「オンライン授業」に関する国立音楽大学の考え方について
本学では5月11日より、オンラインで授業を実施することとなり、学生の皆さんの学びを少しでも止めないような取り組みを始めております。授業やレッスンが行われていない現状について、学生や保護者の皆様のお気持ちは大変よくわかります。
学生の皆さんが生き生きと学ぶことは、教職員にとっても喜びであり、そのような場を提供できない現状について、関係者一同、大変心苦しく思っております。一方で、学生の皆さんやそのご家族の健康を守ることは更に重要なことであり、もし安全な環境を提供できなければ、授業やレッスンが今後も行えず、この状況がさらに長引く恐れがでてしまうことも、ご理解いただきたいと思っております。
オンライン授業でできることと通常の対面授業でできることは違います。とくに演奏系の皆さんにはできないことの方ばかりが意識されて、もどかしく思われることでしょう。でも、音楽の学びは、声を出したり演奏したりすることだけではありません。呼吸法や脱力法といった身体的訓練、演奏解釈の基本となる音楽理論や歴史の知識など、オンラインでも学べることはたくさんあります。
今のところオンライン授業は5月一杯と想定しておりますので、その間は「オンラインでも実現可能な範囲で出来る限りのこと」をやっていただくよう、先生方にはお願いしてあります。通常の対面授業では、実際に音を出して学ぶ要素と音を出さずに学ぶ要素が一体になっています。学科系の授業と演奏系の授業ということだけでなく、1回のレッスンの中にも演奏実践に関わる内容と知識や解釈に関わる内容が含まれています。しかし緊急事態の今、その配分をあえて分けて、オンラインの間は音を出さない内容に重みをかけ、通常授業が開始された後は逆に演奏の方に重みをかけることで、最終的には必要なことがきちんと学べるよう、先生方には工夫していただきます。学生の皆さんにも、その点を理解して授業を受けていただき、自分でも「オンラインでできること」を工夫していただきたいと思います。
大学としては学事予定を見直し、土曜日も使って本来の授業回数を確保しています。人数の多い合奏や合唱などの授業については、夏休みなどを利用して経験を補うことも考えています。前期が終わった段階で「通常授業と同等なことが学べた」という実感を持っていただけるよう、努力してまいります。
国の緊急事態宣言を受けた東京都の施設休止要請により、学生の施設利用はできません。でも、ご理解いただきたいのですが、その間も大学は動いています。新しい時間割を組んだり、オンライン授業が滞りなく実施できるようシステムを整えたり、通常授業開始に備えて施設や設備の点検維持を行なったりしているのです。施設設備費は、学生の皆さんが大学の施設を利用する際の「使用料」ではなく、大学教育がきちんと行えるように施設や設備を整え維持していくための費用です。学内立入り禁止の期間中も、皆さんたちがお支払いくださった施設設備費によって、大学がその機能を維持することができていることを感謝いたします。立ち入り禁止が終了した後は、例年学生への施設貸し出しが行われなかった夏休みにも貸し出しを行い、十分な施設利用を行っていただけるようにします。
こうしたことから、今の状況でできる限りの教育を行いたいと、教職員一同、取り組みを進めております。ただ、今後もし状況が変化した場合には、それに応じた新しい対応を検討することになると思います。その際にはあらためて皆さんにご連絡させていただきます。
現在の世界的な状況を鑑みても、今はまず皆さんの健康を最優先に、本学がクラスターとならないよう万全の防止対策をしてまいりたいと存じます。
何卒ご理解・ご協力くださいますよう、よろしくお願いいたします。
国立音楽大学