三村奈々恵(マリンバ奏者)
史上3人目「ALOSI賞」を受章/1998年11月
プロフィール
三村奈々恵さん(みむら ななえ)
MIMURA Nanae
マリンバ奏者
1974年 長野県生まれ。3歳よりマリンバ、5歳よりピアノをそして13歳より打楽器を学び始める。
1990年 国立音楽大学附属音楽高等学校・打楽器専攻入学。在学中「学内ソロ演奏会」「卒業演奏会」等に出演。
1993年 「マリンバ&ヴァイブラフォン・ソロリサイタル」を開催。
1993年 国立音楽大学附属音楽高等学校・打楽器専攻首席卒業。国立音楽大学・打楽器専攻入学(同大学より3年間、奨学金を得、また同調会より奨励金を授与される)。
1996年 3月 第6回全日本ソリスト・コンテストに入賞。
1996年 6月 「マリンバ&ヴァイブラフォン・ソロリサイタル」を開催。
1997年 3月 国立音楽大学首席卒業「卒業演奏会」出演。卒業時に武岡賞を受賞。また同時に(株)NTT‐DoCoMoより表彰され奨励金を授与される。
1997年 5月 日本打楽器協会主催「第13回打楽器新人演奏会」に出演し、特別賞(第1位)を獲得。
1997年 9月 ボストン音楽院/The Boston Conservatory修士課程に留学。同校より奨学金を得て現在在学中。
1997年11月 ロスアンゼルスで行なわれた「PASマリンバ・ソロ・コンクール(主催:PAS Percussive Arts Society)にて第1位獲得。
1998年3月 「ルガーノ音楽祭ボストンソロコンクール/Settimane Musicali di Lugano Solo Competition(ボストン市)」にて第1位獲得。
1998年 5月 日本打楽器協会主催「第14回打楽器新人演奏会」にて招待演奏およびクリニック実施。航空自衛隊主催リサイタルにゲスト出演等々。
1998年 6月 「BANDS OF AMERICA」(イリノイ)にYAMAHA of Americaの招待を受けゲストパフォーマーとして出演。
1998年 8月 ルガーノ音楽祭/Settimane Musicali di Lugano Festivalの招待により、「ソロリサイタル」をスイス各地にて開催。
スイス・イタリアオーケストラ&オペラ協会より「ALOSI(アロージ)賞」を受賞。ボストンのバークリー音楽院で行なわれた「マレットキーボード音楽祭」にてゲスト講師を勤める。
マリンバ、打楽器を岡田知之(元NHK交響楽団打楽器奏者)、新谷祥子(Chris&Shoko Percussion Duo)、Nancy Zeltsman(Marimolin:MadamRubio)、Patrick Hollenbeck(ボストンポップス打楽器奏者)各氏に師事。またクラシック、民族音楽、ニューエイジ等々幅広い分野にレパートリーを持ち、ソロ曲やアンサンブル曲の作曲・編曲も手がける。
インタビュー
本学附属音楽高等学校在学中から“マリンバ&ヴァイブラフォン・ソロ・リサイタル”を開催するなど将来を嘱望されていた三村さん。
1997年5月の日本打楽器協会主催「第13回打楽器新人演奏会」で特別賞(第1位)を獲得したのを皮切りに、同年11月世界最大の打楽器協会PAS主催「PASマリンバ・ソロ・コンクール(ロサンゼルス)」では第1位を獲得。1998年3月には「ルガーノ音楽祭ボストン・ソロコンクール/Settimane Musicali di Lugano Solo Competition(ボストン)」で第1位を獲得。1998年8月にはスイスにて、スイス・イタリアオーケストラ&オペラ協会より、史上3人目の「ALOSI(アロージ)賞」を受賞するなど大活躍の三村さんを本紙ゲストに招き、いろいろなお話を伺った。
クラシック、民族音楽、ニューエイジなど幅広い分野のレパートリーを持ち、ソロ曲やアンサンブル曲の作曲、編曲も手がけていると聞きますが、そもそもマリンバを始められたきっかけはいつのことですか?
