選択科目(コース制)

卒業後の進路を見据えたプログラム
国立音楽大学では1・2年次の基礎課程に対して3・4年次を専門課程と位置付けています。卒業後の進路を見据え、専門性をさらに高めたり、専門以外のスキルを磨いたりするためのプログラム(科目群)をまとめたものを「コース」と呼んでいます。意欲と能力に応じて学科・専修(専攻)によらず、どのコースにも挑戦することができます。基礎課程で培った専門の基礎、音楽能力の基礎をもとに、音楽のさまざまな領域をより専門的に学ぶことで、キャリアデザインに必要な能力、知識を身につけます。
3種のプログラムで、自分にあったキャリアデザインを設計する
- ダブルメジャーを目指すコース
所属専修(専攻)にかかわらず、専門以外のコースを履修して、専門の知識や技能を補い、将来の職業選択の幅を広げることができます。 - 専門を探究・強化するコース
所属専修(専攻)に関連するコースを履修して、より専門的に学び、知識や技能をさらに高め、進路実現のために役立てることができます。 - より専門性の高い選抜コース
ソリスト・コースを中心とした、高度な演奏家を養成するコースです。知識や技能はもちろん、レパートリーを増やし、表現力を高めるためのプログラムがより充実しています。
コース制の理解のために
本学のコースは、みなさんが3・4年生になった時、自分の専門をさらに深めたり、「もう一つの専門」を学んで将来の可能性を拡げたりできるように設置されています。3つのタイプがあります。
「ダブルメジャーを目指すコース」では、2年間で学んだ音大生共通の基礎科目を土台に、入学時の専門とは違う領域を「もう一つの専門(major)」として学びます。たとえばピアノで入学した学生が「声楽コース」を選択することで、ピアノと声楽の両方を自分の専門として卒業できます。
「専門を探究・強化するコース」では、専門領域の幅を拡げます。たとえばピアノの学生が「ピアノ指導コース」を履修すると、実際に子どもたちを教える体験ができます。
「より専門性の高い選抜コース」では、選抜試験で選ばれた人たちが一段と高度な演奏体験を積むことができます。各「ソリスト・コース」や「オーケストラプレイヤー・コース」などがあります。
コース一覧
1:ダブルメジャーを目指すコース
2:自分の専門を探究・強化するコース
3:より専門性の高い選抜コース
■:各専門課程に含まれているコース
コース名 | コースの種別 | コースの内容 | |||
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声楽コース | 1 | ■ | 歌曲、オペラ、オラトリオ、重唱の基本的な歌唱方法を学び、声楽の専門的知識と技術を身につけます。 ※声楽専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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オペラ・ソリスト・コース | 3 | オペラ歌手となるために必要な歌唱能力や舞台表現を学びます。 | |||
歌曲ソリスト・コース | 3 | 歌曲やオラトリオを歌うために必要な歌唱能力、詩の解釈、ことばへの豊かな感性を磨きます。 | |||
ミュージカル・コース | 1 | ミュージカルの舞台に立つために必要な歌唱能力や舞台表現、ダンスを含む身体表現を身につけます。 | |||
ピアノ・コース | 1 | ■ | コンチェルトやアンサンブルを学び音楽の幅を広げるとともに、作品分析などを通じて、より豊かな演奏表現を身につけます。 ※鍵盤楽器専修(ピアノ)は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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ピアノ指導コース | 1 | 2 | 教材研究や子どもへの指導実習を通して、ピアノ指導者になるための知識や技術を実践的にかつ体系的に学びます。 | ||
鍵盤楽器ソリスト・コース | 3 | 鍵盤楽器のソリストにふさわしいレパートリーの拡大と豊かな音楽表現を身につけます。 | |||
アンサンブル・ピアノ・コース | 3 | アンサンブル奏者としての基礎を学び、豊かな表現力を身につけます。 | |||
オルガン・コース | 1 | ■ | オルガンの構造と特性を理解し、異なる時代と国のオルガン音楽様式、演奏法、作品に応じた音色の選び方に至るまでの幅広い知識を修得します。 ※鍵盤楽器専修(オルガン)は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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弦管打楽器ソリスト・コース | 3 | さまざまなジャンルの演奏技術、解釈を学び、それぞれの楽器のソリストに必要なレパートリーと高い演奏能力を身につけます。 | |||
弦楽器オーケストラプレイヤー・コース | 3 | 個人レッスンによりオーケストラ・スタディを学び、オーケストラのオーディションに合格する演奏能力を身につけます。 | |||
指揮者/コレペティートル・コース | 1 | 指揮者コースは、指揮法、総譜奏法などを学び、オーケストラや合唱、吹奏楽で活躍するための能力を身につけます。コレペティートル・コースは多くのオペラのレパートリーを知り、伴奏などの分野で活躍できる能力を身につけます。 | |||
現代音楽創作コース | 1 | 2 | 学内外での作品発表を積極的に実践し、独創的、先端的な作品創作を目指します。 | ||
作曲理論コース | 1 | 2 | 古典から現代までの多様な作曲様式に基づく作品を創作する能力を高めます。また指導法を学び、音楽理論の専門性を持つ優れた指導者を目指すことも可能です。 | ||
実用音楽コース | 1 | 2 | 映画音楽・ミュージカル等の作編曲に必要な、より実用的な技法・知識を学びます。 | ||
作曲コース | 1 | ■ | 作曲のために必要な技法や知識を学び、想像力豊かな作品を書くための実践的能力を高めます。 ※作曲専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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コンピュータ音楽実践コース | 1 | 高度なコンピュータ音楽やメディアアート作品の創作、研究、アプリケーション開発に加え、論文執筆のための能力を身につけます。 ※コンピュータ音楽専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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コミュニティ音楽コース | 1 | 2 | 学校や地域を音楽の力で活性化し、さまざまな人を対象とした音楽活動を企画・推進することのできる「コミュニティ音楽家」を目指します。 | ||
吹奏楽指導者コース | 1 | 2 | 学校教育やアマチュア吹奏楽団などの現場で活躍できる吹奏楽指導者になるための知識・力量を身につけます。 | ||
学校教育コース | 1 | 2 | 質の高い音楽科教員になるために、音楽科教育の研究を深め、より実践的な指導力を身につけます。 | ||
ダルクローズ・リトミック専門コース | 1 | 2 | ダルクローズの創造的な音楽教育を専門的に学び、ダルクローズ・リトミックを演奏、教育に応用できる知識・力量を身につけます。 | ||
音楽療法士コース | 1 | 2 | 臨床実習を通して実践的な能力を高め、音楽療法士としての基本的な知識・技術・心構え・倫理等を身につけます。 | ||
音楽学コース | 1 | ■ | 卒業論文の作成などを通して、音楽学の研究に必要な知識・力量を蓄えます。 ※音楽情報専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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音楽情報・社会コース | 1 | ■ | ミュージック・ライター、音楽出版などで活躍できる幅広い専門知識と実践能力を身につけます。 ※音楽情報専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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マネージメント・コース | 1 | ■ | 音楽現場の経験を積むことを通して、音楽ホールの企画・運営や演奏団体でのマネージメントのできる知識・力量を身につけます。 ※音楽情報専修は、本コース科目が専門課程に含まれています。 |
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西洋古楽コース | 1 | 理論と歴史を学びながら独奏とアンサンブル能力を高め、西洋古楽器の演奏における専門家を目指します。 | |||
日本伝統音楽コース | 1 | 日本の伝統的音楽文化を理解し、演奏能力を高め、日本の伝統楽器の演奏における専門家を目指します。 | |||
ピアノ調律コース | 1 | 鍵盤楽器の調律、整調、修理などの基礎技術を身につけます。 | |||
幼児音楽指導者コース | 1 | 2 | 幼児・児童の初歩的および基本的な音楽指導のための力量を身につけます。 |
コース履修モデル

