国立音楽大学

H22年度卒業生・修了生の皆様へ 学長・理事長メッセージ

3月19日に予定されていた卒業式(学位授与式)はやむなく中止となりました。
卒業生、修了生の方々には急な中止の決定となり、大変御迷惑をおかけしました。
ここに、学長、理事長からのメッセージをお贈りします。

学長メッセージ

卒業生、修了生の皆さんへ

 大学院修士課程、音楽学部、別科調律専修を修了、卒業された皆さん、おめでとうございます。そして、今日まで変わらぬご支援をいただいた保護者、ご家族の皆様に、心より感謝いたします。
 数日前、大震災が日本を襲い、夥しい犠牲者を出し、今なお多数の被災者が避難所で過ごされていることはご存知のことと思います。また、それに伴い、計画停電が実施され、交通機関の運行にも支障が出ていることをも勘案し、残念ながら卒業式典を断念せざるを得ないこととなりました。未だすべてが確認されているわけではありませんが、本学学生の関係者に今回の犠牲者がおられるとも聞いております。犠牲者の方々のご冥福と、一日も早い復興を切に願うものであります。
 さて、皆さんは本日をもって学業を終えられ、社会へと船出することになりますが、その日本の社会は、長引く経済不況に加え、今回の未曾有の災害によって、極めて困難な局面に立たされているというべきでしょう。今回の震災により、我が国の経済、産業は計り知れない損失を被りました。私たちの人間としての底力が試される、そういう時に皆さんは、社会の一員として、その責任の一端を担わなければなりません。誠に厳しい時代というべきでしょう。
 しかし、皆さんには、この4年間、あるいは2年間、真摯に向き合い、修練を積み、追究してきた音楽があります。絶望的で過酷な環境にあって、音楽こそ微かではあるにしても、また無限の彼方にあるにしても、「希望」を与えるものだったのではないでしょうか。また切磋琢磨しつつ仲間と共に音楽を学ぶことで培われたのは、個性的差異を認めつつ、それを超えて一つのことに「共感」する力だったのではないでしょうか。皆さんはこれから社会に出て行く訳ですが、音楽を携えて出て行くのです。音楽は、厳しい現実に直面したとき、徒に絶望の淵に沈むことなく皆さんに希望を与えてくれるでしょうし、皆さんの音楽が、ほんの小さなものであったとしても希望を与えることができるかもしれません。音楽を携えるということはまた、無慈悲な競争によってばらばらになりがちな様々な絆を繋ぎ、一人では実現不可能な課題に共に挑み、解決していくための、共感の力をもつということではないでしょうか。
 皆さんが、希望と共感を齎す音楽を携え、困難な道を切り拓いていくことを願ってやみません。卒業、修了、おめでとうございます。

2011年3月19日
国立音楽大学 学長
庄野進

理事長メッセージ

 卒業する皆さん、ご卒業・ご修了おめでとうございます。
 3月11日に起った我が国最大の激震での惨状に、胸が締め付けられます。東北地方や上信越地方に故郷があり、被災された方々には、心からのお見舞いを申しあげます。私たちの人生は、こうした試練を教訓として歩んでいるのですが、その人生の一里塚としてここに、大学院、学部そして別科の卒業生、修了生463名の皆さんは、学位記や修了書を手にされ、音楽の専門家としての証を得られました。心からお祝いを申し上げます。この度の非常事態から卒業式はありませんが、皆さんが国立音楽大学で修めた証の価値は、変わることなく尊いものです。
 音楽は人々の心を癒し、社会を突き動かす力となる素晴らしい文化ですから、失意にある日本社会に、今こそ皆さんが力を発揮されますことを切望いたします。私は、皆さんがリーダーを務めた数々の演奏活動などに接して、音楽の技能はもとより、人間としての識見の高まりを感じました。音楽の真髄に迫る本学の学びには忍耐が求められ、その体験が人間性の陶冶になったと思います。社会へ巣立つ皆さんは、この経験を教育の場などで生かし音楽の心をもつ多くの子ども達を育てていただきたいと思います。
 昨年末のNHK交響楽団の「第九」を指揮されたヘルムート・リリングさんは、第九に込められた人間賛歌のメッセージである「フロイデ」(歓び)の表現を大切にされ、皆さんの歌声を日本全国に伝えました。リリングさんは、「この曲は、人間が歓びを求めるところに存在するのであり、皆さんのような若者こそ、未来のビジョンを実現しなければならない。」と述べています。リリングさんのこの思いを胸に、広く世界を見聞きし、ご自身の人生を「フロイデ」とする創造的な自らの音楽を育み、皆さんの演奏によって被災された方々や全ての人々に「フロイデ」を広めてください。そして、穏やかで持続可能な平和な社会を築くための文化力を高める先導者として活躍されることを期待いたします。
 保護者の皆様、お子様のご卒業を心からお祝い申し上げます。また、昨今の厳しい社会情勢の中、何においても我が子の志を遂げさせたいとの思いから、国立音楽大学の様々な教育活動にご支援をいただき、ありがとうございました。
 結びに、卒業生と保護者の皆様のご健勝とご多幸をお祈り申し上げますとともに、これからも国立音楽大学へのご支援をよろしくお願いいたします。

平成23年3月19日
学校法人国立音楽大学 理事長
宮地忠明

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