国立音楽大学

塚越慎子 (マリンバ奏者)

挑戦と目標達成への支えは、
国立での出会いと経験そして努力の積み重ね

/2013年4月

プロフィール

塚越慎子(マリンバ奏者)

塚越 慎子 さん(つかごし のりこ)
TSUKAGOSHI Noriko
マリンバ奏者

国立音楽大学附属音楽高等学校を経て、国立音楽大学音楽学部に入学。2006年に首席で卒業すると同時に「武岡賞」受賞。最優秀生として皇居内桃華楽堂にて御前演奏を行う。高校入学前の1998年に第8回日本クラシック音楽コンクール打楽器部門第1位をはじめ、大学在学中には、2004年にベルギーで行われた第2回国際マリンバコンクールで第2位、2005年に中国・上海で行われた第4回世界マリンバコンクールで「The Talent Award」にそれぞれ輝いた。さらに、2006年には、第22回日本打楽器協会新人演奏会グランプリ、第2回パリ国際マリンバコンクール第1位を受賞。2007年、ハクジュホール(東京)にてソロデビュー・リサイタルを行い、東京オペラシティコンサートホールや横浜みなとみらいホールではオーケストラと協演し、ソリストとして高い評価を得ている。また、国際的にも積極的に活動し、ベルギー、スイス、ポーランド、アメリカ、イギリス、アルゼンチン等から招待され、ソロリサイタルやマスタークラスを行う。2009年には世界最大の打楽器フェスティヴァルであるPASIC(国際打楽器協会インターナショナルコンヴェンション)においてマリンバソリストとして出演。2011年3月には、ソニーミュージックダイレクトよりデビューCD「DEAR MARIMBA」をリリース。レコード芸術誌で特選盤に選ばれている。こうした活躍・業績が認められ、将来有望な若手演奏家に贈られる『出光音楽賞』を2012年に受賞。20年以上の伝統と権威ある同賞にあって打楽器奏者として初の受賞という快挙を成し遂げた。

インタビュー

塚越慎子 さん

在学中、そして卒業後と数々の世界的なコンクールで優秀な成績を収め
世界の注目を集める将来有望なマリンバ奏者、塚越慎子さん。
ソリストとしての活動はもとよりさらに活躍の場を広げている。
現在とこれからのこと、その原点ともいえるマリンバとの出会い、
青春時代を過ごした学生当時のエピソードまでを語っていただいた。

人より才能があるわけではない。
ただほんの少しだけ他人と違うのは、
「目標に向かって努力し続けられること」。

独特で素朴な音色を奏でるマリンバ奏者として

  ――演奏家として心がけていること、大切にしていることはどのようなことですか

 マリンバは、マレットというバチを使って木製の鍵盤を叩いて音を奏でる打楽器です。ピアノと同じ配列で、低音から高音まで4オクターブから5オクターブ半をカバーしています。そんな“音階を持つ打楽器”だからこそできる「リズミカルな音を奏でること」、また、見た目にも華やかな楽器なので、演奏している姿に目が行きがちですが、目をつぶっていても心に響くように歌いあげることが、特に大切だと思っています。また、マリンバは他の打楽器に比べて歴史も浅く、楽器そのものも進化の途中段階にあります。新しい奏法も次々と生まれているので、私自身も努力と進化を重ねていくことを心がけています。

 ――活動も多方面に及ぶようですが……

  ソリストとしての活動は、2011年にCD『DEAR MARIMBA』をリリースしたほか、今後は、『B→C バッハからコンテンポラリーへ』と題した東京オペラシティでの演奏や宮崎国際音楽祭への出演などが控えています。それぞれで演奏する曲がこれから続々と届くので、その練習が私を待ち受けています(笑)。
 そうしたクラシックを中心としたソリストの活動と並行して、マリンバとパーカッションの女性4人組ユニット『Ful』の活動も足かけ7年になりました。『Ful』の活動は、音楽に詳しい方だけでなく、そうでない方にも音を楽しんでもらうことを目的としています。オリジナルの楽曲に加え、ポップスやジャズの名曲のアレンジ、ときにはアドリブも入れ、MCでお客さまとふれあうことも大切にしています。こちらは都内のライブスペースで定期的に開催しています。

在学中から世界を舞台に

2007年3月に行った、自身のデビューリサイタル(東京・代々木の白寿ホールにて)
2007年3月に行った、自身のデビューリサイタル(東京・代々木の白寿ホールにて)

