アレグロヴィーヴォ室内楽サマーアカデミー(オーストリア・ホルン)
三澤 彩花 四年 演奏学科 弦管打楽器専修(フルート )
研修概要
研修機関:アレグロヴィーヴォ室内楽サマーアカデミー
研修期間:2015年8月9日~8月22日
担当講師:Prof. Barbara Gisler-Haase
研修目的
今回の研修の目的は、文化や国民性の違いに触れ、自分の音楽の表現の幅を広げるためである。
私は以前からヨーロッパへ憧れをもっていた。それは私が高校生の頃、初めて、ヨーロッパから来日した音楽家の演奏を聴いた時のことである。その時はフルートの演奏で、曲目も私が演奏をしたことのあるものだった。その時の演奏を聴いて、私は自分との違いに本当に驚いた。その演奏は、音楽の中に様々な風景や感情、イメージなどが溶け込み、それがたっぷりと自然に表現されていたのである。その時いかに自分が狭い幅の表現であったかを思い知らされた。それからは楽器を問わず、たくさんの国内外の演奏家の演奏を聴くようになったのだが、どの演奏も本当に自然で音楽的であった。それと同時に私も一度はヨーロッパの地へ行き、学びたいと考えるようになった。
実際に行ってフルートを学ぶのはもちろんのこと、各国から集まる受講生とも室内楽のマスタークラス等を通じて積極的に交流をもち、様々な考え方やたくさんの音楽観を身に着けたい。また、今回モーツァルトやシューベルトの家、古くからの伝統芸術が飾られる美術館に行くことを通じて、自分が演奏する際のイメージを膨らませる。また、礼拝への参加や、他にもたくさんの歴史的建造物を見学することで、ヨーロッパの文化に触れたい。これらの自分で体験したことを元にして、自分の課題としていた表現力の幅や奥行を深めていきたいと考えた。
研修内容
私は、今回8月9日~22日の間、ウィーン国立音楽大学の教授であるBarbara Gisler-Haase先生のレッスンを受講した。講習会前日にウェルカムパーティーにて先生や他の講習生達と自己紹介等交流し、その時個別にレッスン時間を決めた。レッスンは週3回、各1時間ずつで計6回、レッスンごとに次回のレッスンを決めるというものであった。受講生は全員で12人。オーストリア人が殆どで、中にコロンビア人・韓国人受講生がいて、日本人は私1人であった。レッスンは英語で受講し、通訳はついていなかった。また、固定の伴奏者は無かったため、講習会全体の伴奏者数人の中から自分で依頼をするシステムであった。伴奏者の中に日本人の方がいたため、私はその方に御願いをした。
Flute 1回目レッスン
『J.S.Bach/ Flute Sonate Edur BWV1035』
初回のレッスンではバッハのソナタ ホ長調の1.2楽章をみていただいた。この曲は二週目のコンサートで全楽章を演奏することとなった曲であるが、初回に選んだ理由は、バッハのフルートソナタの中で私が大好きであるこの曲をヨーロッパで学び、もし聴衆の前で演奏ができた場合、この地で自分がどのように表現できるかを試したいと考えたからである。バッハは常に和音を意識することと、楽章ごとのキャラクターもがらりと変わるため、それに合わせた音色やタンギング、アーティキュレーションを考えながら吹かなければならない。
レッスンでは、一度1楽章を通して最初に、タンギングをもっとはっきりとするように言われた。音楽は常に歌であり、言葉なのだからゆっくりな楽章であるほど語り掛けるようにはっきりとしたタンギングで吹かなければならない。日本語の場合はアクセントもなく、はっきり話さなくとも伝わるが、ドイツ語はそうはいかない。常に子音や言葉の一つ一つをしっかり言わなければ相手には伝わらない、とのことだった。私はこのことは大きく共感した。私は今までこの楽章を吹く際、言葉の関係よりも雰囲気を重視していた。この楽章は柔らかい印象のため、タンギングも音も柔らかくしよう、ということである。しかしそれは聴く側にとっては、スピーチで「せっかく良いことを言っているのに滑舌が悪く聞こえない」という状況になっていたのである。このことは積極的に伝えるということに関して、違った視点からみることのできたアドヴァイスであった。
2楽章では、1楽章とは変わり軽いため、もっと軽いタンギングをするように提案された。自分の中では楽章ごとのイメージは固まっていたため、意識はしていたつもりだったが、雰囲気として捉えすぎていて、具体的な違いが出ていなかった。雰囲気をとらえることは得意であったが、このような曲の場合は具体的に表さなければ伝わらないことを感じ、もっと自分が向き合っていくべきことであると感じた。
