ニース夏期国際音楽アカデミー(フランス・ニース)研修報告書
中島彩也香 3年 演奏学科 鍵盤楽器専修(ピアノ)
研修概要
- 研修先:ニース夏期国際音楽アカデミー(フランス・ニース)
- 研修機関:第51回ニース夏期国際音楽アカデミー
- 研修日程:2008年7月29日〜8月11日
- 担当教授:Prof.Philippe Entremont/Prof.Jean-Marie Cottet
研修の目的
本研修に参加するにあたり、目的としていることが3点あった。まず、コンクールの課題曲をより深く勉強することである。受講を希望した先生方はいずれもフランスにて教鞭を執られており、フランスの作曲家の作品を中心に見て頂こうと考えた。2点目は、将来の留学に向けた経験である。私は将来海外で勉強したいという目標を立てており、海外で勉強することの意義について再確認したいという思いがあった。3点目は、世界中から集まった演奏家を目指す受講生とのコミュニケーションである。本研修ではレッスン以外で講師陣の演奏会など受講者同士の交流の機会が多くあり、アカデミーで育まれる人脈は私の将来の貴重な財産になるものと期待している。
アカデミーについて
ニース夏期国際音楽アカデミーは、50年の歴史を誇る、フランス及び世界トップクラスの教授陣を一堂に揃えた講習会であり、これまでに50カ国以上の国々から、約5万人の受講生たちが参加し、著名な音楽家たちを多数輩出してきた。アカデミー開催中には、毎晩「ニース・ミュージック・ナイト・フェスティバル」という演奏会がくり広げられ、受講生たちは、世界で演奏家として活躍されている教授たちの演奏を聴くことができる。
レッスン
一週目
一週目はフィリップ・アントルモン先生のクラスを受講した。門下生は日本人が4名、その他、ポーランド、ロシア、香港人の合計7名であり、少人数だったこともあってすぐに打ち解けることができた。アントルモン先生のクラスは合同レッスン形式であり、1週間朝10時から夕方まで毎日レッスンが行われた。他の受講生たちのレッスンも聴講し、受講曲がそれぞれ違うので、いろんな曲を知ることができたと同時に、先生がおっしゃる注意や演奏法はとても参考になり、また、語学の訓練にもなった。
受講曲♪
D.SCARATTI:Sonate K.29
J.S.BACH:The well-tempered clavier part 2 No.19
BEETHOVEN:Piano sonate No 7 Op.10
CHOPIN:12 Etudes Op.10-8
LISZT:Rhapsodie Espagnole
RAVEL:Jeux d'eau
私は今秋、国内のコンクールに挑戦する予定であったので、その課題曲を中心にレッスンをして頂いた。レッスンを通じて一貫して教えて頂いた事は、身体で音楽を表現することの大切さであった。単に体を動かすという意味ではなく、体から湧き出てくる情熱や感情を指先に思いを入れるということであるが、頭の中で理解し、納得できても、実践すると、余計な力が入ってしまい、音が固くなってしまい、思い通りに表現することが難しい。よくわかっていると思っていたものの、一番重要かつ困難なことであると改めて気付かされた。
アントルモン先生はとても体が大きくて手には厚みがあり、指も太いにもかかわらず、この上なく繊細で美しい音色を出すと同時に、力強いエネルギッシュな太い、濃密で説得力のある音色を、体一つ揺さぶらずに何種類もの音をいとも簡単に出すことができる。第一線で活躍されている先生のレッスンを受けることができた喜びとともに、そんな先生の音色を隣で聴くことができたことに感激した。これこそ、一流の音色なのだと…。その音色を目指して訓練し、日々研究し続けようと決意した。
二週目
二週目は、ジャン=マリー・コテ先生のクラスを受講した。コテ先生はパリ国立地方音楽院で教えていらっしゃる先生である。講習会では20人近くの門下生がおり、ほとんどが日本人であった。コテ先生のレッスンは、個人レッスン形式で、週に3回、計3時間のレッスンであった。コテ先生はとても親切で、優しいお人柄に見えた。語学もわかりやすく、すんなりレッスンに馴染むことができた。
受講曲♪
BEETHOVEN:Piano sonate No 7 Op.10
BEETHOVEN:Piano sonate No.22 Op.54