――“くにたち歴”が長いと聞きましたが……

 私は高校から入学し、大学、アドヴァンスト・コースまで進んだため、9年間くにたちで過ごしました。先に入学していた姉から学校のことはよく聞いていましたし、自由な雰囲気やその様子からますます行きたい気持ちが大きくなり、迷わず受験しました。大学では打楽器を専門とする人たちと常に一緒に過ごしていました。当然、会話の内容はマニアックな話題になっていくのですが、知らないことがたくさんあり、仲間からも多くのことを学びました。
 現在、音楽の世界に身を置いていますが、仲間のほとんどがくにたちの卒業生。キャンパスで過ごしたすべてが印象深いですね。

――大学時代はどんな学生でしたか

 同級生からは“一匹狼”と思われていたかもしれません(笑)。オーケストラとアンサンブル、ブラスバンドの授業を受講できますが、ソリストとしての勉強にも多くの時間が必要だろうと思ったので、選択科目であるブラスバンドは受講しなかったのです。でも、それは打楽器専攻生の中で私一人だけでした。そのぶん、皆がブラスバンドの授業を受けている間は、ソロの練習や勉強に必死に励みました。
 大学4年次には神谷百子先生に週1回レッスンを受けたことは思い出深いですね。ソリストとしても活躍され、コンクールの審査員なども務められている方で、マリンバだけでなく音楽の旬な話題にふれることができました。

――在学中にコンクールで入賞されました

 ベルギーで行われた国際マリンバコンクールに出場したのは大学3年次のときでした。あまり肩肘張らず、“世界のマリンバを聴きたい”くらいの軽い気持ちでしたから、2位という結果に自分でも驚きました。でも、その受賞をきっかけに目が覚めたというのでしょうか、かなり意識が変わりました。入賞者は次回のコンクールに招かれるので、そこでより良い演奏をしなければならないからです。それからは年に2、3回海外に行き、さまざまな意見や演奏にふれる機会を持つようにしました。

――さらに海外でも2年間学ばれて……

 アドヴァンスト・コースを修了後、明治安田クオリティオブライフ文化財団から奨学金を受け、アメリカのノース・テキサス大学へ2年間留学しました。留学前からジャズにも興味があり、マリンバと構造的にも近いヴィブラフォン(鉄琴の一種)を学びたい思いがあったので、ジャズ教育が盛んな大学を選びました。皆温かく大らかな街で、ジャズに囲まれた生活を送りました。学びの場はキャンパスだけでなく、放課後にジャズバーで生演奏を聴くのが日課のようになっていました。そうした環境で経験したことは今の私の活動に結びついていると思います。

“マリンビスト塚越慎子”の原点

塚越さん

――音楽との出会い、そしてマリンバを始めたきっかけはどんなことでしたか

 母が音楽教室の講師をしていたこともあり、物心がついたときにはピアノを始めていました。4歳上の姉と一緒に習っていたのですが、実はピアノの練習があまり好きではなく、小学校高学年の頃には、このまま続けるかどうか気持ちはモヤモヤしていました。そんなときにマリンバの演奏を聴き、華やかで華麗なマレットさばきを目の当たりにして、“コレだ”と思いました。
 早速、母に相談したところ、すぐにマリンバを教えてくださる先生を探すことになりました。これまでやってきた楽器と異なるものに挑戦することは、不安よりも新しいことを始められる期待感のほうが大きかったですね。

――それからはマリンバひと筋だったようですが……

 中学生になる頃には姉の影響もあり、“高校からくにたちで”と考えていましたので、その目標に向けてひたすら頑張っていました。
 中学2年からは国立音大の附属高校で開催される「音楽科受験対策講座」も受講しました。そこで出会ったのが上野信一先生で、コンクールに出場することを強く勧められました。マレットを使う本数をようやく2本から4本にしたばかりの頃でしたが、そんな私に構うことなく「○○のコンクールに出よう」と話を進められ……。今にして思えばかなりの“ムチャ振り”でした(笑)。でも、人前で演奏する経験が積め、独りよがりにならない演奏を体感できたので、結果としては良かったのかもしれません。
 座右の銘にしているのは、『人間98%は努力。努力なしの天才はいない』という言葉。自分に特別な才能があると感じたことはありませんが、人と少しだけ違うところを挙げるとしたら“努力できること”かなと思います。
 周囲からは順風満帆なように思われることもありますが、これ以上泣けない、というくらい涙を流したこともありますし、“自分の音楽って何だろう?” と自分自身に問いかけない日はありません。辛いことも少なくありませんが、本番の演奏を終えて得られる達成感や聴いてくださった方の拍手、声援がすべてを喜びに変えてくれます。

――最後に国立音楽大学をめざす方にメッセージを

 国立音大には、先生方、施設、資料、そして自由な校風、さまざまな考えを持つ友人など、音楽を自由に学ぶ環境がそろっています。音楽は、“これが正解”という答えがあるものではなく、いろいろな解釈があっていいものです。自らが信じる道を進んでいったらいいと思います。やる気次第で、どのようにも伸びる可能性がありますから。

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