加藤綾子(フリーアナウンサー)
くにたちで培った学びが
アナウンサーの仕事に生きています
/2018年4月
プロフィール
加藤 綾子 さん(かとう あやこ)
KATO Ayako
フリーアナウンサー
埼玉県出身。国立音楽大学附属高等学校、国立音楽大学音楽学部音楽教育学科音楽教育専修卒業。中学・高校の教員免許(音楽)取得。2008年フジテレビジョンに入社、「めざましテレビ」「僕らの音楽」などさまざまな番組に出演。2016年よりフリーランスのアナウンサーに。現在は「ホンマでっか!?TV」「MUSIC FAIR」(フジテレビ系)「世界へ発信!SNS英語術」(NHK Eテレ)などに出演中。
インタビュー
フジテレビのアナウンサーとして人気を博し、フリーになった現在は多方面に活躍の場を広げている加藤綾子さん。
ピアノが好きで、音楽の先生になろうと進んだくにたちでの学びが、働く上で大いに役立っていると話されます。
学生時代の思い出や音楽との関わり方、そして仕事への思いなどを語っていただきました。
友人と先生に恵まれた学生生活
―音楽との出会いを教えてください
幼稚園年長のとき、周りの友だちがピアノを習っていると聞いてかっこいいと思い、私も習いたいと母に頼んだのが最初です。たまたま近所で兄の同級生のお母さんがピアノ教室を開いていたという環境にも恵まれました。先生がほめてくれるとうれしくて、どんどんピアノが好きになりましたね。発表会やクリスマス会でお姉さんたちが黒鍵も使った曲を弾いているのに憧れ、「自分もああいう曲が弾けるようになりたい!」と思っていました。
いつの間にかピアノは生活の一部になっていて、中学生の時、将来は音楽の先生になることを夢見るようになりました。家族も、教員免許を取得したりピアノというスキルを身につけたりすれば、かならず将来役に立つという考えだったので、国立音楽大学附属高等学校に入学、その後、国立音楽大学に進学しました。幼稚園のときからピアノを習っている先生が、くにたち出身だったことも、くにたちを選んだ理由です。お世話になっている大好きな先生の出身校ということで親しみがありました。
ー学生生活はいかがでしたか
ピアノ以外の楽器や声楽を学んでいる友達ができ、ぐっと世界が広がりさまざまな刺激を受けました。今でも学生時代の友人たちとは集まっていますよ。
音楽の先生になって、結婚したら自宅でピアノを教えるというのが当時の人生プランでしたから、教職課程の科目は中でも頑張って勉強しました。ただ教職をとると授業数が増えますよね。埼玉の自宅からくにたちまでは片道2時間かかったので、1限から5限まで授業を受けて帰宅すると、もうくたくたでした。
先生は個性的な方が多くどの授業も思い出深いのですが、とりわけ門脇郁子先生に教えていただいた声楽の授業は印象に残っています。先生は学生自身が持っているものを、うまく引き出してくれる方で、レッスンではいつもみんな笑顔でした。門脇先生と一緒に歌うのは本当に楽しかったですね。授業後に学生たちが提出するレッスンノートも、こちらが書いた内容をしっかり読み込んでくださっているのが伝わり、先生の愛情を感じました。実は卒業後のフジテレビ局員時代に『Early Morning』というユニットを先輩アナウンサーと組み、私が作曲した曲のCDを出しました。あのときはくにたちで少しでも作曲を学んでいてよかったと心から思いました。その曲を初めて披露する場に門脇先生が来てくださったんです。制作の方が私に内緒で呼んでくださっていて、すごくうれしいサプライズでした。
ー在学中、壁にぶつかったことはありましたか
高校から一緒だった親しい友人たちが、大学に入ると音楽に対してこれまで以上に深く向き合い熱中するようになり、なんだか私を置いてどんどん大人になっていく気がしました。そんな友人たちの後を追いながら、自分に自信を持つことの難しさを感じていた時期もあります。当時の私は何かにチャレンジする前に「私にはできないだろう」と思ってしまうところがありました。振り返ってみると、そんなに不安にならず、もっと色々なことに挑戦すれば良かったと思います。そういうことが存分にできる環境がくにたちには整っていたのに、もったいなかったと今はすごく思っています。
