ウィーン夏期国際音楽ゼミナール(オーストリア・ウィーン)
山口 架歩 4年 演奏・創作学科 弦管打楽器専修(フルート)
研修概要
研修機関 : ウィーン夏期国際音楽ゼミナール
研修期間 : 2025年7月30日~8月16日
担当講師 : バーバラ・ギスラー=ハーゼ先生
研修目的
普段の生活においても演奏においても、一つ一つの事柄に自分の意見を持って取り組むことができるようになりたかったからです。特にフルートの演奏については、聴いてくださった方に曲の良さが伝わり、「もう一度聴きたい」と感じていただけるような演奏がしたいと思っています。講習会を通して、より心に届く表現や音色を目指したいという目標をもっていました。また、音楽家たちが実際に過ごした住まいや通った教会を訪れることで、彼らは歴史上の人物ではなく、実在した身近な存在であるということを体感したいと考えていました。そして、普段生活している環境と違う場所に出かけ、年齢も国籍も異なる方々とお話をすることで自分自身の視野を広げたいという目標をもって研修に臨みました。演奏面はもちろん、海外研修の経験を通して人間として成長したいという思いを持っていました。
研修内容
ウィーン国立音楽大学で行われた講習会に参加してまいりました。4度のレッスンを受講し、多くの学びを得ることができました。ホールの一番後ろに座っていらっしゃる方まで自分の音楽を届けるために、これからどのような勉強をしていけばよいのか、発見と課題をいただいた講習会の期間でした。
まず、基本となる身体の使い方について教えていただきました。特に印象的だったのは、「メッゾピアノを吹くとき、身体の内側はフォルテッシモで演奏する。」という先生のお言葉でした。音量が小さくなると同時に体の内側の圧力が抜けることがないよう、支えを保って演奏しようと思いました。そうすることで、遠くまで届くピアノを作ることができるのだと思いました。そして、「ビブラートはお腹でなく、肋骨からかける」というお言葉も、衝撃を受けました。特に細かいビブラートをかけるとき、肋骨は筋肉によって繋がっており、お腹よりも自由に動くことができるのだと知りました。様々な種類のビブラートを使い分けられるよう、肋骨を意識しつつ練習したいと思いました。
また、心の整え方についてもアドバイスをいただきました。レッスンの後、本番が近づいてくると、曲の仕上がりや人の目が気になり不安になってしまうという悩みを先生にお伝えしました。先生は、「著名な音楽家でも、あなたと同じ悩みを持っている人は沢山いるよ。私たちにできることは、緊張しても大丈夫なように最後までこだわって練習することだね。」と教えてくださいました。やはり向き合うべきなのは自分自身で、「どんな演奏をしたいか」ということに集中していけばよいのだと感じました。
講習会の中では、コンクールも行われました。(Prof.Dichler-Competition)各楽器の代表者が出場できるコンクールなのですが、私は、フルートクラスの代表として選んでいただき、参加することができました。
課題曲として、W.A.モーツァルト/フルート協奏曲第1番ト長調K .313 第一楽章、自由曲として、C.シャミナード/コンチェルティーノ2 曲を演奏しました。緊張もありましたが、レッスンで教えていただいたことを活かしつつ思い切って演奏することができました。演奏後は温かい拍手と「ブラボー」のお声をいただくことができました。異なる国の方々が自分の演奏を温かく迎えてくださったことが嬉しく、胸がいっぱいでした。結果として、第一位をいただきました。
また、ハイリゲン教会で行われたコンサートにも参加させていただきました。G.P.テレマン作曲 12のファンタジー TWV 40:3 を演奏いたしました。石造りの教会の響きは素晴らしく、音楽の流れに身を委ねて楽しみながら演奏することができました。コンサートでは他の方の演奏も聴くことができました。お一人お一人、長所を生かした演奏ばかりで興味深かったです。
講習会では、他の国から来た参加者とコミュニケーションを取ることができたのも、嬉しい体験でした。同じ音楽の道を志すものとして、お互いの演奏と文化を尊重し合いながら会話するのは、とても心地よかったです。母国語が異なる分、こちらは工夫して必死に伝えようとしますし、相手も必死に受け取ろうとしてくれます。このように対等で、思いやりのある対話を経験することができました。楽器も、年齢も、国も異なる方々からいただいた温かい誉め言葉は、ずっと大切にしていきたいと思いました。
ウィーンの街の空気や、石造りの建物の響きを体感できたのもとても良い経験でした。講習会期間中に訪れたシュテファン大聖堂の響きは特に素晴らしく、オルガンの音色にまるで体全体が包まれているようでした。演奏会はいたるところで頻繁に行われており、音楽を楽しむことはウィーンの人々にとって当たり前のことなのだと感じました。またウィーンで音楽を学びたいと強く思いました。
研修を終えて
今回の研修を通して、私は、嘘のない自分の言葉を音楽に込めて、届けたいと思うようになりました。ウィーン滞在中、出身国も年齢も異なる様々な方の演奏を聴くことができました。私が感じたのは、「演奏者自身が強く思って、実感して演奏すること」がどれだけ聴き手に伝わるかということです。今私は、ウィーン国立音楽大学の大学院に進みたい、という目標を持っています。演奏すること・音楽の喜びを、私に教えてくれたウィーンという場所に、必ずまた行きたいと思います。
先生のコメント
準備中