LISZT:D'Execution Transcendante No.5 Feux Follets
LISZT:Rhapsodie Espagnole
RAVEL:Jeux d'eau
三回のレッスンを通して、教えて頂いたことは手首の使い方や、作曲者、作品によって、弾き方を変える方法である。弾きにくいパッセージを指の使い方、力加減、ペダリングによって、より弾きやすく演奏できる方法を教えてくださった。今まで苦労していたフレーズが、コテ先生に教えて頂いたあとに弾いてみると、不思議と柔軟な力で楽に弾けることに驚かされた。さらに、練習方法、作曲者のことや作品の解釈のことまで、細かくご丁寧に教えて頂いた。
Nice Music Night Festival
講習会は、ニースの中でも自然の多いシミエ地区にあるニース国立地方音楽院の新校舎にて行われ、滞在したモンテベロ学生寮からは山道を20分歩いたところにある。毎日強い日差しと暑さの中、山道を上り下りするのは大変だったが、南仏の心地よい自然を肌で感じながらの通学路は、都会で育った私にとって新鮮であり、とても穏やかな気持ちでレッスンに臨むことができた。学生寮はすべてシングルルームで、室内には、流し台、シャワー、トイレ、冷蔵庫が完備されており、窓を開けると心地良い風が入ってきた。また、自然に囲まれているせいか、毎日小鳥のさえずりも聞こえてきたのが印象的で、快適な日々を過ごすことができた。また、同じ寮で生活をしている世界各国からの受講生たちと一緒に、ナイトコンサートの感想や音楽に対する考え方、母国での生活など、夜遅くまで語り合ったのがとてもいい思い出となった。
現地での生活
講習会は、ニースの中でも自然の多いシミエ地区にあるニース国立地方音楽院の新校舎にて行われ、滞在したモンテベロ学生寮からは山道を20分歩いたところにある。毎日強い日差しと暑さの中、山道を上り下りするのは大変だったが、南仏の心地よい自然を肌で感じながらの通学路は、都会で育った私にとって新鮮であり、とても穏やかな気持ちでレッスンに臨むことができた。学生寮はすべてシングルルームで、室内には、流し台、シャワー、トイレ、冷蔵庫が完備されており、窓を開けると心地良い風が入ってきた。また、自然に囲まれているせいか、毎日小鳥のさえずりも聞こえてきたのが印象的で、快適な日々を過ごすことができた。また、同じ寮で生活をしている世界各国からの受講生たちと一緒に、ナイトコンサートの感想や音楽に対する考え方、母国での生活など、夜遅くまで語り合ったのがとてもいい思い出となった。
研修を終えて
レッスン室にてアントルモン先生と二週間の研修をこうして振り返ってみると、長かったような、短かったような、複雑な心境です。ただ、二週間という決められた日数の中で、一つでも多くのことを学んで帰るんだ、と常に心に決めて過ごしました。そして、その目標は達成できたと思っています。恵まれた環境のなかで、新しい発見ずくめの毎日を過ごすことができ、このまま時が止まってしまえばいいのに、と何度思ったかわかりません。もちろん、万事順調に進んだわけではなく、日本では考えられないようなトラブルに巻き込まれたこともありました。それも含めて、すべてが私にとって貴重な経験であり、これからの財産となっていくと思います。
今回の研修を通じて、私は心から音楽が好きだということを再確認しました。レッスンを通じて私自身の成長を実感できたこともありますが、何よりも世界各国からの受講生たちと語り合ったことはとても刺激的でした。語学学習への意欲も高まり、留学したいという夢も、更に強いものとなりました。
音楽には終わりがありません。答えがないからこそ、もっともっと深く追求していかなければなりません。音楽を趣味としてではなく、専門として学んでいる中で不安や迷い、自信をなくすこともあります。しかしそんな不安に胸を募らせていても、何も解決しません。そんな時は音楽と正面から向き合って、ぶつかっていくしかないのです。今回、こうして無事に研修を終えることができたことは、自信や今後の励みになるものと確信しています。支えて下さっているすべての方へ感謝の気持ちを胸に、前向きな心でこれからも音楽と向き合っていきたいと思います。
最後になりましたが、このような素晴らしい機会を与えて下さった、大学関係者のみなさま、学生課のみなさま、支えてくださった、先生、家族、友人に心より感謝の気持ちとお礼申し上げます。ありがとうございました。