ー在学中からアナウンススクールに通い始めましたね
小さい頃から将来は音楽の先生になりたいと思い、くにたちに進学したのですが在学中にアナウンサーを目指すようになり、アナウンススクールにも通いはじめました。受かるわけがないという思いもどこかにあったので、教職の授業も続けて受けていましたね。その無欲さがむしろ功を奏したような形でアナウンサー試験に合格しました。アナウンススクールで原稿を読んだりフリートークをしたりすることは、楽しかったですね。教師とアナウンサーには「伝える」という共通点があることもよかったのだと思います。ずっと頑張って教職の授業も受けてきたので、進路決定後も教員免許はとりました。母校の附属高等学校へ教育実習に行ったことも良い思い出です。
表現が求められる、フリーのアナウンサーへ
―2016年にフリーになってからも、変わらずのご活躍ぶりですね
局員として過ごした20代は自分でもやり切ったと納得できるくらい頑張ったので、悔いなく新しい道に進むことができました。フリーになってからは、仕事の仕方が変わりましたね。それまでの一歩引いたところに徹するスタンスではなく、もっと自分を出す必要がありますし、雑誌の撮影やCMなど、その場でぱっと自分を表現することも求められます。そのため、演奏を通して自分を表現していた「くにたち時代の自分を取り戻そう」と思うようになりました。
というのも、入社して間もない頃「すごくストレートにものを言うよね」と言われたことで、あまり自分の考えや主張は前面に出さず、抑えるようにしてきたんです。けれどフリーになった今はもう、周囲に合わせているだけではよしとされないので、個のプレーヤーとして自分の感性を取り戻すために、またピアノを習い始めたいと思っています。アナウンサーとしてくにたちで培った表現力をこれまで以上に発揮して、自分の意見や考えを発信していきたいですね。
くにたちで学んだことに、とても助けられています
―大学時代に身についたことは、現在の仕事でも役立っていますか
ものすごく役立ってます。音大からアナウンサーって少し珍しい経歴かもしれませんが、私は社会人として時間が経つほど、くにたち出身で良かったという思いを強くしています。最初はアナウンサーと音楽は関係ないのかと思っていましたが、まったくそんなことはありませんでした。
たとえば幼稚園からずっとピアノを続けてきたことは私にとっては当たり前のことでしたが、「1つのことをとことん続ける」「レッスン前後の予習復習を欠かさない」などは、仕事に丸ごと生かされましたし、私の強みにもなりました。また、ピアノを演奏しながらも、ここはこう演奏しようなどと複数のことにも意識を向ける経験を重ねてきたことで、原稿を読みながら次の指示を受けるというアナウンサーに必須のスキルも自然と身についていました。さらにくにたちで耳を鍛えられたおかげで、先輩が原稿を読むのをずっと聞いていると、すぐに同じように読むことができました。ピアノが自分を表現できる大切なものだということも改めてわかりましたし、くにたちで音楽を学んだことにとても助けられています。
―くにたちを目指す人たちへのメッセージをお願いします
今するべきこと、目の前にあることに一生懸命に取り組んでほしいですね。そこでの頑張りや鍛えられた部分は、内容は変わってもずっと自分の人生において力になるはずです。新しいこと、やりたいと思ったことにも迷わず挑戦してもらいたいですね。
「音楽」という共通のカテゴリーの中で知り合った人からは素晴らしい刺激を受けることができますし、私はくにたちで一生の友人や先生と出会えました。みなさんもそんな素晴らしい出会いを求め、ぜひくにたちで学んでください。