国立音楽大学

セントラム ジャズ ポート・タウンゼンド(アメリカ・ワシントン)

大参 泰平 4年 演奏・創作学科 ジャズ専修(ベース)

研修概要

研修機関 : セントラム ジャズ ポート・タウンゼンド
研修期間 : 2025年7月18日~7月31日
担当講師 : カミラ・メサ氏

研修目的

本場のジャズを体感し、アメリカでしか得ることのできない刺激や経験を通して、自分の音楽的センスをより成長させることである。

研修内容

今回のキャンプで私はコンボのクラス、楽器別のマスタークラス、スペシャルトピック クラス、ジャムセッション、先生方のコンサートなど多くのことを体験することができた。特に学びの多かったコンボのクラスとマスタークラスについて書こうと思う。

まずコンボについてだが、コンボのクラスはクラス別で分かれており、私はカミラ・メ サ氏のクラスを受講することになった。コンボの編成は、アルトサックス、トロンボーン、ギター、ベース、ドラムであった。私たちはまず最初に「サンドゥ」というブルースの曲を演奏した。その際カミラ氏からは、テーマのフレーズの歌い方、口に出して歌った際のニュアンス、アクセントの位置や、レガート、ポルタメントの使い方など細かく丁寧に指導を受けた。フレージングの練習は今までも行ったことはあるが、カミラ氏のように1つ1つ細かく分解し、完璧に歌えるようになるまで行う作業は大変練習になった。また他にも最終日に行われる野外コンサートで4曲程を演奏するため、それに向けて候補となる曲を出しあい、10曲程練習をした。その際、それぞれの曲の流れを物語のように考えて演奏するように指導を受けた。例えば、ジャズでは管楽器からソロを始めることが多いが、それを逆にしてベースから始めるなどだ。ベースは低音域を担当する楽器であるため、管楽器やピアノ等と比べるとテンションが低い。そのためベースからソロをとり、管楽器に受け渡すことで徐々にテンションを高めることができるということだ。その他にもドラムのフレーズや、ギターのコンピングについても教えてもらい、お互いによく聞き合い、曲の物語を作る練習をした。又、1曲にフォーカスするだけでなく、ステージ全体を通しての物語を考えることも教わった。選曲だけでなく、曲順、テーマを演奏する楽器や、盛り上げて弾く曲、落ち着いた雰囲気で弾く曲などを考えることだ。

次にベースのマスタークラスでは、ベン・アリソン氏、マイケル・グリン氏、ジョン・ハマー氏、バスター・ウィリアムス氏から指導を受けることができた。まずいい音の出し方についてご指導いただくことができた。どの指を使って弾くか、指の先端の面積の狭い部分で弦を弾いたり、指の腹の面積の多い部分で弾いたりなど、どの部分で弦を弾くかや、左手の抑え方、また、弦を弾く方向は横振動か縦振動かを曲のシーンに合わせて考えて実践することなどを教わることができた。私は伴奏する際は太い低音が出しやすい指の腹の部分で弦を弾くことが多いが、あえて先端で弾くことでニュアンスを変えられたり、縦振動で弦をバチンと弾くことでインパクトを与えられたりすることができ、演奏の幅が広がると感じた。ベースラインのことでは僕が装飾音符を多用したベースラインを演奏したため、シンプルなベースラインの重要性についてご指導いただいた。さらにメトロノームを使った練習方法もいくつかご指導いただいた。印象的だったのは2拍、4拍のスウィングの裏拍でメトロノームを鳴らす練習だ。この練習は今まで行ったこともあり、比較的基本の練習だが、寸分の狂いなく正確に弾くのはとても大変なことだと痛感した。同時に今までの自分のグルーヴの甘さを思い知ることができた。先生方の正確な音程、イマジネーション溢れるソロ・ベースライン、どのようなフレーズを弾いても崩れないリズム感、音色、そしてグルーヴを感じることができ、非常に勉強になった。

研修を終えて

Centrum Jazz Port Townsend 会場にて
Centrum Jazz Port Townsend 会場にて

今回の研修を通して、自身の演奏における良い点と課題を確認する事ができた。学年も4 年生になり、難しい曲を演奏できるようになり技術的にも成長したがその反面、ベーシストにとって1番大事な役割である「深みのある良い音でグルーヴさせる」という意識が自分の想像以上に足りなかったと感じた。日本にいるだけでは気づかないことも、アメリカで他の奏者の演奏を聴き、感じることで多くの気づきと発見を得る事ができた。また、多くの方と交友を持つ事ができ、彼らの考え方やアメリカの文化について感じる事ができた。特にアメリカの若い方々は周りのことなどあまり気にせず、彼らのタイミングで言いたいことをはっきり述べており、その積極的ではっきりとした姿勢が演奏にも現れているような気がした。演奏だけでなく彼らのそういった姿勢も見習う必要があると感じた。研修で得た多くの学びを今後の音楽活動に活かしていきたい。

池田篤先生のコメント

自分の演奏の問題点を感じ始めているこの時期にこのキャンプに参加し、同世代のアメリカ人の若者達と共にジャズを学べたことはとても有意義な体験だったと思います。
自分の長所と短所、または日本人としての利点とデメリットを自分なりに理解し、自己の演奏の向上に繋げていってください。それは年齢と共に変化するかもしれませんが、それについて感じ思考することは、元々異国の文化であるジャズを演奏し続けていく上でとても大切なことです。
ベーシストにとって一番大切なことは、ビートそしてハーモニーの流れをシンプルにしっかりと提示出来る能力だと思います。各先生の指示はとても的を得ていると感じました。
今回繋がった縁を大切にして、これからの音楽人生に生かしていってください。

PAGE TOP

お問い合わせ・資料請求
学校案内、入学要項などをご請求いただけます
資料請求
その他、お問い合わせはこちらから