音楽教育専修
山浦 修さん
学びたいこと、挑戦したいことがたくさんあります
IT企業に30年近く勤務した後、56歳で国立音楽大学に入学した山浦さん。くにおんとの出会いから、大きな決断に至った心境や、入学してからのこと、また将来の目標などを伺いました。
45歳でピアノを再び習い、音楽に目覚める
──音楽とは縁のないお仕事だったそうですね?
私は小学校の1年生から5年生までピアノを習っていました。その発表会で、高校生がショパンの「幻想即興曲」を弾いたのがかっこよく、あこがれましたが、その後ピアノに触れることはずっとありませんでした。きっかけは45歳ごろ、体を壊して、1か月会社を休んだ時期がありました。せっかくだから何か趣味を始めようと、子どもたちが通っていたピアノ教室に入ったら、その先生が「幻想即興曲」を弾かせてくれたんですよ。私には無理だろうと思っていたのに、何となく弾けるようになって、発表会でも弾く機会をいただきました。それで、年を取っても新しいことはできるんだなと思い、だんだんピアノにはまっていったんです。
──国立音楽大学との接点は?
ピアノ教室の先生がくにおんの卒業生で、ピアノが楽しくてしょうがない私の様子をみて「社会人向けの夏期音楽講習会を受けてみれば?」と勧めてくれたのです。いろいろな講座がある中で、椎名豊先生のジャズ理論の講座を受講しました。講座内容も面白いし、懇親会もあったりして、本当に楽しかったです。そして、大学そのものの雰囲気が、とても気に入ってしまいました。それから毎年、芸術祭と、音楽教育専修が主催している「MUSICスペース」を見に行きました。さらにオープンキャンパスにも来てみたら、もう、とにかくここに通いたい!という気持ちがどんどん大きくなってしまったんです。
定年まで待たずに受験を決めたわけ
──退職して入学は勇気がいることでは?
本当は、60歳で定年退職してからと考えていたんです。でも宇宙飛行士の野口聡一さんが「56歳から59歳までにできることと、60歳から64歳までにできることは全然違う」とおっしゃっている記事を読んで。確かに体力も、覚える力もどんどん衰えてきているし、健康寿命を考えると60歳からじゃ遅いかな、少しでも早いほうが……と思いました。子どもたちの大学の学費を払い終わって、あとは妻とふたり生きていければいいかな、という自由な気持ちになっていたことも大きいですね。
もう一つ言えば、数年前から大きな病気のオンパレードで、何度も手術をしました。今生きているのも運が良かったと考えると、やはり今のうちにしたいことをすべきだと思ったのもあります。
幸い56歳で受験して合格できたので、会社を早期退職して、くにおんに入学したのです。
──音楽教育専修を選ばれた理由と、受験勉強の方法を教えていただけますか?
地域に貢献をしているところに魅力を感じたのが一つですね。それから、いろいろなことに挑戦したかったのです。ピアノはもちろん、管楽器もやってみたい気持ちがあったり、先輩方の合唱を聴いたらそこに一緒に立ちたい気持ちになったり。いろいろ学べるかなと感じたのが音楽教育でした。
一般受験をしたので、大学入学共通テストの勉強が必要でした。楽典については受験準備講習会の「くにおん楽典検定」を3年前くらいから受検していました。一定のレベルに達すると受験の楽典科目が免除になるので、まずそれを先にクリア。実技のピアノは受験に向けたレッスンを受けました。とにかく大変な一年でしたね。
積極的に仲間に入れてくれたクラスメイト
──晴れて合格し、ここで学んでみた感想はいかがですか?
やはり入ってからが大変です。周りの方と、レベルがだいぶ違うので……。音楽の知識もそうですし、吸収する速度が全然違うんですね。特に、暗譜には苦労しています。45歳でピアノを始めた時からずっと、人の3倍は努力しないと駄目だなと思っていましたが、今も同じ気持ちです。一般大学を卒業しているので教養科目などは一部免除になっていますが、その分専門の勉強に当てなければいけないので、社会人の時より今の方が、遊んでいる暇がないですね。
──周りの学生の方々との交流は?
入学した時、息子たちから「たぶん誰も相手にしてくれないから、友達ができると期待しちゃいけないよ」と言われて、まあ勉強しに行くんだからそれでもいいや、と思っていたんです。ところが、入学してすぐの基礎ゼミで前に座っていた方が「まだ僕友達がいないいから、差し支えなければLINE交換してもらえませんか」と声を掛けてくださって。それからもうれしいことにみなさん積極的に仲間に入れてくれて、お昼ご飯も普通に一緒に食べに行きますし、「男子チームで遊び行くから一緒にどうですか」なんて誘ってくれたりもするんですよ。私が勉強でついていけないと、休み時間や土日に教えてくれますし、くにおんの学生さんは本当にみな面倒見がいいんです。いつか恩返ししないと、と思っています。
人の人生に関われる仕事をしたい
──音楽は趣味として続けることもできる中で、あえて受験して音大で学ぶことを選んだのはなぜでしょうか?
ピアノだけ上達すればいいならピアノ教室に行けばいいですよね。でもやはり、理論がわかって弾くとまた違った音楽の捉え方ができると思います。私は音楽を基本からきちんと、かつ幅広く勉強したかったんです。
シニアコースを設定している他の大学もあるのですが、私は10代や20代前半の方との接し方も学びたくて、あえて若い人のいる大学を選びました。
──今後の目標はどんなことですか?
会社で社員教育をする機会があったのですが、その人たちが頑張って成長していく姿を見て、教えること、人の人生に関われるような仕事ってとても素晴らしいなと思いました。人とコミュニケーションとることが好きなのでしょうね。ですから、今の夢は教員免許を取って、先生になることです。どんなに苦労しても、音楽を4年間しっかり学んで教員採用試験を受けるという、その軸だけはぶらさないようにしています。
妻も息子たちも、いろいろ心配したとは思いますが、今は応援してくれています。できることは精一杯やりとげて、人生を全うしたいと思っています。
(2025年1月取材)