また、全体的には装飾についても言われた。装飾音符として書かれているもの以外でも、楽譜の中にはたくさんの装飾の役割のある音符があるのだからもっと区別をするように、とのことだった。そのあと先生が1フレーズだけ吹いて下さったのだが、すごく豊かな流れで自分とは全然違うことに驚いた。今回のレッスンは自分の演奏を多角的にみることのできる大変実り多いものだった。
Flute 2回目レッスン
『Bach/Flute sonate Edur BWV1035』
『F.Schubert/Itroduction and Variations onTrocke Blumen』
2回目のレッスンでは、バッハのソナタの続きで3楽章をみていただいた。3楽章はシシリエンヌ特有のリズム感を出すことがとても難しい。もっとダンスをするようにと言われたのだが、文化の違う私はもっと研究をして身に着けていく必要があることを感じた。
また、今回はアンブシュアについてもレッスンをして頂いた。口の大半の筋肉は力が抜けているが、唇の上、鼻の下あたりにまだ無駄な力が入っているとのことだった。いつも唇ばかりを気にしていたが、視野を広げて鏡を見ると、確かにまだ緊張している部分があった。これについては、時間はかかるが更に意識をしていきたい。
次にシューベルトのしぼめる花の主題による序奏と変奏をレッスンして頂いた。この曲は、「美しき水車小屋の娘」の中から失恋した青年の悲しみを表した「しぼめる花」の主題によるものである。この曲は、序奏は音程・リズム等の集中力、変奏ではテクニックが必要とされ、また、ピアノとの掛け合いも非常に重要である。
今回のレッスンでは主に序奏と主題をみていただいた。この部分はいかに豊かな表現をするかということが難しく、アクセントはespressivoととらえ、歌の部分はスタッカートの長さを考え悲しそうに、というアドヴァイスを頂いた。この部分は本当に難しいため、もっと1音1音を研究する必要があると感じた。
Flute 3回目レッスン
『Bach/Flute sonate Edur BWV1035』
『Schubert/Introdaction and Variations on TrockeBlumen』
来週の演奏会で演奏することになったため、今回は伴奏付きで2曲をみて頂いた。バッハについては、1楽章はとにかく音程の問題であった。常にコントロールをし、日本の主流である442Hzではなく443Hzに合わせる必要があると言われた。他の楽章ではテンポ感の問題であった。舞曲なのだから、全ての楽章のテンポは同じである。テンポはぶれずに3楽章はシチリアーノのリズムを、4楽章は3拍子の踊りをもっと出す必要があるとのことだった。バッハは常にたくさんのことを考えながら演奏をしなければならず、もっとそれを自分のものにしなければならないことを改めて感じた。
次にシューベルトのレッスンであるが、伴奏が入ったことにより、さらに厳密なテンポ感、音程が重要であった。私は速い楽章で速くしすぎてしまう癖があるため、VarⅠの後半やVarⅤは特に注意する必要がある。また、VarⅢではバッハの時と同じように常に話すことを言われ、VarⅥではタンギングだけでスタッカートをすると貧しい音になるため、おなかだけで空気を送り込む練習をするよう言われた。
Flute 4回目レッスン
『Schubert/Introdaction and Variations onTrocke Blumen』
『Beethoven/Duo WoO27 (フルートとチェロ版)』
今回もシューベルトを更にみて頂いた。今回は、序奏を吹いていた時にppについて言われた。あなたが吹いていたような消え入る直前のppも必要だが、今回そのppを使うと聞こえなくなってしまう。アクセントの時も同じだったが、音量だけではなく、あくまで表現記号としてのppやffを出すべきだと言われた。この曲の悲しさを表す際、このppが自分の中では良いと思っていたが、確かにピアノと合わせたバランスでもっと考える必要があるように感じた。
このままシューベルトのレッスンを続ける予定だったが、突然事務局に呼ばれ3時間後の室内楽の本番に出ることになり、室内楽のベートーヴェンをみて頂いた。この曲では、お腹の使い方に関して言われた。チェロとユニゾンの八分音符では特にきちんとお腹から空気を送り込まなければよく合わない、とのことだった。深く響きのあるチェロと合わせるためには確かにフルートが更に響きを乗せて丁寧に寄っていかなければならない。
Flute 5回目レッスン
