国立音楽大学

山下真由美(はぁもにぃ保育園 園長)

くにたちでの学びと仲間との出会いが
理想の保育園を作る原動力に
/2021年10月

プロフィール

山下真由美 さん
Yamashita Mayumi
はぁもにぃ保育園 園長

山下真由美

2002年、国立音楽大学音楽学部音楽教育学科幼児教育専攻(現・音楽文化教育学科幼児音楽教育専攻)卒業。研修コンサルタント会社を経て2011年、板橋区に認可保育園「はぁもにぃ保育園」を開園。理事長を務めるNPO法人シンフォニアでは、保育園のほか、学童保育「舟渡小あいキッズ」を展開。0歳から12歳の子どもを預かっている。現在は保育士新任研修やチームビルディングなど研修講師としても活躍中。

インタビュー

我が子を預けたくなるような、理想の保育園を作りたい──。そんな思いから、2011年春、東京・板橋区に「はぁもにぃ保育園」を創設した山下真由美さん。いま約60名の子どもたちを預かる園には、その名の通り、多彩で豊かなハーモニーがあふれています。紆余曲折を経てたどり着いた幼児教育の道。山下さんを突き動かしたのは、くにたちでの学び、そして仲間の存在でした。

入試問題からも感じた、くにたちの魅力

山下真由美

──幼い頃は、どんなふうに音楽に親しんでいましたか

 父が音楽関係の仕事をしていたので、自宅にはクラシックをはじめ色々な音楽が流れていましたし、弟や妹とはいつも一緒に歌って遊んでいました。物心ついた頃には、スーパー銭湯の広間で知らない人の前でも気持ちよく歌っていました(笑)。
 ピアノを習い始めたのは幼稚園生の頃。ただ、私はバイエルやメトードローズなどの教則本が嫌いで、もっと自由に弾きたいと主張する変わった子で……。そんな思いを理解してくださる先生を探して出会ったのが、くにたちの幼児教育専攻出身の朝日敬子先生でした。「まゆみちゃんはどんな音楽が好きなの?」と訊ねてくれた先生に、幼稚園児の私が指定したのは、なんと「小犬のワルツ」。先生も内心驚かれたと思いますが、それこそ1小節に1カ月かけるようなペースでレッスンを進め、思いをかなえてくれました。ほかにも、私の好きな歌の時間を長めにしたり、リトミックを取り入れたり。生徒に寄り添い可能性を広げてくださる先生と出会えたことは、本当に幸運でした。朝日先生にはその後、高校3年までお世話になりました。

──くにたちへの進学を決めた理由は何ですか

 小・中学生になっても歌は変わらず大好きで、ピアノと並行して聖歌隊や合唱部での活動を続けていました。音大への進学を決めたのは、周囲の勧めと、「これからも歌い続けたい」というシンプルな思いからでした。
 くにたちを選んだ決め手はやはり、お世話になっている朝日先生の母校だったこと。そしてもう一つ、入試で課される「新曲視唱」の楽曲が、くにたちは他大と比べて群を抜いてメロディックで素敵だったこと。試験問題ながら「歌いたい」という思いがあふれてくるような音楽とでもいいましょうか。入試は大学からのメッセージのようなものでもあると思うので、受験対策中にも「くにたちに行きたい」という思いがどんどん強くなりました。結果、音楽教育学科幼児教育専攻に合格することができました。

──くにたちでの印象深い授業について教えてください

 思い出深い授業はたくさんあるのですが、宇佐美明子先生の「造形」は特に楽しかったですね。これは、子どもの感性や感覚を育むための色々な表現技法を習得するクラス。クレヨンの上に絵の具を塗ると水分がはじかれる「バチック」、鮮やかなクレヨンで塗った上に黒色を塗り重ね爪楊枝などで削って下の色を浮かび上がらせる「スクラッチ」といった技法を学んだり、ウレタンでパペットを作ったり、自然の素材で楽器を手作りしたり。表現することの純粋な楽しさを思い起こさせてくれる授業でした。
 それから、下山田裕彦先生の「保育原理」の授業では、保育は「子どもを丸ごと肯定すること」という教えが強烈に印象に残っています。いまあらためて実感するのは、先生のおっしゃったことは、まさに保育者が目指すべきあり方そのものだということ。子どもたちのさまざまな行動なども、「丸ごと肯定」して向き合うと見方が変わってきます。下山田先生の教えはいま、私たちの保育園の揺るぎない土台として息づいています。

