ウィーン音楽・演劇大学(オーストリア)
大学院修士課程音楽研究科 器楽専攻(鍵盤楽器ピアノ) 2年 中村 美結
研究概要
私は、Thomas Kreuzberger教授のもとでピアノを学ぶために、オーストリアのウィーン音楽・演劇大学へ留学をしました。
レッスンでは、先生が隣のピアノで、音の歌わせ方や音色、身体をどう使って弾くかを、わかりやすく教えてくださりました。ウィーン古典派の作品では、独特なペダリングや装飾音の弾き方などを事細かに教わりました。ほかにも、作曲家が楽譜に残したイタリア語での指示を、ドイツ語で教わりました。例えば、「Adagioはlangsamではなく、ruhig」といったように、ドイツ音楽を正しく理解し研究する上で、とても大切なことを学びました。
Kreuzberger先生のクラスでは、1セメスターに1回、Klassenabendが催され、さらに、先生のご友人のKrassimira Jordan先生や、Aquiles Delle Vigne先生のマスタークラスがありました。このように、様々な場で演奏することができ、ご助言を頂けたことは、とても貴重な経験だと思っています。
ピアノのレッスン以外の授業では、ヴァイオリンとのデュオでPeter Schuhmayer先生の室内楽を受講しました。ここではピアノにはないヴァイオリンのニュアンスや、デュオでの音楽の表現、テンポの作り方を学びました。
その他には、タンゴの授業を受講しました。初心者のためのクラスでしたが、踊りが不得意な私にはステップだけでも難しく、残念ながら半年では習得できませんでしたが、異国にて独りで苦手なものに挑戦できたことは、自分の視野を広げることに繋がりました。
修士論文の資料収集のために、ウィーン国立図書館を訪れ、そこでは日本には無い資料をみることができました。長期休暇の間に、ハンブルクやリューベック、ミュルツツーシュラークのブラームス博物館を訪れ、資料を集め、ブラームスが実際に歩いたとされる道を歩きました。
留学を終えての所感
短い期間ではありましたが、私にとってウィーンへの留学は、音楽の勉強という面だけではなく、自分の人生の上でとても良い経験であったと感じています。ウィーン音楽・演劇大学という、世界でトップレベルの大学で学ぶことができ、音楽の都ウィーンで生活することができ、私自身これ以上ないくらい非常に濃い1年でした。
自宅で練習をしてレッスンへ行くという基本的な生活は、日本にいるときと変わりませんでしたが、楽友協会や国立オペラ座から地下鉄を使って10分で行けるところに住んでいたことと、演奏会のチケットはかなり安かったことから、いつでも演奏会へ行くことができました。日本にいるときはチケットが高価なこともあり、ピアノの演奏会をたまに聴きに行く程度でしたが、ウィーンではピアノだけに限らず、オーケストラや室内楽の演奏会、特にオペラをたくさん聴きに行きました。ウィーンで素晴らしい演奏を沢山聴けた経験は、私の音楽を豊かにしたと思います。
今回の交換留学により、有難いことにKreuzberger先生から、あなたが日本で修士号をとったら、ウィーン音楽・演劇大学のpostgraduateでまた一緒に勉強しよう、とお誘いを頂きました。これにより、大学院修了後の進路について視野を大きく考えることができるようになりました。
このウィーン留学は私一人の力では決してできなかったことであり、日ごろから支えてくださっている沢山の方々のお陰だと思っております。このような貴重な経験をさせていただいたことに、心からの感謝の気持ちと御礼をここに申し上げます。