国立音楽大学

カールスルーエ音楽大学(ドイツ)

大学院修士課程音楽研究科 声楽専攻(ドイツ歌曲)2年 小山 祥太郎

研究概要

小山 祥太郎 写真 1
ベルリン、Berliner Domの前にて

レッスンでは、留学当初は発声の見直しから始まりました。体をどのように使って無理なく声を出すか、それを体得することに時間を使いました。白井先生のレッスンでは毎回体のどこに空気を入れて、どのようなイメージをして吐くか教えていただきました。詳しく体のポイントを指示してもらい様々なアプローチで正しい形に作っていただきました。その際はSchubertのAusgewählteから曲をやっていき、連作歌曲や難しい作曲家は選ばず自分の力を伸ばせる曲をたくさんやりました。私はSchubertの“Wie Ulfru fischt“や“Selige Welt“、“Schäfersklagelied“などをやりました。その後は、デュオを組んでデュオの授業にも行くようになりAusgewählteのみならずSchumannの“Liederkreis Op.24“やBrahmsの“Die schöne Magelone“、Mahlerの“Lieder eines fahrenden Gesellen“を学びました。たくさんの曲のなかでその表現やテンポの作り方、発音など事細かに教わりました。デュオの時間では白井先生からは声楽の技術を、Höll先生からは音楽の表現や解釈を留学の終わりまでたくさん教わりました。

レッスンやデュオの授業以外ではフランス歌曲やアメリカ歌曲、ポップスを取り扱うシャンソンのマスタークラスを受講しました。その言語やジャンルの先生が大学に来て1週間または2週間授業をしてくれました。フランス歌曲ではRavelの“Don Quichotte a Dulcinee“を学びました。ドイツ語とは全く違う言葉の流れや思想をフランス人の先生から学びました。私のいた期間には1回しかフランス歌曲のマスタークラスはありませんでしたが、その期間も4日しか時間がありませんでしたのでレッスンは多くありませんでしたが短い時間で深く内容を教わりました。アメリカ歌曲では黒人音楽を数曲学びました。他の歌曲にはない独特のリズムやテンポのノリ方、歌の英語の発音などを教わりました。このマスタークラスの最後には修了コンサートがありそれにも参加しました。そう多くはない発表の場で歌えて、新しい物に取り組んで、全く新しい経験をしました。

その他にはトマス・ハンプソンやペーター・シュライヤー、クリスタ・ルートヴィヒマスタークラスがありました。残念ながら参加とはなりませんでしたが、世界的歌い手達のレッスンを聴講するだけでもとても学ぶことは多かったです。

大学の先輩である長井さんの先生のTomas Seedorf先生の授業にもいくつか参加させていただいて学びました。先生の授業は講義形式だったので、ドイツ語がかなり難しく理解するのは何年もドイツに住んでいる先輩でも難しいものでしたが、頑張ってついていこうとしました。いくつか授業があり、テーマは「Tempoについて」「シューベルトの連作歌曲」「ベートーヴェンの第九」と多岐にわたっておりました。

また個人的に指揮科の授業も聴講に行きました。Werner Stiefel先生のところの個人レッスンによく行かせていただき聴講させていただきました。聞くだけでも見るだけでもたくさん学べることがありました。指揮の技術は私が日本で学んだものとは全然違っておりました。

留学を終えての所感

小山 祥太郎 写真 2
ヨーロッパワールドカップでドイツが勝利した瞬間の居酒屋

今回私はレベルの高い学校で多くを学ぶことができ、ドイツ、カールスルーエで生活することができ1年と通してとても良い経験となりました。ドイツで知り合ったたくさんの人たちとの思い出はまた私の音楽を豊かにしたと思います。今回の留学で事細かく発声のことから呼吸のことを白井先生に直していただけたことはとっても良いことでした。白井先生のレッスンは国立音楽大学の公開レッスンでも受けさせていただきましたが、1週間で数回のレッスンではとても直しきれない、また先生も見切れない部分がたくさんあると思います。白井先生はとても生徒のことをよく見てくださっていて、調子が悪い時にレッスンに行ってもいつも的確な指導で声をもとに戻してくれます。調子が悪い時にはいつもどこか気にしているところが変わってしまっています。呼吸を入れる場所や、体の姿勢、口の開き具合など多岐に渡りますが、白井先生はその解決方法をすぐに見つけることができます。それは先生自身の経験や苦労からできる賜物だと思いますが、それを学びいつか自分が指導者の立場になった時同じようにできるように注視することができたことはこの留学の中でも最もよかったと言えることの一つだと思います。

ドイツではやはりずっと音楽漬けの生活が普通になりました。大学に行って授業を受けて、合間の時間には練習してと、文面にすると日本の生活と変わりませんがどういうわけかカールスルーエでは生活の中心が音楽になります。向こうで知り合った私の知人は「日本にいると練習しなくなるが、カールスルーエにいるとよく練習する」と言っていました。日本にいてももちろん練習しないわけではありませんし、日本の練習環境も悪いわけではないと思いますがやはり雰囲気が違うのだと思います。私も同じような感覚を持ちました。カールスルーエにいると「練習」というのが生活の流れの中に普通に存在していました。

苦労したことといえばやはりドイツ人の「適当さ」でした。VISAの申請をした際には、きちんと1年の留学であるという証明をした書面を提出しているにもかかわらず、半年しかVISAが出されず結局更新をすることになりました。また大学でも授業によっては不定期で、授業の予定が上がったらリストに自分の名前を書いて申し込まなければならない授業があるのですが、その授業でも本来はとってはいけない人が申し込みをしていて正規の学生が授業を取ることができないなど、Organisationが非常に適当なのが時々問題を起こしていました。

この一年はとても早く過ぎてしまって、実際今自分がどれだけ成長できているかその展望はまだ見えていません。どれだけ伸びたかはわかりませんが、自分の中ではたくさんのことに恐れず挑戦できたと感じております。

私は以前より大学院を卒業したらドイツに行って勉強したいと強く思っておりましたが、今回の留学でその気持ちをより強くしました。今後留学するにあたりこの経験は非常に大きな力になります。カールスルーエはもう未知の土地ではありませんし、頼りになる友人たちがいます。より長い留学生活に向けて今回の留学の経験を生かし準備していきたいと思います。近い目標としては、1月にある卒業試験にてカールスルーエで学んできたことを披露できるように準備していきたいと思います。

この場をお借りして、このような貴重な経験をさせていただいたこと御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

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