研修コンサルタント会社を経て、保育園創設へ

山下真由美
「はぁもにぃ保育園」で共に働く、くにたち出身のスタッフたちと

──卒業後は幼児教育に携わるかと思いきや、意外な進路を選択されましたね

 幼児教育専攻では4年の初めに幼稚園での教育実習があるのですが、これが私にとって大きな挫折でした。意気揚々と参加したのに、リトミックの実習計画が子どもたちの発達に合わずダメ出しされて落ち込み、実際の現場で責任の重さもあらためて痛感し……。「自分は幼稚園の先生に向いていないのかもしれない」とすっかり自信をなくしてしまいました。
 ちょうどその頃、当時お付き合いしていた今の夫が、会社から派遣されて、ある新入社員研修に参加し、イキイキした笑顔で戻ってきたんです。就職先で悩んでいた私も後日参加してみたところ、「これはすごい」ととても感動しました。たった3日間で、自分の存在価値に気づいたり、将来やりたいことが見つかったりするなんて……。自分もこんな前向きな変化を提供する側になろうと決心しました。
 結局、その研修を運営していた会社に就職し、研修コンサルタントとして8年間働きました。経営者に話を聞いて組織の課題を洗い出したり、研修運営したりと、充実した日々でした。振り返ってみると、学生時代から、「芸術祭」の実行委員長や授業成果発表会「幼教Day」の委員長を務めていましたから、組織をマネジメントしプロジェクトを遂行するというのが性に合っていたんだと思います。

──保育園立ち上げのきっかけを教えてください

 研修コンサルタントとして働いていた頃に、長女を出産しました。ところが、我が子を預けたいと思えるような保育園を近隣で見つけることができませんでした。それで次第に「理想の保育園を自分が作ろう」という思いが湧き上がってきたんです。
 くにたちの仲間とは、卒業後もコンサートを開くなどよく集まっていたので、保育園のことを相談してみると「面白いね」「一緒にやろう」と、近くに引っ越してくれた仲間もいました。それからは毎週金曜の夜に、仕事を終えた友人たちが私の自宅に集まるようになり、手弁当の“保育園プロジェクト”が始まりました。私は会社を辞め、評判のいい保育園を見学させてもらったり、板橋区や東京都との折衝や銀行との打ち合わせをしたりと走り回る日々。並行して保育士資格も取得しました。そして構想から約1年半、異例のスピードで板橋区認可保育園「はぁもにぃ保育園」の開園にこぎつけました。

──くにたちの仲間の存在は心強かったでしょうね

 私一人では絶対に実現できなかったと思います。
 くにたち同窓生の夫や友人の献身的な協力があったからこそ、思いを形にすることができました。ちなみに園歌は、くにたちの同級生の作詞・作曲家、YUMIKOさんが作ってくださったもの。歌うと元気になる素敵な曲で、園でも毎日のように歌っています。

子どもたちの“表現の芽”を大切に

──園での音楽教育について教えてください

 「はぁもにぃ保育園」は音楽教育を特徴として打ち出しているので、入園希望の方からは「鼓笛隊をやるんですか」「絶対音感が身につきますか」「音大の附属校に合格できますか」などと聞かれることがあります。ただ、私たちが重視しているのはそうした技術的な部分ではありません。
 何より大切にしているのは、「きれいだな」「気持ちいいな」「これをやってみたい」といった、子どもたちの感性や興味関心をそのまま受け止めること、いわば “表現の芽”を感じ取り養っていくことです。一人ひとりの中に息づいている音楽やリズムを引き出すこともその一つ。自分の心地いいと思う声量やテンポでいいし、「お歌の時間」じゃない時に歌ってもいい。感性のままに自分を表現できることが、音楽教育の最初の一歩だと思っています。

──今後、かなえたい夢はありますか

 生まれ育った、ここ板橋区浮間舟渡地域で、コミュニティ作りに貢献できたらと思っています。私たちの法人では学童保育も行っているので、地域の小学生が放課後、顔見知りの保育園の先生からピアノや歌を習ったり、おやつを食べたりできるような居場所を作れたらと思います。お年寄りや地域の方が気軽に参加できる音楽イベントも企画してみたいですね。

──くにたちの学生や、くにたちを目指す人にメッセージを

 皆さんが持って生まれた個性は、音楽そのもので花開くこともあれば、音楽と何かを“掛け算”することによって輝きを放つこともあると思います。私の場合は、「幼児音楽教育の知見」と「組織をマネジメントする力」を掛け合わせることで自分らしい道を見つけることができました。そんな自分の個性に気づき磨くことができたのは、くにたちの素晴らしい授業や行事、そして教職員の方々が常にあたたかく見守ってくれたおかげです。皆さんにも、くにたちでの貴重な4年間を存分に愉しんでほしい。それが、将来の道を切り開くことにもつながっていくと思います。

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