【プレスリリース 】
東京大学 × 国立音楽大学
オーケストラを用いたヒューマンアンドロイドによる演奏表現の共同研究が始動
国立音楽大学と東京大学は、実際のオーケストラを用いて「オルタ 3」による演奏表現に関する共同研究を開始し、創発的アートの創造を目指します。
発表のポイント
- 国立音楽大学と東京大学は、実際のオーケストラを用いてヒューマンアンドロイド「オルタ3」による演奏表現に関する共同研究を開始し、創発的アートの創造を目指します。
- これまでのヒューマンアンドロイド研究を通じた「生命らしさ」の追求に、音楽を媒介とした双方向のコミュニケーションを加え、音声処理や動作の研究といった枠を超えた「人間らしさ」「芸術とは何か」を探求します。
- 多くの演奏家が継続的に参加する研究の場が整った意義は大きく、本研究を通して、指揮そのものの意味や人間が行う芸術活動の本質に迫ります。
発表概要
東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 池上 高志教授が大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻 石黒 浩教授のアンドロイドに自発運動プログラムを組み込み、渋谷 慶一郎氏作曲のアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を2018年7月22日、人工生命国際学会「ALIFE 2018」パブリック・プログラムとして日本科学未来館で上演、続く2019年2月28日には新国立劇場での記者会見でオーケストラを指揮して演奏を披露し、話題を呼びました。
国立音楽大学 音楽学部演奏・創作学科作曲専修 板倉康明客員教授は、そのリハーサルにおいて音楽的監修、オーケストラを合奏体として機能させる役割を担っていました。オーケストラは、指揮者のさまざまな動きや指示に対しての解釈が個人によって異なっている演奏者の集合である合奏体ですが、「オルタ3」の動きをより洗練させていくためには実際にオーケストラを使用して「オルタ3」と合奏体の関わり方を継続して研究・実験していく必要性を痛感し本共同研究を開始するに至りました。
同時に、国立音楽大学 音楽学部演奏・創作学科コンピュータ音楽専修 今井慎太郎准教授の協力も仰ぎ、「オルタ3」の音声認識プログラムの構築を開始。今後、池上研究室における動きのプログラムと関連させるための研究を行ってまいります。
実際にオーケストラを用いての同種の実験はプログラミングを担う東京大学、演奏をする国立音楽大学の両者が揃って初めて実現できることであり、実験結果を基に、未来のアートを占うこととなります。
発表内容
研究の背景
東京大学大学院 池上高志教授が大阪大学 石黒 浩教授のアンドロイドに自発運動プログラムを組み込み、渋谷慶一郎氏作曲のアンドロイド・オペラ『Scary Beauty』を2018年7月22日、人工生命国際学会「ALIFE 2018」パブリック・プログラムとして日本科学未来館で上演し、観客に新しい風を感じさせたことは記憶に新しいことでしょう。続く2019年2月28日には新国立劇場での記者会見でオーケストラを指揮して演奏を披露し、話題を呼びましたが、その「オルタ3」の指揮によるオーケストラ演奏は、いずれも国立音楽大学の在学生、卒業生有志によって編成されたものでした。
アンドロイドがオーケストラを指揮するという先例がない試みにおいて、国立音楽大学 板倉康明客員教授は、そのリハーサルにおいて音楽的監修、オーケストラを合奏体として機能させる役割を担っていました。オーケストラはそれぞれ独立した音楽家である演奏者が集合した「合奏体」と言えますが、指揮者のさまざまな動きや指示に対しての解釈、理解は個人によって異なります。「オルタ3」の動きをより洗練させていくためには実際にオーケストラを使用して「オルタ3」と「合奏体」の関わり方を継続して研究していく必要があることを痛感し、共同研究を池上高志教授に提案したことにより、本共同研究を開始するに至りました。
研究内容
「オルタ3」は事前に楽譜を学習し、その上で実際のオーケストラを指揮します。その時生じる現象について、検証、再現し、場合によってはプログラムの書き換えを含めたさまざまな処置を行い、自律的な指揮が可能となる方法を研究していきます。
同時にコンピュータ音楽の専門家、国立音楽大学 今井慎太郎准教授の協力も仰ぎ、「オルタ3」の音声認識プログラムの構築を開始。今後、池上研究室における動きのプログラムと関連させるための研究を行ってまいります。このことにより、実際の指揮者の役割である同時に起きるあらゆる音現象を瞬間的に処理しつつ、その先の新たな時間軸をオーケストラに示すことが可能となるでしょう。
本研究の社会的意義
本研究はオーケストラに対する「オルタ3」の動きを洗練させることが目的ではありますが、この場合における洗練の意味はいわゆるメトロノーム的な時間軸を明確に示すということではなく、演奏に必要なメカニカルな部分を超えてアートが持っているemotional =生命的なものを「オルタ3」がその身振りで触発し、創発的なアートとしていくことにあります。オーケストラが「オルタ3」の身振りに慣れてしまい、指揮に関係なく自動的に演奏することで実験の意味が薄れてしまう可能性を極力排除するため、オーケストラの表現を、固定されたものでなく、意図的に流動的な構成とすることを計りつつ、実験を重ねて行きます。
音楽の方から見た場合、本来はそれ自体が一種の複雑系とも言える音楽について、一部の構成要素にのみ捉われて、往々にして「理解しやすい」指揮法を用いられていることもあります。今回の研究によって、演奏者と指揮者とのコミュニケーションで忘れがちな、生命力を持つアートとして再考し、痛烈な自己批判を加えつつ、未来の音楽の姿についても思いを馳せることができると考えられます。実は残されている映像資料による大指揮者と言われる音楽家たちの動きは本質的にはそのようなものであったためです。
翻って「オルタ3」の研究によって、指揮者が存在する、しなければならない意味についても知見が得られることを目指します。
いわゆる西洋音楽、五線譜により作曲家の思考が記述されている音楽が日本に輸入されて150年経っていますが、西洋の伝統の枠組みに入らないここ日本で未来の五線譜音楽演奏の一つの在り方を考えていくのは重要であると同時に世界への発信も可能と考えています。
オルタ3について
「オルタ3」は東京大学、大阪大学、ワーナーミュージック・ジャパン、株式会社ミクシィの合同プロジェクトにより生まれたヒューマンアンドロイドです。
データダウンロード
ご使用の際には必ず「オルタ3(Supported by mixi, Inc.)」と表記をお願い致します。