マリンバに最初に触れたのは3歳のとき。きっかけは母の勧めで、その頃のことは何も覚えていないほど小さな頃のことです。母も国立音楽大学の卒業生なのですが、学生時代に聴いたマリンバの音色にずっと憧れを抱いていたようです。自分の意志で、本気でマリンバをやって行こうと思ったのは10歳の頃でした。それからは一筋、マリンバ人生です。もっともあらゆる打楽器は経験していますが。
今年(1998年)は、アメリカや欧州へ演奏旅行を
現在までの歩みはプロフィールでご紹介するとして、今予定されている演奏会などは?
8月には“ルガーノ音楽祭/Settimane Musicali di Lugano Festival”の招待によりソロリサイタルをスイス各地で開催しました。そして春にはボストンシンフォニーホール・オープンハウスの企画で演奏させてもらい、そのグループ(トリオ)でスペインに演奏旅行に行こうと思っています。来年の5月には「メルローズ交響楽団」の定期演奏会にソリストとして、マリンバコンチェルトを演奏予定です。その他国内の演奏会を2、3予定しています。
まさにあちこちでご活躍のようですが、「打楽器のコンクール」は声楽やピアノと比べるとその種類が少ないと聞きますが---。
はい、本当に少ないです。打楽器奏者が世に出るのはそういう意味で難しさがありますね。国内コンクールでは「日本管打楽器コンクール」だけ、海外でも少なく、「ミュンヘン国際音楽コンクール」の打楽器部門と、私が幸いにも音高の3年生のときに出場でき貴重な体験をすることができた「ジュネーブ国際音楽コンクール」の打楽器部門くらいだと思います。マリンバだけの独立したコンクールはやっと3年前にアメリカでできました。それまでは打楽器の一部門でした。その少ない中でPAS(編集注:Percussive Arts Society、合衆国に本部があり、世界最大の打楽器協会)の「マリンバ・ソロ・コンクール」で第1位を受賞したことが大きかったですね。
もう少し具体的にどのように違うのですか?コレペティートルの人はマエストロの意向、考え方、捉え方を敏感に察知していると言いますが。
指揮者が初めて来たときによりよいレッスンをするために、指揮者と曲のここはこのようにということを、あらかじめ聞いておき、オペラ歌手に指揮者の意向を伝えながらレッスンをすることになります。指揮者が来たときに稽古をうまく進められるようにする、それがコレペティートルの役割の一つです。そのような手順を踏むことによって、稽古もスムーズにいきますし、何よりも、より深いところまで指揮者と歌手とのレッスンができるようになるわけです。単なるピアノ伴奏とはいろいろな点で異なることおわかり頂けるでしょうか。オペラ公演には、コレペティートルが絶対必要なことだと思います。段々日本でも定着してきましたし、後はコレペティートルを目指す方が増えてくれればいいと思います。
何でも屋さんが打楽器。国立音楽大学には世界一の楽器の設備がある
話を大学時代に戻して、どのような大学生活でした?
その前に、国立音楽大学の評価をさせて頂きたいと思います。と言いますのも、その認識があってはじめて大学生活が語れると思うからです。世界中の音楽大学を知っているわけではありませんが、私が知っている限りの音楽大学で言えば、国立音楽大学の楽器の設備は世界一だと思います。この環境で打楽器を自由に学べたことが今日の私を形成したと思います。4年間、それこそ自由に、2~3人のアンサンブルはもちろん20人位のアンサンブルができたこと、声楽の方々と一緒に打楽器を主とした演奏会など様々な試みもできました。そして一つの音楽、一つの分野にとどまらず、例えば民族音楽、クラシック、フュージョン、ニューエイジ、オーケストラ等々すべての音楽分野を、様々な打楽器を使って勉強できました。世界一の楽器の設備があったからこそ可能だったと思います。そのようなたくさんの打楽器に触れ、勉強しましたが最終的に自分が好きで、自分にあったマリンバを選びました。
国立音楽大学には世界中の民族楽器が蒐集されていますが、打楽器の範疇はとても広いですね。
例えば、植木鉢やコップ、四国の讃岐の近くでドイツの学者が発見したサヌカイトという金属的な伸びのある音のでる石などそれこそ何でも楽器にしてしまうのが打楽器ですね。一般的には私がやっているマリンバをはじめ、シンバル、タンバリン、トライアングル、カスタネット、大太鼓・小太鼓などがだれでも知っている打楽器ですが、その他「こする」ギロやクイーカ、「はじく」カリンバ、「ふく」鳥笛などから効果音で使われる波太鼓、鞭、空砲、ドラなども打楽器の範疇で、打楽器は雑貨屋さん、何でも屋さん、そんな感じですね(笑い)。
曲ごとにセッティングも変えなければならないわけですし、まさに体力勝負?
