カールスルーエ音楽大学(ドイツ)
大学院修士課程音楽研究科 器楽専攻(鍵盤楽器ピアノ)2年 中山 千緩
研究概要
HindemithのLudus tonalisの研究を主としてドイツへの留学をしました。この曲は全25曲という長い曲集なのですがレッスンで全てみてもらいました。
- 『Ludus tonalis』概要
- 成立
- 版について
- 第1音列
- 先行研究
- シンメトリー構造
- バッハへの回帰と新しい試み
- 自筆の挿絵についての研究
- 自筆押絵付きの版『Ludi leonum』による解釈
- 第1節《Ludi Leonum》(1950)概要
- 第2節 前奏曲と後奏曲
- 第3節フーガ
- 第4節 間奏曲
というような構成で課題研究として提出することを考えています。先攻研究についての資料はフランクフルトにあるヒンデミット研究所にて手に入れました。この研究所を訪ねる前にメールで連絡を取り、何について研究したいか、どんな資料が欲しいかを連絡したところ全ての資料を揃えて私がみられるように準備をしてくれていました。フランクフルトはカールスルーエからバスで2時間程。そしてとても安価で行けるため研究所を訪ねるのにとても良かったといえます。
大学の図書館ではヒンデミットの資料をいくつかみる事ができました。それほど量は無いのですが日本ではみられなかったものを見つける事が出来ました。又、この図書館は半年に一度古くなった本やCD等を1~3ユーロで販売しており、そこで楽譜やCDを手に入れました。
私はLudus tonalisを新しい視点から解釈をしたいと考えています。それにはLudi leonumというヒンデミット自筆の挿絵付きの楽譜が必要でしたがこれはショット社がヒンデミット生誕100周年に出したものであるため日本では手に入れることが困難でした。しかしドイツではこれを購入することができました。資料集めの場としてこの留学は非常に役立ったと思います。
留学を終えての所感
私が留学をすることで期待をしていた「広い視野をもてるようになること」は期待以上の成果があったと思います。私は今まで一人暮らしをしたことない幼稚園から国立音楽大学付属に通うという人生を生きてきましたが、ドイツで初めての一人暮らしを経験し、色々な国と色々な経験を持っている人にこの留学で出会える事が出来ました。ドイツはEUであるということもあり他の国の人の出入りも頻繁です。そのため一つの国に居ながらたくさんの国の人との交流が可能でした。そして他の国に行く事も簡単であるため国での違いや他の文化にも触れる事ができました。
考え方の違いにも驚かされる事がありました。日本での一般的な考え方がどの人にも当てはまるのではなく、その考え方が当たり前ではないということを知りました。その状況を経験した事で、自分と違う考えや文化を理解しようとするということや物の見方を今までにない方向から見るということを学べたように思います。考え方の違いに驚きもありましたが一年いるとその考え方にも順応しそれが楽しいと思えるまでになったかと思いました。
生活を始めるのに住居登録、保険、学籍登録、銀行口座、ビザという手続きをするものが多々あります。初の一人暮らしだったため、このような日本でもした事無いような手続きをしなくてはならないのは大きな不安がありました。しかしいつも不安な手続きをするときは助けてくれる人が幸運なことにいました。今回の留学が一人では無かったこと、他にも日本人が学校にいたこと、日本語が話せるドイツ人が近くにいたということが私にとってとても救いであったと共に、楽しい留学生活を送れた理由でもあります。人に恵まれていたことで私の留学生活は悩みや苦労はあったものの非常に幸せなものだったといえます。
言葉の問題で悔しい思いをすることは少なくありません。自分の思いや考えが上手く伝えられない事、なにか問題があった時解決する為に日本にいる時より手間がかかってしまう事はありました。しかしどういえば良いか調べたり勉強したり何よりも伝える意思をしっかりと持って相手と向き合うことでなんとか乗り越える事ができました。そうして誰かと接していくことで新たなドイツ語での表現を覚える事もありました。人との関わりというのは今回の留学では大きな意味を持っていたと思います。
他の国の芸術と文化を知るということも出来ました。一年という期限があったからこそ、この間に出来るだけ色んなものを見聞きしようと色々なところに出かけたり挑戦したりもしました。このチャンスに感謝し一日一日がとても大事なものだと感じていまいた。
この経験をすることで将来への考え方も変わりました。より自分の意志を持つようになったことが大きな要因かと思います。多種多様な経験を経ての海外生活をしているという人をみてきました。そこで人生の色々な可能性というのを知りました。卒業後は普通に就職活動をして…と留学前は思っていましたが、大きな視野であらゆる可能性も考えてみたいと思います。正直、卒業後はまたドイツに行きたいという考えもあります。
これから自分がこの経験を活かしてどのような将来を歩むか楽しみでもあります。強い意志をもって出来るだけの努力をしていく所存です。ドイツで学んだ「出来ない事はない。簡単か難しいかというだけだ。」という言葉を大切にしたいと思います。
最後にこの留学の機会を与えて下さりサポートをしてくれた国立音楽大学に感謝申し上げます。
城の塔からみたカールスルーエ