国立音楽大学

RINAさん(ジャズピアニスト/作曲家/編曲家)

「音楽以外何もいらない」と思えるほど
音楽に打ち込んだ4年間でした
/2020年10月

プロフィール

RINAさん
ジャズピアニスト/作曲家/編曲家

RINA

国立音楽大学音楽学部演奏学科ジャズ専修1期生として入学しジャズピアノを小曽根真に師事。2015年卒業、同年渡米。2018年、エリス・マルサリス国際ジャズ・ピアノ・コンペティション2018にて13カ国/160人以上の参加者の中から7人のファイナリストに選ばれ第2位受賞、並びに最優秀作曲賞を受賞。同年バークリー音楽大学卒業。米CBSの人気テレビ番組「ザ・レイトショー・ウィズ・スティーブン・コルベア」にてジョン・バティステのバンドの一員に抜擢され3日間連続出演。ミシェル・オバマ前米大統領夫人をゲストに迎え演奏を披露した。2020年9月、小曽根真プロデュースとなるファーストアルバム『RINA』で全世界デビュー。現在アメリカ、ニューヨークを拠点に活動。

インタビュー

ピアノを本格的に始めたのはくにたちに入ってからという異色のジャズピアニスト、RINAさん。ジャズ専修の1期生としてひたすら音楽と向かい合い、卒業後は留学先のアメリカでその実力にさらなる磨きをかけました。今年9月に世界デビューしたRINAさんの飾らない素直な言葉は、彼女が奏でる音色と同様、心地よく響きます。

きっかけは受験準備講習会、エレクトーンからピアノへ

RINA

──大学に入学する前の音楽との関わりを教えてください

 3歳からエレクトーンを習い始め、くにたちに入るまではずっとエレクトーンを弾いていました。ピアノも少しやってはいたものの、習ったりやめたりを繰り返していて、何歳から始めたかは、あまりはっきりしない感じです。ピアノは難しそうで、私には無理だという先入観もあったと思います。エレクトーンはかなり本格的に打ち込みコンクールにも出場していましたが、そうなると逆に「コンクールのために練習しているのか」と、楽しく感じられなくなってしまいました。それでも音楽は好きで続けたかったので、大学でも音楽を学びたいという思いはありました。

──くにたちを選ばれた理由をお聞かせください

 高校3年のとき出場したエレクトーンのコンクールの審査員にくにたちの栗山和樹先生がいらっしゃったのがご縁で、くにたちの夏期受験準備講習会に参加したら、ものすごく楽しかったのです。当時感じていたピアノに対する苦手意識など吹き飛んでしまうほどでした。講習会では小曽根真先生とブルースのセッションをするなど貴重な時間を過ごせたことで、「くにたちで学びたい」と強く思いました。新しいことを始めたいと思っていた私にとって、ちょうど新設されるジャズ専修はもってこいの場所だとも感じました。これから何を学べるんだろうというワクワクする気持ちや、私たちがここから新しくジャズ専修の歴史を作っていくんだなという期待で一杯でした。

くにたちで目覚めたジャズの世界

──印象に残っている授業はどのようなものですか

 ビッグバンドの授業です。エレクトーンは一人でビッグバンドの演奏ができてしまうので、だれかと一緒に演奏する醍醐味を初めて知りました。ただジャズ専修の1期生は私を含めて5人、その中でピアノは私1人でした。そのため、先生やジャズコース※の先輩たちが補助としてビッグバンドに加わってくれました。入学して間もない1年次の7月には、小曽根先生プロデュースによるブルーノート東京でのコンサートにジャズ専修の学生も出演。今思えばすごく贅沢なことですよね。
 同期の人数が5人と少ない分、関係も濃かったので、ケンカもたくさんしました。中学からジャズ一筋だった人もいたし、「くにたちのジャズ専修で学びたい」とニューヨークから戻ってきた人もいる中で、私はピアノもジャズも本格的に学び始めたのはくにたちに入ってから。それでも萎縮せずに過ごせたのは、小曽根先生が最初のレッスンで「ジャズを始めたばかりのRINAは今0歳。ほかの子と比べることはない」と言ってくださったからです。そのおかげで「練習すれば上達する」と素直に信じることができました。2年次になり後輩が入ってくると仲間も増え、年齢に関係なく尊敬したり刺激を受けたりする仲間とたくさん出会えました。今もジャズ専修の学生や卒業生の活躍を知るとすごくうれしくなるし、自分の励みにもなっています。