『Bach/Flute sonate Edur BWV1035』
明日行われる演奏会のため、もう一度バッハを伴奏付きでみて頂いた。講習会でこの曲は何度もみて頂いたため、仕上げ程度であったが、1楽章ではまたタンギングについて言われてしまった。同じことを言われぬようにしっかりと練習していたつもりだったが、癖になってしまって、他のことを気にした瞬間に忘れてしまった。ここで言われたことが、「フランス語を勉強しなさい」ということだ。なぜなら、日本語で「ダ」というと1つの発音だけだが、フランス語では何種類もある。フランス語を学ぶことによって、たくさんの種類のタンギングが身に着き、曲によって使い分けることができる、とのことだ。英語とドイツ語しか学んだことのなかった私は、それをきいてフランス語にも興味をもった。
Flute 6回目レッスン
『Schubert/Introdaction and Variations onTrocke Blumen』
講習会最後のレッスンは、伴奏付きでシューベルトをみて頂いた。最後のレッスンでは強弱に合わせた口の中の広げ方について多く言われた。fでは「Ö」、mfやmpでは「Ü」、pでは「E(イー)」のように口の中を柔軟に広げることで、口の周りの筋肉に力を入れずにスピード感を上げることができるとのことだった。このことは、強弱の作り方を考えるにあたって、違う視点でみることができるアドヴァイスであった。また、レッスンの最後として、演奏する際、どんな時でも常に語り掛けるようにすることを忘れないようにと言われ、自分は雰囲気ばかり気にしていたため具体性が欠けていたのだと反省した。
Haase先生のレッスンは大変基礎を重視していて、とてもしっかりしていた。今回、ドイツ語には不安があり英語で受講したが、先生はドイツ語が母国語のため英語に変換する際に少し考えているように感じた。今回のレッスンで、やはり先生の母国語でのレッスンのほうが、細かなニュアンス等は良いと思う。
また、この講習会では室内楽の授業も受けることが出来、1週目はヴァイオリンのGeorg Eggner先生のもとで「Mozart/magicflute」より3曲をヴァイオリンとフルートの二重奏(楽譜はフルート二重奏)で、2週目はチェロのFlolianEggner先生のもとで「Beethoven/DuoWoO27」をチェロとフルートの二重奏(原曲はクラリネットとファゴット二重奏)で受講した。室内楽クラスは、講習会初日のお昼に顔合わせを行い、メンバーや曲、レッスン時間を決めるというシステムだった。レッスンは週3回、各45分ずつであった。
室内楽 1回目レッスン
『Mozart/magicflute』より“No.1DerVogelfänger bin ich ja”“No.2DiesBildnis ist bezaubernd schön”“No.3Dufeines Täubchen,nur herein”
指導:GeorgEggner先生
初週の室内楽は17歳のオーストリア人のヴァイオリンの女の子と受講することとなった。彼女の音はとても明るく若々しかった。
初めての室内楽レッスンでは、キャラクターやコントラストの違いをしっかり出すようにと言われた。ヴァイオリンの先生だったため、主にヴァイオリンについてのアドヴァイスだったが、今まで間近でヴァイオリンのレッスンを見たことがなかったため、ボーイング一つでアンサンブルが変わることが大変興味深かった。また、違いを出すためにはNo.1や3ははねることで軽くし、No.2のような綺麗な曲はもっとたっぷりと時間を使い、歌うように言われた。
室内楽 2回目レッスン
指導:GeorgEggner先生
今回も同じ曲をみて頂き、細かな部分をみて頂いた。全体としてはキャラクターやコントラストの違いについてであったが、No.1では音が高い頂点の前は短くすることで軽さを出し、No.2では音の一つ一つを大切に歌い、装飾にならないようにすると良いといわれた。また、No.3では掛け合いを両者一つにすることを言われた。少しのことを気にするだけでアンサンブルは大きく変わり、まとまるため本当に面白い。
室内楽 3回目レッスン
指導:GeorgEggner先生
この曲で次の日のコンサートに出ることとなった。この曲は短いため、三回目のレッスンということもあり、仕上げと通し練習であった。2楽章はもっとたっぷり歌うことと、合図の仕方をもっとはっきりとすることとのアドヴァイスを頂いた。合図を少し変えるだけでもキャラクターがかわり、自分次第でどうにでも動かせる面白さを改めて感じた。
室内楽 4回目レッスン
