小原孝(ピアニスト)
音楽が好きな人すべてに、伝えたい/1990年7月
プロフィール
小原孝さん(おはら たかし)
OHARA Takashi
ピアニスト
国立音楽大学附属中学校入学より高校、大学そして大学院まで国立キャンパスで過ごす。
1986年 国立音楽大学大学院修了、クロイツァー記念賞受賞。以後クラシックから童謡まで、ソロ、伴奏、アレンジ、オーケストラとの共演、CM音楽など形態・ジャンルに拘わらない音楽活動を始める。
1990年 “ねこはとってもピアニスト”でアポロンよりCDデビュー。続く“リリックピアノ日本のうた”“僕のゆびから愛のうた”と10冊の楽譜集で話題を呼ぶ。
1993年 文化庁芸術インターンシップ研修員。
1994年 4枚目のCD“ヴァリエイション”を機に東芝EMIに移り、“ねこふんじゃったスペシャル”“イヴェットのためのソナティネ”“からたちの花/浜辺のうた変奏曲”“ピアノよ歌えシリーズ”とコンスタントにCDを発表。また毎年全国ツアーを行い、サントリーホール(大ホール)でのリサイタルも定着、エッセイやラジオのパーソナリティもこなす“マルチ・ピアニスト”をめざす。
現在、国立音楽大学非常勤講師。
インタビュー
「よし、ねこのCDを作ろう!」とディレクターが言い出したのは、レコーディングも終わりに近づいた頃。翌日の制作会議でさっそく「OK」となり、クラシックのCDになる予定だった小原孝さんのソロデビューアルバムは、オリジナル曲ばかりを収めたユニークでメルヘンチックなCDへと方向転換したのでした。
「ほんの余興のつもりで、スタジオで披露した『ねこふんじゃった』をスタッフが妙に気に入って、そういう話になったんです。でもそのお陰で、より僕らしいアルバムにすることができたと思います。」
1990年6月に発売されたそのCDのタイトルは『ねこはとってもピアニスト』。ジャンルを超えたユニークなピアニストとして活躍している小原さんの自信作です。
「このCDは音楽が大好きな僕から、音楽が大好きな人すべてに贈るプレゼントです。子供たちからおじいちゃん、おばあちゃんまで、幅広い年代の人たちに聴いてもらいたいですね。」
楽しくて個性的な音楽を
「父がクラシックのギタリストなので、生まれた時から音楽といっしょに育ってきたという感じでした。小学生の頃には、歌謡曲でも何でも気に入った曲を自分なりに弾いてみたりして、よくピアノと遊んでいましたね。といってもレッスンはキライだったんですが(笑)。」
そうした幼少期を経て、国立音大の附属中学へ入学。それから大学院を修了するまでの年月を、小原さんは国立で過ごしていったわけです。
「正直言って、大学時代は真面目な学生ではなかったですね。学費を稼ぐために音楽教室の講師やパブの弾き語りなどのバイトをしていて、あまり授業には出なかったような……。
プロのピアニストをめざそうと考え始めたのは大学を卒業する頃。まだ自分がどんな音楽をやりたいのか見えてなかったので、それを見つけてみたかったし、ごく自然に『音楽以外の道は考えられない』と思ったんです。」
ピアニストを志すことを決め、大学院へと進んでからは、精力的に学外の演奏会などにも参加していきました。一つひとつのステージに全力で取り組みながら、ピアニストとしての評価、貴重な人間関係を得ていったのです。
そして現在。小原さんはクラシック、ポピュラー、童謡など多様なジャンルでソロピアニスト、そして伴奏者として活躍しています。今回のソロアルバムの発表によって、その活動範囲はさらに広がりそうで、年内の活動スケジュールはすでにいっぱいという状態です。
「よく『本当は何をやりたいの?』なんて聞かれます。でも、僕自身としては全部がやりたいことなんですよ。どんなジャンルでも、それにソロでも伴奏でも、楽しくて自分らしい音楽を作るという点では変わりませんからね。」
願いを込めて、弾き続ける
ある時、旅先で小原さんは一人のおばあちゃんが歌う「赤とんぼ」の歌を耳にしたことがあるそうです。
「その歌声が忘れられないんですよ。上手なわけではないのに、とても感動的だったんです。単純なメロディーだけど歌に“表情”があって……。人を感動させる音楽は、決して難しいものである必要はないんですよね。」
これまでに学んできたことや経験を生かしながら、誰もが楽しめる音楽、多くの人たちを感動させる音楽を作り続けていきたい――そんな願いを込めて、今日も小原さんは華麗にピアノを奏でます。