ダブルメジャーを目指すコース
コンピュータ音楽専修+ピアノ調律コース
菊地 萌花 さん
KIKUCHI Moeka
演奏・創作学科 コンピュータ音楽専修 4年
宮城県・宮城県宮城野高等学校出身
ピアノの仕組みを理解して作品へと応用する
私は以前から楽器の仕組みや構造に興味があり、中でもピアノは小さい頃から身近な存在でした。ピアノ調律コースでは、整調の授業でピアノ内部の細かい機能を知り、調律の授業では弦の音の合わせ方を学びます。ピアノの構造で、どこのどの部品がどう作用するのかという相互関係を理解していくのは難しく、やはり頭だけでなく体で覚えないといけません。また、音は見えないので、弦を調律するにあたってなかなか取っ掛かりが掴めず苦労しました。コンピュータ音楽専修では、生の楽器とコンピュータによる作品を制作しています。楽器の仕組みや構造を知ることで、加工や録音のコツがわかり、演奏技法の指示がしやすくなるなど、作品づくりの応用力が上がったと思います。コンピュータ音楽と調律、ジャンルは違っても私の中では大きくつながっています。

専門を探究・強化するコース
音楽教育専修+学校教育コース
平野 真季 さん
HIRANO Maki
音楽文化教育学科 音楽文化教育専攻 音楽教育専修 4年
東京都・光塩女子学院高等科出身
生徒の視点で授業づくりができる力をつける
学校教育コースでは実際に指導案を書いて模擬授業をするという学修をしています。「音楽が苦手な生徒でも楽しく参加できる授業」「受け身にならない鑑賞の授業」など各自テーマを掲げて授業を考えていきます。教員採用試験の演習、学術論文の読み方や書き方の授業もあります。このコースを履修したことで、生徒の視点に立って授業づくりをする力や人前で緊張せずに話す力がついたと思います。さまざまな角度から物事を見て、工夫することも得意になりました。授業は少人数であるため意見を交換しやすく、違う学科の学生と交流することができるのもよい点です。教育現場の課題や学校の教師の仕事について学ぶ授業を受けたことで、生徒に寄り添い生徒の成長を間近で見ることのできる教師という職業に改めて憧れを抱くようになりました。

より専門性の高い選抜コース
弦管打楽器専修+弦管打楽器ソリスト・コース
跡部 愛音 さん
ATOBE Aine
演奏・創作学科 弦管打楽器専修(ヴァイオリン) 4年
長野県・長野県小諸高等学校出身
今までと違う視点で曲と向き合えるようになった
1年生の時からコースに入りたいと考えていました。コースの履修によってレッスン時間が通常の2倍になったため、基礎練習の時間が増え、演奏のくせが直しやすくなりました。課題曲数も増えたので、これまで1曲を集中して仕上げていたところを複数曲同時進行しなければならない点は大変ですが、そのぶんレパートリーは増えました。また、コースの必修であるオーケストラや管弦楽法の授業では人と息を合わせて演奏することや、スコアに書いてあることを読み取ることの大切さを学びました。自分の演奏の際も、伴奏の音について考えるなど、今までと少し違う視点で曲と向き合えるようになったと思います。残された学生の時間を大切に、さらに努力を重ねていきたいです。