鎌田佳子(音楽教育)
事実とファンタジーの間に…/1993年7月
プロフィール
鎌田佳子さん(かまた けいこ)
KAMATA Keiko
音楽教育
1986年 玉川学園高等部卒業。
1988年 国立音楽大学教育音楽学科(現・音楽教育学科)入学。
1990年 フジテレビ「おはよう茨城」にリポーターで出演。
1991年 音楽座のミュージカル「シャボン玉とんだ宇宙までとんだ」(青山劇場)に出演。1992年国立音楽大学卒業。劇団ラルエットのミュージカル「ブンナよ木から降りてこい」で振り付けを担当する。
同年10月~11月フジテレビ「住みよい社会」(厚生省)に出演。
同年10月TBS「ニュースコールおはよう藤田です」のキャスターを務める。
1993年10月から福井テレビ(FNS系)報道制作局に勤務し「スーパータイム」のアナウンサーに。
1995年4月NHK衛星放送第一「日本列島ふるさと発」キャスターに。
1996年4月アナウンサー業務にピリオドを打ち、PerfecTV!(日本デジタル放送サービス)に入社、現在広報担当。
また1997年、仕事とは別に劇団ラルエットのミュージカル「モモ」(国際フォーラムAホール)のプロデューサーを務める。
インタビュー
久しぶりに訪れた母校のキャンパス。かつて慣れ親しんだ風景の数々、そして先生方のなつかしい笑顔が次々に彼女を迎えてくれました。ニュースキャスターを務めている鎌田佳子さん。ちょっと異色の卒業生です。
夢をカタチに
演劇に熱中していた高校時代、鎌田さんは、偶然、佐藤しのぶさんが演じるオペラ「トスカ」の舞台を体験し、「人間の声が持つ存在感の凄さ」に圧倒されます。やがて「私も、声楽をやってみたい。」と思うようになった彼女がめざしたのは、もちろん佐藤しのぶさんが卒業した国立音楽大学でした。
「もし、その舞台を見なかったら、おそらく音大に進むことはなかったでしょう。」
小学校2年からクラシックバレエのレッスンを受けていた鎌田さんですが、声楽に関する下地はありませんでした。そこで、声楽の基礎からのレッスンを受ける“浪人”生活を送ることになります。そして1年後、音楽教育学科への入学を果たした時に感じたことは「これで腰を落ち着けて、自分がやりたいことに取り組める」という大きな安心感でした。もともと「夢をカタチにしていくような表現活動が好き」という彼女は、入学後、その表現意欲を発揮し、「何をしでかすかわからない」と先生方に一目置かれる(?)存在に……。
自分を表現することの楽しさを、彼女は国立音楽大学という環境の中で、十分満喫していました。同時に、外の世界へもその表現手段を広げていきます。大学4年の5月に、東京・青山劇場でミュージカル初舞台。またその前年よりアルバイトでやっていたナレーションの仕事が縁で、TV番組のオーディションを受けるように。これが、現在の仕事につながっているのです。
リアルワールドへの挑戦
クラシックバレエ、演劇、オペラ、ミュージカル……少女時代から大学まで、舞台芸術が紡ぎ出すファンタジーの世界が、つねに最大の関心事。そんな鎌田さんが、今、ニュース報道という“リアルワールド”の最前線を仕事場として選んでいます。なぜでしょう。
「ほんとうに自分がやりたいことは、やはり舞台芸術や音楽などファンタジックな世界を作っていくことにあると思います。でも、今は報道の仕事の中に身を置いていたい気分なんです……ここには何かが、私にとってとても大切な何かがあるような気がするから」
まったく正反対に思える世界にもかかわらず、どこか共通点があるような気がしてならない――鎌田さんはそう考えているのです。
「同じ天気予報を伝えるのでも、季節の移り変わりや街の空気……そういったものまで視聴者に伝えることができれば素敵ですよね。そのために、いつも五感を敏感にしておくことが大切なんですよ。」
人と同じではない、オリジナルな自分の表現をめざす。そのために、将来はキャスターという立場にこだわらず、仕事の幅を広げたいということです。
「やがては、舞台芸術や音楽の知識を生かせる番組出演をめざしたいですね。たとえば、現役で活躍する音楽家の苦闘を、一般の人に紹介するドキュメンタリー。国立で幅広く音楽のことを学んだ私なら、ぜったいに内容が濃くて、面白いものができるはず。できればプロデュースから、自分で手掛けてみたいですね。」
マスメディアの世界は、彼女にとって新しい、“舞台”なのかもしれません。舞台芸術の魅力を「舞台とソデ、明と暗の間に存在する緊張感」と語る彼女は、同様の魅力を“事実”と“ファンタジー”の間にも感じているのでしょう。
「もう一つ、実際の舞台をその裏側からテレビカメラで撮影してみたい。そこには、だれも知らなかった感動的な物語が隠されているはずなんですから……。」
