驚いたが、2人で見ながら弾くと確かにお互いの良い弾き方を見習えて、とても勉強になった。お互いを見ながら弾くというのは、アンサンブルやオーケストラでも役に立つと実感した。
聴講から学んだこと
今回の私のクラスの受講生はレベルが高いと感じていたが、私以外も指摘されていることは私と似たようなことが多かった。先生が最初に「左手はおさえるだけで、演奏するのは右手だ」とおっしゃったように、右手の使い方を直されている受講生がほとんどだった。また、音程のことやポジション移動を上手にする為の練習の仕方なども複数の受講生が教わっていた。また、右手の使い方と似ているが、姿勢についても指摘される受講生は多かった。ある意味、ほとんどの受講生が基礎を教わったことになるが、上手な人でも難しいことなのだと実感した。これからもしっかりと基礎ができるように日々頑張っていきたい。
レッスンを終えて

約45分×4回のレッスンを終え見えてきた課題としては、指摘されてから理解するものの、なかなか言われたように弾くことができないということが大きい。それが原因で、1回のレッスンで教えていただけることが少なくなってしまったと思うので、その場での適応力をもっとつけないといけないと思った。また、研修目的のひとつに挙げた語学力の確認では、基礎の基礎は理解できたが、ほとんどはやはり通訳を聞かないと理解できなかった。しかし今回のレッスンで先生がよくおっしゃる言葉や用語がわかったので、レッスンをする上で理解できた方が良い用語が理解出来るようになったと思う。自分の予想外のことや、なかなか直せない直すべきことを教わり、まだまだ課題が山積みということがわかった。それを確認できたこともこの研修が有意義だったと言えるだろう。レッスンが有意義だったことはもちろんだが、他の受講生からもたくさん良い刺激を受けられ、とても充実した2週間だった。
このような貴重な経験をさせてくださった大学関係の皆様と先生方に感謝申し上げます。この度は本当に有難うございました。
永峰高志先生のコメント
「研修目的」
- 外国人の先生ならではの表現の仕方を勉強する
- レッスンの時の先生のドイツ語を聞き取り理解できるかを試し、自分の今の語学力を確認する。
以上の研修目的を持って清水さんは草津のアカデミーに参加されました。報告書の「研修内容」を読ませていただきましたが、内容の濃いレッスンを4回受けたようです。先生に言われたことにすぐに反応が出来ないということにもどかしさを感じているようでした。それは考え方に問題があるのか、体の動かし方に問題があるのか、自問自答しているようでした。なかなか難しい問題ですぐには出来るようにならないと思いますが、問題点を自分自身で見つけることが出来て良かったと思います。
また、他の生徒のレッスンを聴講することによって、自身と同じ問題点を抱えている生徒がいることを知り、そこを先生に指摘されているのを見ることによって自分自身の改善のポイントを見付けるヒントになったと思います。
短い期間でしたが、多くの貴重な経験を得ることが出来て良かったと思います。