『Beethoven/DuoWoO27』
指導:ForianEggner先生
二週目の先生は初週の先生の御兄弟のチェロの先生であった。今回は、21歳のハンガリー人のチェロの男の子と受講することになった。
この曲は、原曲はクラリネットとファゴットの曲であるため、どのように合わせるべきか難しかった。今回は練習の段階で二人で意見を出し合い、仕上げていたため、全体的には良い、と言われた。しかし、ピタッとしたキャラクターチェンジをもっとするのがベートーヴェンだ、とのことだった。もっと頭の切り替えをすることが重要だと感じた。
2週目の室内楽の授業は突然演奏会に出ることになった関係で1回のみとなってしまったが、チェロと合わせたことのなかった私にとって音の重厚感等を間近で感じながら演奏のできる良い機会であった。
室内楽クラスでは、レッスンを受けられたことはもちろん勉強になったが、それ以上に日本人以外とアンサンブルができたことが、私にとって大変良かったと思う。特に2週目の男の子との練習の際、常に「この部分、君はどう思う?」と意見を求めてきた。私が意見を述べると同意して私の方法になることもあるが「僕はそうは思わない。なぜなら…」と考えを述べてディスカッションをすることもある。その理由がしっかりと音楽的のものだから圧倒されることもあったが、意見交換は本当に勉強になった。日本以外は自分の考えをはっきり述べる文化だとは知っていたが、いざ身をもって感じるとその方が分かり合えると感じた。
また、フルートクラスでの他の受講生の聴講や、アンサンブルを経験して一番感じたことは、どの受講生も空気作りが本当に上手で、表現が積極的であることである。日本人のような繊細な表現よりも相手に伝えようとする意志を強く感じた。それは年齢に関わらず感じ、表現力に圧倒された。
スチューデントコンサートについて
私は今回フルートソロで『Bach/SonateEdur』と室内楽曲の受講曲2曲で、計3回演奏会へ出させて頂いた。この地で実際に演奏が出来たことに大変喜びを感じた。
この講習会はたくさんのスチューデントコンサートがあるため、多くの受講生の演奏を聴く機会があった。
バッハのソナタは初週で言われていたため、準備をして出ることができた。他の演奏者とも仲良くなれ、演奏前には『トイトイトイ!(がんばれ!)』とお互い励ましあい、リラックスして演奏することが出来た。今回全楽章を演奏したのだが、観客も積極的に聴いてくれたため、まだ課題は残るものの、今の自分では良い演奏が出来た。
室内楽曲の2曲は突然だったため心の準備が出来ていなかった。しかし、アンサンブルメンバーはいつも緊張を出さず落ち着いていて私を元気づけ、そのことに本当に助けられ、見習わなければならないと感じた。2曲とも本番では落ち着いて演奏をすることが出来、二人で頑張ったことが報われた気がした。
講習会中の生活について
講習会中私は、寮に泊まっていた。部屋は全て二人部屋で、初週は日本人、2週目はオーストリア人と同室となった。実際に行くまでどんな人と同室かは分からず不安だったが、どちらのルームメイトとも仲良くなり、ご飯を食べに行き、二人でお散歩をするなど楽しく過ごすことが出来た。また、朝食は全員食堂で取るため、私は積極的に様々な人とコミュニケーションをとるようにした。もともと日本人は数人しかいない講習会だったこともあり、こんなたくさんの国籍の人々と関わる機会はこれから先ないかもしれないと思ったからである。彼らは本当に友好的で、話しかけると喜んで輪に入れてくれた。わたしのつたない言語も積極的に聞いてくれたり、わからない言葉を英語に直してくれたりと、彼らには本当に助けられた。私でもたくさんの友達ができ本当に嬉しかった。
また、講習会中は殆ど毎日演奏会があり、毎日音楽に囲まれた生活を送ることが出来た。それはクラシックだけではなく、野外でのポピュラー音楽ライブなどもあり、様々なジャンルの音楽文化について触れることが出来た。
講習会以外の現地での生活について
講習会の前後2日間ずつ、ウィーンへ滞在し、その後ザルツブルク、そして最後にドイツを回った。今回の目的でもある伝統芸術などのヨーロッパの文化に触れるためである。今回初めてのヨーロッパだったが、最初に街を歩いた時の感動は今でも忘れられない。人々も違い建物全てが美しく、これが本当に街なのかと心から驚いた。ウィーンでやはり圧倒されたのはシュテファン大聖堂の迫力である。トゲトゲとしたゴシック様式の建物であるがカメラに収まりきらないほどの大きさであった。後に、ここで日曜礼拝を受けることが出来、シュテファン大聖堂内部の美しい絵画や鐘の音やミサ曲を聴き、実際にお祈りも見学することが出来、この建物だけでもたくさんのウィーンの文化に触れることが出来た。また、シェーンブルン宮殿や美術史博物館など美しい建築や絵画を間近で観ることが出来た。想像とはスケールの違う大きさに本当に感動した。