──小曽根先生のレッスンはいかがでしたか

 数えきれないほど多くのことを学びましたが、音楽に対し、「音楽家としてではなく、ひとりの人間として向き合いなさい」と、レッスンを通じて教わりました。自分そのものがピアノには出る、と。私はもともとシャイで話すことも苦手でした。当時はそれがピアノの音にも出ていて、タッチも弱く、音がしっかり出ていませんでした。そこでレッスンではピアノを弾く前にまず大きな声を出すことから始め、少しずつ自分を開放できるようになっていきました。先生から「音が変わったね」と言われたときはうれしかったですね。3年次のとき、先生のコンサートに声をかけていただき、2台ピアノで演奏したことも忘れられない思い出です。コンサート後に先生から「卒業後はアメリカに行ってみたら?」と言われたのが、留学するきっかけになりました。

──くにたちだからこそ学べたと思うことはありますか

 くにたちで学び始めてすぐ、ジャズにのめりこみました。「こんな音楽があったんだ!」という感動で、まさに「音楽以外何もいらない」と思えるほど音楽漬けの4年間でした。くにたちで新しい音楽の扉が開けたこと、小曽根先生に出会えたことで人生が変わったと思います。また、ジャズ専修には素晴らしい先生がそろっていて、どの先生も私たちを一学生としてではなく、音楽家として見てくれました。そのおかげで、私たち学生は「一流のアーティストとやりとりできる」という喜びやありがたみを常に感じていました。あまり「勉強している」という意識がないまま、気がつけばとても多くのことを学べているのも、ジャズ専修の大きな魅力でした。

※ジャズ専修に発展的解消

ジャズピアニスト「RINA」の誕生

2019年Japanese Jazz SeriesでワシントンDC出演時の写真©Yoko Higuchi

──留学先での生活について教えてください

 バークリー音楽大学には世界中から人が集まっていて、周囲の誰もが自分の主義主張をどんどん話すことに衝撃を受けました。そんな環境で過ごす中で「自分のやりたいことはなんだろう、人になにを伝えたいんだろう」と考えるうち、次第に私も自分の思いを言えるようになっていきました。最初は1年で帰国するつもりでしたがアメリカでの生活や学びが充実していて、学費全額免除も獲得できたので、卒業まで3年間バークリーで学びました。在学中に先生たちのバンドに参加したり学生の選抜バンドでヨーロッパに行ったりと、演奏の機会が増えていきました。最大の転機になったのは、2018年にエリス・マルサリス国際ジャズ・ピアノ・コンペティションで受賞したことです。これがきっかけでアメリカの人気テレビ番組に出演してから、仕事のオファーがぐっと増えました。それで卒業後もアメリカを拠点に活動することを決意しました。

──RINAさんにとってジャズの魅力とはなんでしょう

 自分を表現できることですね。ジャズは会話と同じだと思うんです。たとえばトリオで演奏しているとき、私がピアノを弾くと、ドラムやベースがそれを受け止め返してくれる。またそれとは逆にドラムやベースから発信してくれ、私が答えていくこともあります。とりわけジャズは音楽の中でもコミュニケーションに長けている音楽だと思うので、そこに惹かれます。私は作曲もしますが、作曲も自分を表現できる手段の一つで、伝えたいことをすべて音にできるところに魅力を感じます。

──9月にはデビューを果たしましたね

 新型コロナウイルス感染症の影響で当初の予定より遅れ、一時はいつ日本に帰国できるのかもわからない状態でしたが、焦りはありませんでした。これまでずっと走り続けてきたので、自粛期間中に考える時間ができたと前向きにとらえることができました。自分が今すべきことはなにか、音楽をしている意味、音楽でなにをしたいのか。あらためて自分自身と向き合うことができました。今後は世界中で演奏し、音楽で人の助けになれる、そして人に影響を与えられるような音楽家になることが目標です。

──くにたちを目指す人たちへメッセージをお願いします

 音楽が好きなら、まずそう思う自分を信じ挑戦する気持ちを忘れずに、音楽の道を突き進んでいってほしいです。

Message

強い芯があって、音楽を奏でることが本当に好き──渡米してからの彼女の音楽を聴いて、自分のアイデンティティーを探す厳しくも楽しい旅を始めたことを実感し、誇りに感じています。これからも人に言われたことではなく、自分の心が欲する方向にのみ向かって全力で創り続けてくれることを、そしてそのエネルギーを必要としている一人でも多くの人に届けてくれることを期待しています。

演奏・創作学科ジャズ専修 教授 小曽根 真

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