本当にその通り、体力が必要なんです。国立音楽大学の打楽器に入れて頂いたお陰で、鍛えられました。裏方の仕事も勉強させてもらい、演奏会がどのような進行で行なわれているかよく分かりました。そのお陰で演奏会場を選ぶときは、まず搬入口を見ろ!など実務的にいろいろな経験をさせて頂きました。本当は声楽の方のように奇麗な舞台衣装を着たいのですが、まったく縁遠いのが打楽器ですね。ボディパーカッションなどでは、肉付きがいいとよい音が出ます(笑い)し、ジーンズの方がいい音が出るんですよ。それと忍耐力・緊張感にいかに耐えることができるかという面があります。例えば60分の曲の中で一つの音のために59分間待たなければならないこともあるわけです。有名な打楽器奏者でも1発のシンバルのために2時間待ち、その音を打ち逃がしてしまったためにその演奏会では、なにもできなかったという話を聞いたことがあります。打楽器は他の楽器と違い一人一つの楽器ですから、その責任感と緊張感はすごいものがあります。
国立音楽大学で学ぶなら、一つの分野にとどまらず
ところで現在はアメリカのボストン在住?
現在ボストン音楽院/The Boston Conservatoryの修士課程(大学院)に1997年9月から留学中です。ボストンは日本で言えば京都のような所でしょうか、古き良き時代のGreat Britain(イギリス)様式をそのまま残そうとしている街です。教育面ではアメリカでも最も充実しているところと聞いています。このボストン音楽院には、マリンバ専攻と打楽器専攻の二つのコースがあり、大学院には5人います。ドクターを目ざす人もいますが、私はドクターになる気はありません。あくまでも奏者としての道を歩んでいきます。そして、やがては日本に帰りたいですね。何と言っても日本食が好きですから(笑い)。現在は、まだマネージメントカンパニーと契約していないのでフリーでやっていますが、それでもエージェントやレコード会社から少しずつ話がきていますし、仕事ができる限りアメリカにいようと思っています。追い出されるまでは(笑い)。アメリカでもピアノや歌に比べマリンバはまだまだマイナーなので、もっともっとメジャーになればいいと思っています。これからマリンバをはじめ打楽器を習おうとする人のためにも…。打楽器を出た私の同期の人は、教える仕事やオーケストラのエキストラに就いている人やあるいは独自に打楽器を研究している人などがいます。
これからという人のためにアドバイスを。
あれだけ楽器設備が備わっている国立音楽大学で学ぶのでしたら、まず広く浅くでも一つの分野にとどまらずあらゆる楽器と、例えば音楽デザイン学科や応用演奏学科の学生とのセッションなど、国立音楽大学ならばいくらでもその機会があるわけですから、様々なことにチャレンジして欲しいと思いますね。それと一つの音楽ジャンルだけではなく様々な音楽分野にもチャレンジされるといいでしょうね。結果、幅の広い打楽器奏者になることができると思います。
打楽器やマリンバは、マレット(ばち)を選ぶのは大変重要で、選び方によりすべて音が違ってきます。オーケストラではサウンドに合う音を自分で見つけなければならないし、叩き方によって音の違いがでてきますので、打楽器は奥の深い楽器だと最近つくづく思います。活躍の場がまだまだ少ないのですが、それだけに今後が楽しみな楽器だと思います。たくさんの人が取り組んでくれることを期待しています。