また、ザルツブルクにも日帰りで回った。2つのモーツァルトの家でモーツァルトの生涯を様々な展示を見て知ることが出来た。また、歴史だけでなく、等身大モーツァルトのパネルの隣に立って写真が撮れるなど、観光客向けにも楽しい施設だった。その他にも展望台に上ってザルツブルクの美しい街を眺めることもできた。ウィーンは屋根が赤いことが印象的だったが、こちらは緑や青い屋根が多く、同じオーストリアでも違いを感じた。
最後であるドイツはミュンヘン・ベルリン・ライプツィヒ・ドレスデンを周遊した。同じヨーロッパでもどのように違うのか見てみたく、今回1日ずつ立ち寄った。ミュンヘンでは教会やレジデンツ、ニンフェンブルク城を回った。歴史を感じる建物としてはウィーンと同じだが、ミュンヘンのほうが厳かな印象を受けた。ベルリンは、駅を見たときは本当に近代的な街で驚いたが、街を歩くと壊れたまま残されたカイザーヴィルヘルム記念教会や、ベルリンの壁、チェックポイントチャーリーなど、暗い歴史を感じることが出来た。ライプツィヒでは、バッハのお墓のある聖トーマス教会や、バッハ・メンデルスゾーンの博物館に足を運んだ。一般的にはベルリン等に比べて有名ではないが、ほかにもゲーテのゆかりの地であるし、芸術を学ぶ上で重要な街だと感じた。最後に行ったドレスデンは本当にスケールの大きい芸術建築が所狭しと並んだ本当に美しい街であった。この綺麗な街並みをもっと見たいと思いエルベ川クルージングに参加し川からも美しい景色を見た。ヴェルヴェデーレ宮殿では、ウィーンの美術史博物館よりもはっきりとした絵画が多く飾ってあり、厳かで大変興味深く感じた。
オーストリアとドイツを回ってみて、同じドイツ語圏でも雰囲気は大きく違った。オーストリアは明るく派手で、ドイツははっきりと厳かだという印象である。しかし、どちらの国でも町中でアコースティック路上ライブをしていたり、教会に入ったら突然コンサートがはじまり、沢山の人々が聴き入っていたりなど、常に音楽が心の中にあるように感じた。これは日本では無い文化であったため驚いた。日本でもこんな文化が広まってほしいと感じ、この気持ちを演奏でも生かしたいと感じた。
研修を終えて
今回の研修は、初めてヨーロッパに一人で行き、言葉の壁や文化の違いなど戸惑うことも沢山あったが、その分これから先経験できないようなことを沢山経験した。レッスンだけでなく、この地に行かなければ感じることのできない風景、文化はこの先の人生でも大きな糧となるだろう。この経験を大切にし、自分の演奏にも活かしたい。
今回、このような素晴らしい機会を下さった大学、応援して下さった学生支援課の皆さん、先生方、友人、家族に感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
大友太郎先生のコメント
我々にとってヨーロッパはクラシック音楽発祥の地としての多くの魅力をもっています。高校生の時からヨーロッパへの興味を持っていらしたあなたにとって、今回の海外研修は大きな刺激になったことでしょう。私達日本人は日本語会話の抑揚、リズム、間等を日々の生活のなかで身に付けています。しかし私達が演奏しているシューベルトやバッハの曲はドイツ語圏で産み出された音楽ですから生まれたときから日本で暮らし日本語を話している私達の感覚とは大きく異なり、それを理解するのには長い時間がかかります。どうやら一般的な日本人の感覚は元々抑揚の少ない平らな会話と演歌調と言われるいわゆる後押しが潜在しているようで、そのせいでメリハリのない演奏になってしまいがちです。このクセの克服が大きな課題でしょう。生活環境が人の個性の多くの部分をつくるといわれていますが、短期間でも大きな建物の空間で暮らし、レッスンを受け、こうして海外の方たちと語り合い共に音楽をつくる経験は、普段から積極的でイキイキとしたあなたの演奏にきっと大きなプラス影響を与えることでしょう。言葉の壁があるにも関わらず、あなたの感がよいのか、細かな奏法についてのアドヴァイスを理解できたことは大きな収穫でしたね。今回は英語でレッスンをしていただいたそうですが、次回またオーストリアを訪れるときにはドイツ語で意思の疎通ができれば、更に多くのことが吸収できることでしょう。これからも前向きに良い音楽家を目指して進んで下さい。